急性の鼻炎と副鼻腔炎(蓄膿症)について
「鼻かぜ」をひいて、2、3日してもすっきりしないときは、急性の副鼻腔炎になっていることがあります。副鼻腔炎と鼻炎は合併して起こっていることが多く、特に幼小児の場合には鼻炎と副鼻腔炎は同時に起きていることが普通なので、鼻炎と副鼻腔炎を合わせて鼻副鼻腔炎と呼びます。
感冒後に起こる蓄膿症(急性副鼻腔炎)は誰しも経験するところです。長びくときには1ヶ月以上にわたって症状が続くこともありますが、自己免疫力に任せても自然治癒してゆくことが多く、必ずしも耳鼻咽喉科での治療が必要とは限りません。重篤な合併症が推測される場合には検査は重要ですが、耳鼻科でも内視鏡やレントゲン検査などは施行せず、薬物療法も行わずに経過をみることもあります。抗生物質の乱用も多剤耐性菌の蔓延という観点から厳に慎むべきとされています。下記のような症状も殆ど無く、レントゲンやCT検査等の画像診断で偶々副鼻腔に粘膜腫脹が見つかったといった場合では、薬などの治療を必要とすることは殆どなく、治癒するまで経過観察と言うことで対処してもよいでしょう。
[症状]
黄色い鼻水(膿性鼻漏)。鼻に血が混じる(鼻血)。鼻づまり。微熱。頭痛(特に後頭部、おでこの痛み)。偏頭痛。頭を下に向けると痛みが強くなる。頬や眼のまわりが痛む(顔面痛)。歯が痛む(参考記事:歯性上顎洞炎について)。(参考記事:急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎について)
副鼻腔の構造、副鼻腔炎(右上顎洞炎)
右
左 → 右
左
【急性副鼻腔炎、左右の中鼻道から膿汁が流出→治療後】
[治療に関するアドバイス]
できる限り早期に、十分な耳鼻科の治療を受けましょう。一般的な風邪ウイルスによる急性副鼻腔炎の治療には抗生物質は必要ありませんが、副鼻腔炎はウイルス性と細菌性の臨床像が非常に類似しているため、両者を識別 するのは非常に難しいことです。細菌性の副鼻腔炎は、通常、感冒などのウイルス性上気道感染の合併症として起こってきます。カゼ症状が数日以上続き、鼻汁分泌、鼻閉塞、顔面の疼痛、後鼻汁、嗅覚低下、発熱、咳、疲労感、歯痛、耳閉塞感や耳痛などの症状が出ているときに細菌性副鼻腔炎になってしまったと考えることが出来ます。そのような場合、抗生物質や消炎酵素剤の薬を処方し、鼻やのどのネブライザー治療が主な治療方法です。治療の不徹底は、慢性副鼻腔炎に移行したり、視力障害や上顎骨の骨髄炎などの合併症を引き起こすことがあります。急性副鼻腔炎がそのまま慢性化することもありますが、大部分は感染を繰り返している内に慢性化することが多いので、軽い鼻かぜ程度と考えずに、初期に徹底的に治療しておくのが、蓄膿症で将来悩まずにすむことになります。症状が軽くなったり、無くなったりしても完全に治ったかどうかは医師の判断にまかせて、勝手に治療を中止しないようにして下さい。症状が無くなっても、鼻の奥(副鼻腔)では炎症は続いています。その後も、もう少し薬を続けておくのが、すっかり治す秘訣です。
少し乱暴な言い方をすると、一般的には急性副鼻腔炎は合併症のない限り治療しないでも2〜3ヶ月の経過で自然治癒する傾向が強く、抗菌薬を投与しないで自然経過を観察することでもよいでしょう。一方、慢性副鼻腔炎は所謂遺伝的・体質的な要因が強く関与しており、治療しても根治することは難しいものです。ただし、急性と慢性の間に厳密な区切りをつけることが出来るわけではなく、ケースバイケースであって、一概に適正な治療方法を決めることが難しいというのが現状です。(参考記事:急性副鼻腔炎の予防について)
急性鼻炎に対しては通常は抗生物質は必要ありません。急性副鼻腔炎に対して抗生物質を使うかどうかの目安としては、症状が1週間以上も続いている場合、発熱や疼痛などの酷い症状が出ている場合、膿性鼻汁で鼻が詰まりで頬部の痛みが出ている場合、いったん治まった症状が再燃している場合などが挙げられます。(厚生労働省:抗微生物薬適正使用の手引き[第2版])
急性の鼻炎・副鼻腔炎(蓄膿症)は、悪くなるのはほんの数時間でなりますが、完全に治癒するには、かなりの日数を要します。治りが悪いからといって、すぐにあきらめずに根気づよく治療することで必ず良くなります。治療のために内服する消炎酵素剤等の薬は月の単位で長く使用することが多いのですが、副作用が起こることはまずありません。早い効果は期待できないかもしれませんが、安心して使える薬だといえます。漢方薬も長年の歴史をもったものですから、安心です。しかしどの様な薬でも、その人に合っていなければ効果は良くありません。効果がなければ、薬は適宜変更してゆくことになります。(急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン
2010年版
自由が丘耳鼻咽喉科 笠井クリニック
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