図1 頸部体表の目印
図2 頚部リンパ節群
図3 甲状腺癌、頸部リンパ節転移、右頚部郭清手術、リンパ節摘出標本
頚部リンパ節の部位(図2)と原発病巣の存在部位との関係
(1) 顎下部およびオトガイ下部リンパ節:口腔、舌、鼻・副鼻腔、顎下腺
(2) 上内深頸部リンパ節:上・中・下咽頭、口腔、扁桃、舌、喉頭、他
(3) 中・下内深頸部リンパ節:喉頭、上・中・下咽頭、頚部食道、口腔、舌、甲状腺
(4) 鎖骨上、副神経リンパ節:上咽頭、耳下腺、甲状腺、胸腹部などからの遠隔転移
頚部リンパ節
耳鼻咽喉科の病気を診断するに当たって、頚部のリンパ節を触診することが重要です。特に深頚部リンパ節は頭頚部のほとんどのリンパ節からリンパを受けているため、頭頚部疾患におけるこのリンパ節はきわめて重要な存在です。最終的に頭頚部のリンパは頚リンパ本幹に集まり、右では右リンパ本幹、左では胸管とともに静脈角に注ぎ、心臓から送り出されて全身を巡ることになります。
1. 後頭リンパ節(こうとうリンパせつ)
うなじ中央の突出部付近にあるリンパ節群で、頭頂部や後頭部表層のリンパが流入します。後頭部に湿疹やおできが出来たり、傷が化膿したりといった場合に、この場所のリンパ節が腫れることがあります。ここからのリンパは浅頚リンパ節に流れ、そこから深頚リンパ節へ注ぎます。浅い部位にあるリンパ節は小さくても容易に触れることが出来るために、何かの拍子に頸を触っていて偶々コリコリとしたリンパ節を触れると、とても気になるものですが、殆どのものは炎症性のものか、炎症も何もない「正常」といえるものです。
2. 耳介後リンパ節(じかいこうリンパせつ)あるいは乳突リンパ節(にゅうとつリンパせつ)
耳介の真後ろにある乳様突起という骨の出っ張り付近のリンパ節群で、側頭部からのリンパを集め、浅頚リンパ節に注ぎます。小児では特別な炎症が無くても目立つことがあり、「耳の後ろが腫れていますが、何か悪いものではないでしょうか」と心配になり耳鼻咽喉科を受診されることがよくあります。強く押せば痛みがあるのは普通のことで心配はありませんが、何もしないでも痛みがあるのは炎症が起きていると判断して抗生物質や消炎鎮痛剤が処方されることもあるでしょう。
3. 耳介前リンパ節(じかいぜんリンパせつ)あるいは耳下腺リンパ節(じかせんリンパせつ)
耳下腺部の表層に位置するリンパ節群で、前頭部や顔面上部のリンパを受け、顎下リンパ節や深頚リンパ節へ注ぎます。この部分のリンパ節は外耳炎・耳介湿疹、ニキビやアトピー性皮膚炎などで顔に炎症がある場合によく腫れます。
4. 頬リンパ節(きょうリンパせつ)
5. 頤下リンパ節(オトガイしたリンパせつ)
下アゴの直下にあるリンパ節群で、下口唇周囲の炎症で腫れることが多く、比較的浅い部分に触ることが出来ます。
6. 顎下リンパ節(がくかリンパせつ)
顎下腺の近くにあるリンパ節群で、顔面・口腔・鼻腔・副鼻腔・舌・顎・歯・口唇などのリンパを集め、深頚リンパ節に注ぎます。よくあるのは虫歯や歯槽膿漏などの口腔疾患が原因で腫れることです。舌癌、口腔底癌、歯肉癌では初期にこの部にリンパ節転移します。
7. 咽頭後リンパ節(いんとうこうリンパせつ)
咽頭の後壁にあるリンパ節群で、アーンとしてのどの真後ろに見える赤くブツブツとしたリンパ組織です。鼻腔・副鼻腔・鼓室・耳管・扁桃などからのリンパを受け、深頚リンパ節に注ぎます。乳幼児ではこの部分に膿が溜まり咽後膿瘍を形成して呼吸困難などの重篤な症状を出すことがあります。
8. 浅頸リンパ節(せんけいリンパせつ)
胸鎖乳突筋よりも浅側であり、外頚静脈に沿って流れるリンパ節群。頭部側面のリンパに加え、後頭リンパ節・耳介後リンパ節からのリンパを受けて深頚リンパ節に注ぎます。
9. 深頸リンパ節(しんけいリンパせつ)
胸鎖乳突筋の深側にあり、内頚静脈に沿うリンパ節群で、流入領域からは上・中・下に分けて考えることができます。頭頚部のすべてのリンパを集めて頚リンパ本幹に注ぎますから、耳鼻咽喉・頭頚部領域で最も臨床的に重要なリンパ節群です。大鎖骨上窩にあるものを鎖骨上リンパ節といい、とくに左の鎖骨上リンパ節には、腹部の癌が胸管から逆行性に転移することがある(ウイルヒョウのリンパ節転移)。
10. 喉頭前リンパ節および気管前傍リンパ節
喉頭、気管、甲状腺などからリンパを受け、深頚リンパ節に注ぐ。
自由が丘耳鼻咽喉科・笠井クリニック
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