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ニック・カーショウ Nik Kershaw

 1958年3月1日、ニコラス・デヴィッド・カーショウは英国ブリストルで生まれる。少年時代はサッカーに夢中となるが、13才の時にスレイドの大ファンとなる。ハイ・スクールに入ると、仲間とハード・ロック・バンド、ハーフ・ピント・ホグを結成。その後いくつかのバンド歴を経て、1978年、ジャズ・ファンク・バンド、フュージョンに参加し、1980年プロとしてアルバム・デビューを果たす。このフュージョンで4年間在籍後、グループを脱退し地道に曲作りをする。そうして完成させたデモ・テープがMCAレコードの耳にとまり、契約となった。1984年、デビュー・アルバムの「Human Racing」はリリース以来実に8ヶ月以上にも渡り全英チャート・インし続け、「恋はせつなく-Wouldn't It Be Good」(全英4位)等、4枚のスマッシュ・ヒットを生んだ。

 1984年6月30日、ロンドン、ウェンブリー・スタジアムにてサマー・フェスティバルの一環として行なわれたビッグ・イベントに、ニックが出演する。他にはEJ(この模様はデイ&ナイト・タイム・コンサートとしてビデオ・リリースされた)、クール&ザ・ギャング、ビッグ・カントリー等が出演し、7万2千人のロック・ファンを魅了した。 同年、傑作アルバム「ザ・リドル」(第2作目)をリリース。ニックはこの2年間(84〜85年)で全英チャート7曲連続トップ20ヒットを放ち、ポップ・アイドルとしての人気を決定づけた。

 そんななかでニックは、ポップ・スターである自分を悩んだ。ニック「ポップ・スターであることは、あまり心地よいものではなかった。偶発的にそうなってしまったからね。だから、スタジオに入ってライティングやギターを弾いている時がすごく幸せだった。」

 EJはそんなニックのソング・ライター、シンガー、ギタリストとしての才能をいち早く認め、とにかく惚れ込んだ。1985年、EJのアルバム「アイス・オン・ファイアー」でニックはギタリストとしてゲスト参加する。また、「ACT OF WAR」のビデオ・クリップでも登場し、そのなかでギターを弾いている。EJは自分のヨーロッパ&英国ツアーのサポート・メンバーとしてニックを迎え、それ以後も何度かヨーロッパ・ツアーのメンバーとして招いている。ニックもこれをきっかけに、自身の新作を発表する度にEJのアドバイスを受けるようになった。1989年5月、EJのロンドン公演ではサポーティング・アクトとしてもステージに立った。

 1991年、ニックはソング・ライターとして、他のアーティストへの楽曲の提供やプロデュース業に徹する。ジェネシスのトニー・バンクスのソロ・アルバムに共作者&シンガーとして全面バック・アップした。また、チェズニー・ホークスにも曲を提供し、プロデュースまで手がけた。このチェズニーの「ザ・ワン・アンド・オンリー」は、全英チャート5週連続第1位に輝いた。その後もジェイソン・ドノヴァン、ボーイ・ゾーンのローナン・キーティング等と仕事を共にする。

 1993年、EJのアルバム「デュエット・ソングス」に参加し、「オールド・フレンド」を作詞&作曲、アレンジ、プロデュース、全楽器まで総てを手がけた。1999年、前作から実に10年振りのアルバム「15 minutes」(第5作目)を発表。ブリトニー・スピアーズのアルバムにも楽曲を提供する。


Human Racing(1984年)

MCA●MCD 01892(CD英国盤)

Produced by: Peter Collins

 当時の流行りの売れっ子路線で鮮烈なデビューを飾ったニックの初アルバムである。デビュー曲の「I Won't Let The Sun Go Down On Me」(全英2位)を始め、本作からは「恋はせつなく-Wouldn't It Be Good」(全英4位)、「Dancing Girls」(全英13位)等のヒット曲が生まれている。軽快なノリのポップ・ナンバー「I Won't Let The Sun Go Down On Me」は、実は核をテーマにしたものだった。

 ニックは新人ながらも、自身で全曲ライティング&アレンジ、ボーカル、ギター、ベース、キーボード、パーカッションを手がけ、既に才能豊かなマルチぶりをみせている。バックにはドラムスでチャーリー・モーガンが参加している。


ザ・リドル The Riddle(1984年)

MCA●MVCM-18536(CD日本盤)

Produced by: Peter Collins

 ニックの2枚目のアルバムで、彼の最高傑作といわれるものだ。サウンド的には前作の延長線上にあるが、ここからも3曲のヒット曲が誕生している。ニックの代表曲ともいえる「ザ・リドル」(全英3位)、「ワイド・ボーイ」(全英9位)、「ドン・キホーテ」(全英10位)等を収録。本作にてポップ・アイドルとしての地位を確立した感のあるニックだが、日本でも「ザ・リドル」が後に見事にパクられてアイドルの曲(小泉今日子の「木枯らしに抱かれて」)としてヒットしている。

 ニックは前作同様、全曲作詞作曲、ボーカル、ギター、ベース、キーボード、パーカッションを担当。バックには再びドラムスでチャーリー・モーガンが参加している。ニックのポップ・センス光る憶えやすいメロディー・ラインからも、ソングライターとしての非凡な才能が垣間見える。本作はこうした彼の魅力が凝縮された作品集となったが、彼は自分のアイドル的な扱われ方に対して疑問を抱くようになり、この後、音楽的な方向転換を迎えるのだった。


フィフティーン・ミニッツ 15 minutes(1999年)

EAGLE●RCCY-1064(写真左:CD日本盤)、PYRAMID●R2-75727(写真中央:CD米国盤)、EAGLE●EAGCD026(写真右:CDヨーロッパ盤)

Produced by: Nik Kershaw

 自身の音楽活動から遠ざかり、他のアーティストへの楽曲の提供とプロデュース業に徹していたニックにとって、前作から実に10年振りとなる通算5枚目のアルバムである。過去の10年間は、自分の考えや気持ちを整理する期間だったというニックは、他のミュージシャンとの仕事を通して、徐々に1996年頃から自身の作品のアイデアが浮かんできたという。本作では、そんな彼個人の人生と向かい合った歌がメインとなるが、決して泥臭くならずにメロディーを重視したシンプルなアレンジが曲を際立たせている。もちろん彼の奏でるポップなメロディー・ラインも健在だ。

 これまでと同様にニック自身の全曲ライティング、各楽器を担当、更にはセルフ・プロデュースまでこなしている。全体にはスローなナンバーが多いが、特に1曲目の過去の自分を歌い上げた「Somebody Loves You」が素晴しい出来だ。個人的には、80年代の頃の煌めく作品群もいいが、派手さはなくても等身大のニックが感じ取れる本作の方が断然好きである。

 本作「15 minutes」は各国によってジャケット・デザインが異なる(非常に紛らわしい)が、収録曲は全て同じ。但し、日本盤にのみボーナス・トラックとして1曲、「ザ・リドル」のアコースティック・ヴァージョンが追加収録されている。ちなみにアルバム・タイトルの「15ミニッツ」とは、数秒または数分間のCD等に表現された自分とか、数行で書かれた自分とかでしか、多くの人々には自分という人間を理解してもらえないというフラストレーションがある。そんな意味を込めているそうだ。


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