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21 AT 33 21 AT 33(1980年)

ROCKET●RJ 7670(LP日本盤)、ROCKET●077 114-2(03年リマスターCDヨーロッパ盤)

Produced by: EJ & クライヴ・フランクス

 EJ33歳で21枚目のアルバム。新時代のスタートを飾る本作は、前作「Victim Of Love 」(1979年)とほぼ同時期に既に製作に取りかかって作られたものである。EJは遊び心タップリのディスコ作品を作る傍ら、80年代へ向けての創作活動も忘れてはいなかった。そして、何よりも嬉しいのが、本作からバーニーとのコンビ復活、ナイジェル・オルスン(ds)とディー・マレー(b)の復帰である。作詩陣にはバーニー(3曲)の他、ゲイリー・オズボーン、トム・ロビンソン等がペンをとっている。バックのゲストも実に多彩で、スティーヴ・ルカサー(g)、ビル・チャンプリン(b vo)、イーグルスのメンバー(b vo)、ブルース・ジョンストン(chor & chorアレンジ)、トニー・テニール(chor)等が参加している。

 全体的には、従来のEJサウンドとは違ったシャープな演奏でまとめられているが、やはり「トゥー・ルームス-Two Rooms At The End Of The World」等、バーニーとの共作3曲の出来が傑出している。他にはシングル・カットされた「リトル・ジニー-Little Jeannie」、「恋という名のゲーム-Sartorial Eloquence」、「Dear God」。前年(1979年)にトム・ロビンソンのシングル「恋に落ちたら・・・」としてもリリースされた「愛のおとしあな-Never Gonna Fall In Love Again」等、なかなかの佳曲揃いである。

 この70年代後半から80年代前半にかけてAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック-ジャズやソウルのエッセンスを加え洗練された大人のロック)が一大ブームとなって音楽シーンに台頭していた。EJ自身も数年前より時代の音を敏感に察知して、自らの作品作りにもフィリー・ソウルの要素を積極的に取り入れたりして自身の音楽上にも変化が見られた。そうした流れから必然的に今回はソフト&メロウ化されたAOR作品となっていったのだろう。EJの70年代の数多い傑作が、もしこの世に存在しなければ、これはAORの名盤となっていたかもしれない。


ザ・フォックス The Fox(1981年)

ROCKET●25PP-21(LP日本盤)、ROCKET●077 113-2(03年リマスターCDヨーロッパ盤)

Produced by: クリス・トーマス(一部、EJ & クライヴ・フランクス)

 これは、プロデューサーに旧友クリス・トーマスを迎えた初作品である。収録曲中、「Heart In The Right Place」「Carla/Etude〜Fanfare〜Chloe」「Elton's Song」の3曲は、「21 AT 33」(1980年)のアウトテイクのため、EJ & クライヴ・フランクスのプロデュース作となる。作詩陣もバーニー(4曲)の他、ゲイリー・オズボーン、トム・ロビンソン等、前作と同様の顔ぶれだ。バックには前作に続いてビル・チャンプリン(b vo)が再びゲスト参加している。本作は前作の香りを残しながらも、随所にEJらしい繊細さもプラスされた快作となった。本作からは、「Nobody Wins 恋は、はかなく」等がシングル・カットされている。

 「Nobody Wins」のフランス語バージョンが、1983年にリリースされた12インチ・シングル「Cold As Christmas(In The Middle Of The Year)」のカップリングとして収録されている。1982年には、「ザ・フォックス THE FOX」の映像版もリリースされている。


ジャンプ・アップ JUMP UP!(1982年)

ROCKET●25PP-49(LP日本盤)、MCA●MCAD-10499(CD米国盤)、ROCKET●077 112-2(03年リマスターCDヨーロッパ盤)

Produced by: クリス・トーマス

 前作に続いての起用となったクリス・トーマスによる初の全面プロデュース作。このジャケット・デザインは、EJ作品中でも私が最も好きではないもので、ずいぶんこの表紙のおかげで作品の印象も損をしているように感じる。作詩陣にはバーニー(5曲)の他、ゲイリー・オズボーン(4曲)、ティム・ライス(本作で1曲のみだが初コンビ作となる)らが名を連ねている。バック参加では、TOTOのジェフ・ポーカロ(ds)による切れのあるドラミングと、J・N・ハワード(シンセ&アレンジ)によるデヴィド・ペイチ風のプレイによって、「JUMP UP!」はTOTOを彷佛させるサウンド(実際にはもっとマイルドではあるが、)に仕上げている。当のTOTOは、ほぼ同時期にリリースされたアルバム「聖なる剣-TOTO4」からのシングル「ロザーナ」「アフリカ」の記録的な大ヒットにより、世界的な人気を獲得しバンドとしてもトップの地位を確立した。まさに時代の音を積極的に取り入れたこの「JUMP UP!」は、EJの次回作に向けて大きなジャンプアップ作品となった。

