浸出性中耳炎
鼓膜の奥の中耳に分泌物がたまり、音が聞こえにくくなるのが滲出性中耳炎です。(参考記事:滲出性中耳炎が治るのか心配、中耳炎と外耳炎、小児の中耳炎、小児滲出性中耳炎診療ガイドライン(一般の方・おうちの方へ)、かぜの後にかかりやすい中耳炎_図譜・_解説)
滲出性中耳炎(右) 滲出性中耳炎(左)
【症状】
難聴、耳のつまる感じ、耳鳴り(ガサガサ等)。痛みは無いか、少ないのが特徴です。
【小児の滲出性中耳炎の特徴】
乳幼児に限らず小児の80%は自覚症状を訴えることはまずありません。家族の方や先生が返事が遅い、集中力が低下してボーッとしている、テレビの音を大きくして聞いているなどで気が付く場合があります。
【浸出性中耳炎はどんな時になるか】
1. かぜの症状(咳が出る・黄色の鼻水・のどが痛む)のある時。特に以前、急性中耳炎にかかった子供ではくり返すことが非常に多いので注意が必要です。
2. アデノイドや扁桃の大きい人。
3. ちくのう症やアレルギー性鼻炎などの鼻が悪い人。
【こんな時は注意しましょう】
乳児:耳をいじる。ぐずついて、よく泣く。
幼児:言葉の発育が遅い。怒りっぽく、よく泣く。
年長児:呼んでも返事をしない。聞き返す。テレビの音を高くする。言葉が少ない。イライラする。
学童:落ち着きがない。協調性がない。学業不振。内向的。
【治療しないとどうなるの?】
殆どの小児の滲出性中耳炎は時間の経過と共に治癒します。
希なことですが、中耳の貯留液が器質化し、次には鼓膜が中耳内壁と癒着し、手術をしても「聞こえ」が完全に回復することが困難な「癒着性中耳炎」に移行することもありますので、耳鼻咽喉科医による経過観察が大切です。
【医師からのアドバイス】
1. 予防:鼻水、鼻閉のある時は医師の治療をうけましょう。
2. 定期検診:特に乳幼児から低学年児童までが大事です。
3. 日常生活上の注意:気になる事は主治医とよく相談して下さい。
a. 水泳の可否
b. 洗髪・入浴の可否
c. 飛行機に乗る時
d. アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎のある人は、その治療も同時に必要です。
e. 教室では前の席になるように担任の先生に相談しましょう。
4. 長期にわたる治療になることも多く、主治医とよく相談しながら治療をすすめましょう。
【滲出性中耳炎の治療法】
1. 鼻とノドの治療:滲出性中耳炎は鼻やノドの悪い子に多いので、鼻やノドの治療も必要です。薬の内服も割合長期間必要になることがあります。
2. 通気療法:鼻の奥にある耳管という耳と鼻を結ぶ管から空気を中耳に送ることにより、貯まった液の排泄を促します。通気の方法には、鼻の入り口からゴムで出来た器具を使って発声と同時に空気を送る方法と、細い金属製の管を鼻の奥に入れて耳に空気を送り込む方法とがあります。自己耳管通気治療器具として、オトベントという鼻風船も有効です。この器具は航空性中耳炎やダイビングの際の中耳の陰圧を改善にも有効で、自宅で簡単に訓練することが出来ます。(オトベントによる自己通気動画)
通気前→通気後
3.鼓膜切開・穿刺:鼓膜に小さな孔をあけて中耳にたまった液を取り除く方法です。急性化膿性中耳炎のときにも行う治療法ですが、鼓膜は再生力が非常に強いので、繰り返し行っても心配ありません。むしろ切開しないことの害のほうが大きいことがあります。鼓膜切開の適応に関しては別項に記載しました。
鼓膜切開排膿→→チューブ挿入
4. チューブ挿入:鼓膜切開をしても治りが悪く、繰り返す時には、切開後に鼓膜に小さなチューブを挿入して、中耳に液がたまらないようにします。鼓膜の表面麻酔をすることで痛みは殆ど無くす事が出来ますから、聞き分けの良い子供では外来で行います。聞き分けのない小児は外来では無理なので、全身麻酔のかけられる病院で手術をします。このチューブは再発しなくなるまで、相当長期間入れておきます。
様々な鼓膜換気チューブ
5. アデノイドの切除:アデノイドは耳管の出入り口にあるリンパ組織で、アデノイドが大きいと耳管をふさいでしまいます。そのような時はアデノイドを取り除く手術も考えないといけません。外来治療では治りが悪く、手術の必要があると判断される方では、扁桃摘出と同時にお勧めすることがあります。
中耳炎の治療は、短期間では不十分です。通常3ヵ月は定期的な観察が必要です。
治りが悪く、通院期間が長くなったり、不安なことがある場合は積極的に主治医に相談しましょう。
自由が丘耳鼻咽喉科・笠井クリニック
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