口腔乾燥症、口渇の原因
加齢現象、萎縮性舌炎、シェーグレン症候群、放射線照射による障害、糖尿病、高血圧、高熱、脱水、下痢、薬剤の副作用(抗うつ剤、向精神薬、降圧薬、利尿薬、抗痙攣薬、パーキンソン病治療薬、抗ヒスタミン薬など)
口腔不定愁訴の原因(ロの渇き、ロ・舌の痛み、ロの臭い、味の異常)
@薬の副作用 A心身症 B更年期障害 Cストレス D高齢者
口腔乾燥癌患者の臨床症状
@自覚症状:飲水切望感、口内乾燥感、唾液の粘稠感、口内灼熱感、味覚異常、口内疼痛(特に夜間) 、食物摂取困難など
A他覚症状:口唇・口内乾燥、口腔粘膜のひ薄化・紅斑、舌乳頭の萎縮、口角びらん、歯・口内の汚染、唾液の粘稠度が高い、う歯の多発、義歯の装着困難、義歯による褥創、口腔カンジダ症など
口腔乾燥症の実態調査
口腔乾燥症を自覚している人
770人(平均年数63.3歳)中200人(26.8%)、65歳以上31.1%
厚生労働省長寿科学総合研究事業「高齢者の口腔乾燥症と唾液物性に関する研究」より
日本口腔粘膜学会委員会によるドライマウスの分類
1.唾液腺自体の機能障害によるもの
1)シューグレン症候群: 1999年改訂の本邦の診断基準を満たすもの
2)放射性ドライマウス:放射線治療または被爆の既往がある。
3)加齢性ドライマウス:年齢が80歳以上
4)移植片対宿主病(GVHD)血液幹細胞または臓器移植後のGVHD
5)サルコイドーシス
6)後天性免疫不全症候群(AIDS)
7)悪性リンパ腫
8)突発性口腔乾燥症(原因が特定できなかったもの)
2.神経性または薬物性のもの
1)神経性口腔乾燥症
恐怖、興奮、ストレス、抑うつなどの精神状態、脳炎、脳腫癖、脳外傷などの中枢性病変、顔面神経上唾液核や分枝の障害などの唾液分泌の神経系の障害などがある。
2)薬物性口腔乾燥症:向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗コリン鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、降圧剤、利尿薬などを服用している。
3.全身性疾患または代謝性のもの
1)全身代謝性口腔乾燥症
熱性疾患、発汗過多、脱水症、下痢、尿崩症、糖尿病、甲状腺機能亢進症、心不全、腎機能不全、貧血、過度のアルコール飲用、過度の喫煙などがある。
2)蒸発性口腔乾燥症
口呼吸(副鼻腔炎や習慣性など)、過呼吸、開口、摂食嚥下障害などがあり、口腔の環境変化による水分蒸発といった局所的代謝障害がある。
唾液分泌量の減少および唾液腺機能低下がない。
口内乾燥症の治療
1.梅干し、レモン、シュガーレスガムなど唾液分泌を促進する食物の摂取。
2.口腔内環境整備:ハチアズレ、アズレン、イソジンガーグルなどのうがい。
3.レモン加グリセリンの口腔粘膜塗布、人工唾液(サリベート)。
4.内服治療
唾液腺ホルモン:パロチン
植物性製剤:セファランチン
気道粘液改善:ムコダイン、ビソルボンなど
漢方薬:麦門冬湯、柴朴湯、柴苓湯、白虎加人参湯、五苓散、八味地黄丸、十全大補湯、六君子湯、滋陰降火湯など
利胆剤:フェルビテン
女性ホルモン:メサルモン-F(閉経後の口内乾燥に)
ムスカリン作動薬:硫酸セビメリン(サリグレン、エポザック)、サラジェン
唾液分泌量の測定:ガムテスト
ガムを噛み、出てくる唾液の量を注射器やメスシリンダーなどを用いて測定する。
10分間で10ml以下であれば分泌量低下と判断する。
シェーグレン症候群
1933年、スウェーデンの眼科医Henrik