 本作品中では、シングル曲となった「ブルー・アイズ-Blue Eyes」「エンプティー・ガーデン-Empty Garden」「Princess」「All Quiet On The Western Front」がそれぞれ良く出来ている。


トゥ・ロウ・フォー・ゼロ TOO LOW FOR ZERO(1983年)

ROCKET●25PP-90(LP日本盤)

ROCKET●558 475-2(リマスターCD英国盤)

Produced by: クリス・トーマス

 「こんなEJの登場を長く待っていました!」と思わず叫びたくなる。70年代後期の急速な低迷を考えると、もはやEJもこれまでか..と複雑な気持ちのなかで次々とリリースされた試行錯誤の作品群。そして、こうして手にした本作「TOO LOW FOR ZERO」の素晴しい出来を耳にし、喜びもひとしおだ。80年代の作品中ではこれが一番好きで、この年代でも最高傑作ではないだろうか。

 本作では作詩も全曲バーニーが担当している。バックも70年代の第三期EJバンドのメンバーで、デイヴィー(g)、ディー(b)、ナイジェル(ds)レイ・クーパー(Perc)とキキ・ディー等、最強のEJファミリーが勢揃いした。やはりこのメンバーだと何かが違う。とにかく最高で、私はこの80年代のEJの声が一番円熟味と艶があって好きだった。演奏にもかっての勢いを感じる。ライヴの定番・代表曲でもある「アイム・スティル・スタンディング-I'm Still Standing」と「ブルースはお好き?-I Guess That's Why They Call It The Blues」や、個人的にお気に入りの「キッス・ザ・ブライド-Kiss The Bride」、隠れた名曲「心は寒いクリスマス-Cold As Christmas(In The Middle Of The Year)」と「ワン・モア・アロウ-One More Arrow」等、作品もとても充実している。

 この時代はプロモーション・ビデオ全盛であり、カフェ等の店内で頻繁にビデオ・クリップがオン・エアされていた。あのマイケルの「スリラー」のマンモス・ヒットは前年のことだった。ミュージシャンにもエンターティメントの要素が求められた頃でもあり、ちょうどエルトンのエンターティナーとしての華やかな部分が時代にうまくマッチしていたのだろう。

 この年には、「アイム・スティル・スタンディング」のピアノ型ピクチャー・シングルも発売されている。

 リマスター盤には、ボーナス・トラックとしてアルバム未収録の「Earn While You Learn」「Dreamboat」「The Retreat」の3曲が追加された。


ブレイキング・ハーツ Breaking Hearts(1984年)

ROCKET●25PP-130(LP日本盤)、ROCKET●077 111-2(03年リマスターCDヨーロッパ盤)

Produced by: クリス・トーマス

 毎回、多彩なゲストをアルバムに迎えているが、今回はそうした参加はみられない。前作「TOO LOW FOR ZERO」に引き続いて、デイヴィー(g)、ディー(b)、ナイジェル(ds)がバックを固め、70年代最強のEJバンドのみという気心の知れた仲間達で手堅い音作りをしている。作詩は全てバーニーの新たな書き下ろしとなる。アルバム・ジャケットのEJもスーツ姿でなかなかオシャレに決め込んでいる。(この年にエンジニアのレナーテと結婚...なるほど、センスがいいのも当然か!)

 本作収録のロックン・ロールやバラード・ナンバーも、前作の華やかなヒット曲オン・パレードという作風とは打って変わって、全体的にも落ち着いたムード漂う良質の作品集という感じになっている。なかでも「Burning Building」等、スローな曲が特にいい。先行シングルでリリースされた「サッド・ソングス-Sad Songs(Say So Much)」の他、「あの娘のシューズ-Who Wears These Shoes」「ブレイキング・ハーツ-Breaking Hearts」「パッセンジャーズ-Passengers」が本作よりシングル・カットされている。

 これで4作目となるクリス・トーマスの手慣れたプロデュースのもと、EJとEJバンドのバランスのとれた円熟味のあるプレイが、本作をとても味わい深いものにしている。次回作への期待も更に高まるところだが、残念なことにこのメンバーでの作品はこれが最後となってしまった。


アイス・オン・ファイアー Ice On Fire(1985年)

ROCKET●32PD-71(826 213-2)(CD日本盤)

