萎縮性鼻炎、臭鼻症、empty nose syndrom 笠井耳鼻咽喉科クリニック・自由が丘診療室

萎縮性鼻炎(いしゅくせい・びえん)と臭鼻症(しゅうびしょう)
 通常の鼻炎は、鼻の粘膜が風邪アレルギーで炎症を起こして腫れている状態で、鼻水や鼻づまりといった症状が特徴です。急性鼻炎の原因はウイルス感染によることが一般的です。アレルギーやその他の不明な原因によって症状が長期化する場合に慢性鼻炎といい、慢性鼻炎には慢性副鼻腔炎を伴うことが多くなります。
 萎縮性鼻炎は慢性鼻炎の一種ですが、鼻の粘膜が薄く硬くなり、鼻腔が異常に広がって鼻の中が乾燥するという、鼻炎の中でも特殊な病態を示す疾患です。正常な鼻腔は血管が密集した粘膜に覆われており、広い表面積と多くの血管があることで、鼻は外から入ってくる空気を素早く温め加湿することができます。また正常な鼻腔の粘膜は適度な量の粘液を分泌し、ほこりなどの異物粒子をのどの奥へと運んで取り除く為の線毛と呼ばれる極めて細かい毛の様な突起を持っている細胞(線毛多列円柱上皮)があります。萎縮性鼻炎になるとこれらの細胞が失われ、皮膚のような細胞(重層扁平上皮)に置き換わってしまいます。そうなると鼻の中は潤いが無くなるため、鼻の内側に痂皮(かひ)と呼ばれる「かさぶた」が多量に付着するようになります。
 萎縮性鼻炎が原因で鼻内に付着する痂皮は雑菌が増えることで非常に汚く、悪臭が強いことが多く、そのような萎縮性鼻炎を特に臭鼻症と呼んでいます。鼻出血を繰り返すことも多く、病状が進行すると嗅覚も傷害されて無臭症になります。鼻腔に引き続く副鼻腔の粘膜も線毛を持ち粘液を分泌する細胞で出来た粘膜で覆われており、萎縮性鼻炎では副鼻腔の粘膜も次第に萎縮してゆくため炎症や感染が起こりやすくなり、慢性副鼻腔炎の症状も加わってきます。
原因
 萎縮性鼻炎の原因は不明と言わざるを得ませんが、萎縮性鼻炎や臭鼻症は昔に比べてずいぶん少なくなっていますから、その理由としては生活習慣の変化や栄養改善による粘膜の変化、抗生剤治療の発達による感染症の軽症化と短期化、アレルギー性鼻炎の増加など、様々な要因を考えることが出来ます。慢性副鼻腔の根治手術で鼻腔内の骨や粘膜のかなりの部分を切除した人に萎縮性鼻炎と同じような状況が発生することもありましたが、最近は副鼻腔炎の手術は保存的な方法が主流になったために、医源的な萎縮性鼻炎はあまり見られなくなりました。鼻中隔彎曲症と肥厚性鼻炎、アレルギー性鼻炎などによる鼻閉の改善の目的で行われる鼻中隔彎曲症矯正手術や下鼻甲介粘膜下骨切除及び下鼻甲介粘膜切除が過剰に行われた場合や鼻副鼻腔の腫瘍で拡大切除や放射線治療が行われたときに、鼻腔が広すぎる形状になることがあります。そのために臭鼻症と同じような症状が起こるときに「empty nose syndrome」と呼ばれます。
治療
 臭鼻症やempty nose syndromeの場合、萎縮した粘膜を再生させるという根本的な方法が無いために、治療としては症状を呈している原因である痂皮(かさぶた)の形成を減らして悪臭を無くすための鼻処置や鼻副鼻腔洗浄を繰り返して行い、感染を抑える目的の抗生剤含有の軟膏や保湿効果のあるワセリン基剤の鼻用クリームなどを塗布するといった耳鼻咽喉科での外来治療が主体となります。手術的に鼻腔を狭くする方法もありますが、かえって鼻閉が増強することもあり、実際に適応させるのは難しい場合が多いでしょう。

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