Sjogrenにより提唱された乾燥症候群で、唾液腺や涙腺などの外分泌線へリンパ球が浸潤して腺組織が破壊され、分泌障害によって漸進的な乾燥症状を引き起こす、自己免疫疾患の一つ。主症状は口の渇き、眼の乾燥で、唾液腺腫脹などの症状を伴うことも多い。唾液の分泌量が減少することで、重度の口腔乾燥感や会話障害、食物の咀嚼・燕下困難、不眠などが生じ、QOLは大きく低下する。また、生理的な唾液のもつ機能が充分に発揮されなくなるため、齲歯、口内炎、歯肉炎、口腔カンジダ症、味覚障害などが引き起こされることもある。中高年の女性に多い。単なる水分補給だけではシェーグレン症候群の口腔乾燥症状を改善することは出来ず、根治的治療法はないが、唾液腺刺激による口腔乾燥症状改善薬や人工唾液などの対症療法、生活指導が有効である。
主な臨床症状
頭痛 発熱 眼の乾き 鼻腔の乾燥 耳下腺腫脹 口の渇き 齲歯の増加 慢性気管支炎 空咳 慢性甲状腺炎 間質性肺炎 萎縮性胃炎 原発性胆汁性肝硬変 自己免疫性肝炎 皮膚の乾燥 易疲労感 掻痒感 尿細管性アシドーシス レイノー現象 環状紅斑 紫斑 膣乾燥による性交障害 関節痛 関節炎 手足のしびれ
各種膠原病との合併頻度
シェーグレン症候群に合併することが知られている疾患
関節リウマチ20〜50%、全身性エリテマトーデス20〜45%、混合性結合組織病6〜20%、強皮症6〜14%、多発性筋炎・皮膚筋炎2〜10%、慢性甲状腺炎25〜40%
唾液の主な働き
潤滑作用:口腔内の乾燥を防ぎ、咀嚼・嚥下を容易にする
消化作用:アミラーゼによりでんぷんを分解する
殺菌・抗菌作用:リゾチームなどにより口腔細菌叢をコントロールする
緩衝作用:炭酸・重炭酸系により口腔内を中性に保つ
味覚の媒体:味覚物質を溶かし、味覚感覚を補助する
自浄作用:食物残渣を貯留させず、細菌増殖などを防ぐ
発音の円滑作用:発声時に、舌や頬の運動を円滑にする
保護作用:粘膜を機械的刺激から保護する
水分代謝の調節:脱水時には唾液分泌が抑制される
排泄作用:体内の不要物を唾液中に排泄する
流涎症・唾液分泌過多症
特発性:原因不明(副交感神経緊張亢進に関係)
続発性:
1.真性(唾液分泌過多がある)
1)口腔疾患に起因:口内炎、舌炎、腫瘍、義歯不適合
2)薬物中毒:水銀、鉛、ニコチン、ヨード、ヒ素など
3)中枢性分泌過多、異常筋緊張による:脳炎、てんかん、外傷など
4)ヒステリー、心身症、自律神経障害によるもの
5)胃炎、膵炎など消化器疾患
6)妊婦、授乳でもおこりうる
7)バセドウ、糖尿病でもまれにみられる
2.仮性(分泌過多はなく嚥下障害によるもの)
咽頭・食道の狭窄や神経麻痺により唾液が口腔内に貯留し流涎となる。高齢者に多い。
唾液腺症
概念:唾液腺症(sialadenosis)は非炎症性及び非腫瘍性に両側の唾液腺腫脹を来す疾患の総称で、1959年にRauchによって初めて記載された。
症状:両側耳下腺、両側顎下腺、あるいは両側同時の腫脹(痛みはないことが多い)
関連疾患:糖尿病、下垂体ホルモン異常(末端肥大症、尿崩症)、性ホルモン機能異常、降圧剤・抗神経薬使用者、摂食障害(拒食症・過食症)、栄養失調
検査所見:しばしば高アミラーゼ血症を認める。RA因子、自己抗体発現は殆ど認めない。
画像検査:CT・MRIにて唾液腺腫大を認める。
理検査所見:光顕;腺房細胞の腫大と細胞質の淡明化。
診断:検査所見と既往歴等を含めて総合的に判断する。
鑑別診断:シェーグレン症候群、キュットナー腫瘍、ミクリッツ症候群、木村氏病、悪性リンパ腫
主な基礎疾患:摂食障害、高血圧、糖尿病、自律神経失調症、喘息、うつ病
(東京女子医大耳鼻咽喉科教授、吉原俊雄先生)
自由が丘耳鼻咽喉科 笠井クリニック
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