ROCKET●558 476-2(リマスターCD英国盤)

Produced by: ガス・ダッジョン

 本作ではなんと!あの名プロデューサー、ガス・ダッジョンが久々に復帰している。今回の再起用のきっかけとなったのは、当時ガスが経済的窮地に陥っているとのことを耳にしたEJが、なんとか彼の力になりたいとの思いから仕事(プロデュース)を依頼したというのが理由らしい。前作まで常に安定した良質のポップ・アルバムを生成し続けてきたEJだが、マンネリを好まぬEJにとって今回のガスの起用が、偶然にも上手く功を奏し良い意味での刺激剤となったようだ。本作はこの80年代でも斬新な音を上手く取り入れた瑞々しさの溢れる作品となった。

 バックでは、お馴染みの顔ぶれはデイヴィー(g)とキキ・ディー(コーラス)のみであるが、ゲストにはジョージ・マイケル(vo,コーラス)、ニック・カーショウ(g)、クイーンのロジャー・テイラー(ds)とジョン・ディーコン(b)等が参加し、華やかさに色を添えている。本作からシングル・カットされた「悲しみのニキタ - Nikita」「ラップ・ハー・アップ - Wrap Her Up」が秀逸の出来だ。

 この80年代半ば頃は、音楽媒体もLP(アナログ)からCD(デジタル)へと急激に移行していた時期で、私が初購入したEJのCDもこの「アイス・オン・ファイアー」だった。私が本作を斬新だと感じたのも、こうしたメディアの変化が一因となっているのかもしれない。85年リリース時のCD日本盤は、CD英国原盤に日本語解説が付けられた簡素なものだった。このCDのボーナス・トラックには「ACT OF WAR」が収録されていたが、CDリマスター化により4曲が追加で入れ替えられた。そのボーナス・トラックスは、「The Man Who Never Died」と、「Restless」「Sorry Seems To Be The Hardest Word」「I'm Still Standing」という3曲のライヴ(84年のウェンブリー公演)で、それぞれシングルのB面に収録されていた曲である。


レザー・ジャケッツ Leather Jackets(1986年)

ROCKET●32PD-198(830 487-2)(CD日本盤)

ROCKET●830 487-1(LPオランダ盤)

Produced by: ガス・ダッジョン

 再びガス・ダッジョンを起用した意欲作。だが、本作の半分以上が前作「アイス・オン・ファイアー」からのアウト・テイク(「Leather Jackets」「Hoop of Fire」「Go It Alone」「Gypsy Heart」「Slow Rivers」「Angeline」の6曲)で、そのためアルバム全体の印象もやや散漫な感じはぬぐえない。EJ自身も本作「レザー・ジャケッツ」の出来は、あまり気に入ってないとコメントしている。それでも、シングル・カットされた「ハートエイク-Heartache All Over The World」「スロウ・リヴァー-Slow Rivers」等、個々の楽曲の粒は揃っており、個人的には結構好きなアルバムである。

 同年には、「HOOP OF FIRE」と「ANGELINE」の美装ジャケット仕様の2枚組7インチプロモ盤英国)も存在している。


エルトン・スーパー・ライヴ Live In Australia(1987年)Live In Australiaへ


REG-ストライクス・バック REG Strikes Back(1988年)

ROCKET●834 701-1(LPオランダ盤)、ROCKET●32PD-476(CD日本盤)、ROCKET●558 478-2(リマスターCD英国盤)

Produced by:クリス・トーマス

 本作では再びプロデューサーにクリス・トーマスを迎え、精力的な活動を続けるEJの新たなる力作となった。この時期のEJは、英国新聞からの必要以上の自分への中傷記事に悩まされ続けてきた。本作タイトル「REG Strikes Back 〜 レグ(EJの本名)の逆襲」は当時のEJの心境を物語るものだった。

 EJ「僕の逆襲だ。もちろん、音楽に対してではなく、英国と英国の新聞に対してだ。」

 1987年に喉の手術を受けてから後の初作品だけにEJのコンディションも心配されたが、そんな思いさえ払拭する元気な仕上がりとなった。ジャケット写真上に脱ぎ捨て並べられた数々の衣裳が、タイトルと同様に、素顔を冠にしたEJの新たな決意が伺える。本作は、再び転換期を迎えたEJが、この後90年代以降への数々の名作を創出していくきっかけともなった作品であろう。第1弾シングルの「I Don't Wonna Go On With You Like That」は、EJにとっては80年代最大のヒット曲となった。他には「Town OF Plenty」「A Word In Spanish」等がシングル・カットされている。

