鼓膜所見と中耳炎診療ガイドライン 笠井耳鼻咽喉科クリニック・自由が丘診療室

鼓膜所見

右正常鼓膜正常鼓膜・右耳  左正常鼓膜正常鼓膜・左耳

急性中耳炎1急性中耳炎1,急性中耳炎2急性中耳炎2,急性中耳炎3急性中耳炎3

滲出性中耳炎1滲出性中耳炎1,滲出性中耳炎2滲出性中耳炎2,滲出性中耳炎3滲出性中耳炎3

「小児急性中耳炎診療ガイドライン」について
◆国内外のエビデンスに基づき、小児急性中耳炎(15歳未満)の診断・検査・治療法について示した学会レベルのガイドライン。
◆主として正確な鼓膜所見の評価、鼓膜切開を含む耳処置を施行できる耳鼻咽喉科医を対象としている。
◆特に留意したのが、鼓膜における正確な局所所見であり、その所見と臨床症状をスコア化し、軽症・中等症・重症の3段階に重症度分類を行い、それぞれに対する治療アルゴリズムを示した。
◆日本においては肺炎球菌やインフルエンザ菌の薬剤耐性化が拡大しているので、耐性菌を念頭においた薬物治療が必要である。
[診断]
◆鼓膜所見と臨床症状から軽症、中等症、重症に分類。「耳痛、発熱、囁泣・不機嫌」の臨床症状と「鼓膜の発赤・膨隆、耳漏」の鼓膜所見をスコア化して、5点以下を軽症、611点を中等症、12点以上を重症として診断。特に鼓膜の詳細な観察が不可欠であり、鼓膜の膨隆と耳漏のスコアを高く配点した。また、3歳未満の低年齢児については反復化、より難治化しやすいので3点を加算した
(図1
急性中耳炎の多くは乳幼児期に発症し、年少児で集団保育を受けている患児ほど抗菌薬耐性菌の検出率が高く重症化しやすい。従って、患者さんの生活背景、既往を把握することは、急性中耳炎の起炎菌の耐性化の程度、難治性か否かを予測する上で有用であり、十分な問診が大切である。
◆急性中耳炎のリスクファクター
1
 低年齢(特に3才未満)
2
 非母乳栄養児
3
 感染の反復
4
 抗菌薬の使用例(過去1ヶ月以内)
5
 3日間の初期治療が無効
6
 集団保育児と一緒に住んでいる
7
 過去に耐性菌の検出
[小児急性中耳炎診療における経口抗菌薬選択のポイント]
◆急性中耳炎の主要起炎菌は、インフルエンザ菌と肺炎球菌で約6割を占めるので、両起炎菌に対応した抗菌薬を選択する。
◆急性中耳炎の第一選択薬はペニシリン系薬だが、わが国では、肺炎球菌とインフルエンザ菌の薬剤耐性化が進み、本ガイドライン作成に関わった委員の施設でもPRSPPJSPで合わせて約60%、BLNARが約50%に達しており、特にBLNARはペニシリン系薬では治療しにくいのが現状。
◆薬剤耐性と起炎菌の感受性(MIC)に考慮し、急性中耳炎の重症度に応じた抗菌薬を選択。現時点では、アモキシシリン高用量やメイアクト(CDTRPl)により有効性が期待できる。
[軽症の場合]
◆軽症の急性中耳炎の多くは抗菌薬非投与で軽快すると報告されており、軽症例では3日間は抗菌薬を投与せず、自然経過を観察する。
◆薬剤耐性菌による急性中耳炎例が増大しているわが国の現状を踏まえ、抗菌薬を投与しない場合は、正確な鼓膜所見の観察による軽症の診断と抗菌薬非投与後の厳重な経過観察が重要である。
3日後に改善がみられない場合はAMPC(アモキシシリン)常用量を5日間投与する。
◆さらに改善がみられない場合は、AMPCの高用量投与あるいはCVAAMPC(クラブラン酸・アモキシシリン)の114製剤投与、あるいはメイアクト(CDTRPl)常用量を5日間投与する。
◆主要な臨床症状である耳痛に対する抗菌薬の効果は不明であり、3歳以下の小児の解熱鎮痛薬としてアセトアミノフェンが選択肢となる。
[中等症の場合]
◆中等症においては抗菌薬の投与期間は5日間。34日目に病態の推移を観察することが望ましい。
AMPC常用量を5日間投与し、5日後に改善がみられない場合は、薬剤感受性を考慮して、AMPC高用量、CVA/AMPC高用量、メイアクト高用量、鼓膜切開+AMPC常用量のいずれかを5日間投与する。
AMPC常用量5日間投与で改善がみられない場合は、BLNARの可能性が高いので、メイアクトの高用量を投与する。
◆急性中耳炎は、中耳の炎症と貯留液が病態であり、鼓膜切開による排膿、排液は病巣の治癒促進に有効であることは多くの耳鼻咽喉科専門医のコンセンサスが得られているが、治癒促進に有意であるという報告は少ない。従って、鼓膜切開は重症度に応じた治療法の選択肢の一つとした。
[重症の場合]
◆重症例においても抗菌薬の投与期間は5日間で、34日目に病態の推移を観察して、改善がみられない場合は薬剤を変更する。
AMPC高用量、CVAAMPC114製剤投与、CDTRPl高用量のいずれかを5日間投与と鼓膜切開する。
5日後に改善がみられない場合は、AMPC高用量、CVAAMPC114製剤)、CDTRPl高用量のいずれかで、薬剤感受性を考慮して、薬剤を変更して5日間の投与と鼓膜再切開する。
◆さらに改善がみられない場合は、ABPCCTRXの点滴を行う。ペニシリン系薬のAMPCで改善しないような患者さんについては、耳鼻咽喉科専門医に是非相談して欲しい。
◆低年齢、保育園児は重症化しやすいので治療上注意が必要である。鼻疾患を合併している症例では、鼻治療も併せて行うことが選択肢となる。


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