 98年のCDリマスター化にて更に4曲が追加された。そのボーナス・トラックスは、「Rope Around A Fool」、「I Don't Wonna Go On With You Like That」(The Shep Pettibone Mix & Just Elton And His Piano Mix)の2種リミックス・ヴァージョン、「Mona Lisas And Mad Hatters(Part 2)」のThe Renaissance Mix を収録。全て、既にリリースされていたシングルのみの収録曲である。


The Complete Thom Bell Sessions(1989年)

MCA●MCA-39115(米国LP盤)MCA●MCAD-39115(米国CD盤)

Produced by: トム・ベル

 これは私の大のお気に入りの一つです。1977年に新作としてレコーディングされたもので、製作中にEJ自身が作品の出来が満足できず、一度オクラ入りにされたもの。その中の「Mama Can't Buy You Love」を含む3曲が、1979年に12インチシングル「The Thom Bell Sessions」という形でリリースされている。その後、残りの収録分を含む全6曲がこうしてミニ・アルバムとして出された。

 全曲、トム・ベルのプロデュースによるフィリー・ソウル色が濃く出ており、EJのボーカルもいつもと全然違ったソフトな歌いぶりが作品と妙にマッチしている。EJの自作は2曲のみで、「Nice And Slow」はEJ&バーニーとトム・ベルとの共作、「Shine On Through」がEJとゲイリー・オズボーンの共作、残りはトム・ベル等のペンによるもの。コーラスではスピナーズも参加している。77年のセッション録音から今回のリリースまで12年間も眠っていた音源だが、これは、オリジナル・アルバムとはまた一味違った素晴しい作品集である。

 先の12インチシングル「The Thom Bell Sessions」(1979年)収録の3曲とはミックスが若干異なるようで、79年版がEJのボーカルをメインとした音作りだったのに比べ、この「The Complete Thom Bell Sessions」(1989年)は、全編に渡るソウルフルなコーラスの多用によって、フィリー・ソウル・グループ風の趣がみられる。そのため、当時のトム・ベルの起用を考えるとこちらがオリジナル・バージョンではないかと推測する。(残念ながら1979年のリミックス・シングル等ではこのコーラス部分が殆どカットされていた。)特に「Are You Ready For Love」では、中盤から後半にかけてのボーカル・パート(79年のリリース時にはEJのパートがメインだったところ)が、コーラス(スピナーズ&他メンバー)がメインとなってEJとのデュエットに近い絡みとなる全く趣の違ったバージョンになっている。特集「Are You Ready For Love」はこちらへ

 次の新作「シングル・マン」(1978年)には、「Shine On Through」のみがまったく別アレンジの再録でアルバムのトップを飾っている。トム・ベル色の濃かったこの曲が、まったく別のEJポップに変わっているので、聞き比べてみるのも面白いかも。EJはなぜ、トム・ベルとのセッションを没にして、次作の「シングル・マン」に取り組んだのか?..その答えがこの曲にあるのではないでしょうか。


スリーピング・ウィズ・ザ・パスト Sleeping With The Past(1989年)

ROCKET●838 839-1(EJLP4)(LP英国盤)、ROCKET●PPD-1048(CD日本盤)、ROCKET●558 479-2(リマスターCD英国盤)

Produced by:クリス・トーマス

 元気一杯の前作「REG-ストライクス・バック」から約1年、80年代を締め括るべき傑作の登場である。これは優しさと力強さが見事に調和したソウル(魂を込めた)アルバムである。本作での充実振りは、アルバム・ジャケット(これが秀逸の出来だ!)の穏やかなEJの表情からも充分汲み取れる。これまでの精力的な活動の集大成ともいえるEJポップ・ワールドが、ここに煌めくばかりに展開されている。

 本作は意表を突く「Durban Deep」から始まり、シングル・カットされた「Healing Hands」「Whispers」「Sacrifice」、バラードの佳曲「Blue Avenue」まで、優れた楽曲が続いている。EJ&バーニーの2人による成熟された作品群、そして今回で通算6作目となるクリスの適格なプロデュースにて、「Sleeping With The Past」をマンネリになることなく極めて純度の高い作品に仕上げている。EJ自身の波乱含みの私生活が続いていた当時、その3年後に同じトリオ(EJ&バーニー、クリス)によって、新たなる大傑作「ザ・ワン The One」が生み出されようとは誰が予測したであろうか。

 98年のCDリマスター化にて更に2曲がボーナス・トラックスとして追加された。「Dancing In The End Zone」、「Love Is A Cannibal」。それぞれ、既にリリースされていたシングルのみの曲だ。


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