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キキ・ディー Kiki Dee 

 1947年3月6日、英国ブラッドフォードに生まれたポウリン・マシューズ(キキ・ディー)は、16才の時から音楽活動を始めた。ローカル・バンドのシンガーとしても参加し、1964年ロンドンにて、シンガー・ソング・ライターのミッチ・マレーにスカウトされ、フィリップス系のフォンタナ・レコードと契約をする。同レーベルにて5年間活動し、1枚のアルバム(1974年に「Patterns」と改題され再発された)を発表している。1970年、タムラ/モータウン・レコードにて初の外国人シンガー(同レーベルでは2人目の白人シンガーとなる)として迎えられる。当時のタムラ/モータウンは、ソウル分野に留まらず、白人のポップス分野にも手を延ばし始めていた。同年にはアルバム「Great Expectations」 が発表されるも、実力が発揮されないままの短期間の活動となってしまった。再び英国へ戻ったキキは、マギー・ベルやレスリー・ダンカンとヴォーカル・トリオを組んだり、クラブで歌ったりというフリーの音楽活動を開始する。その後、タムラ/モータウン時代の知り合いだったジョン・リード(EJのマネージャー)より、設立まもないロケット・レコードからのデビューの話が持ちかけられる。

 1973年、ロケット・レコードからEJのプロデュースによるデビュー盤「Loving & Free」を発表。次いで1974年には、2枚目のアルバム「I've Got The Music In Me」を発表し、EJの全米ツアーにも同行、同年11月のマジソン・スクエア・ガーデンのコンサートでは前座も努めた。

 1976年、EJとのデュエット・ナンバー「Don't Go Breaking My Heart」が全英米で第1位のビッグ・ヒットとなり、この1曲によってキキの知名度も一挙に高まることになった。1977年に再びEJプロデュースによるアルバム「KIKI DEE」を発表。1981年にはアルバム「Perfect Timing」に収録の「Loving You Is Sweeter Than Ever」にてゲスト参加したEJと再びデュエットをする。

 1993年、EJのアルバム「デュエット・ソングス-Duets」にゲスト参加し、「トゥルー・ラヴ-true love」にてEJとは12年ぶりに3度目のデュエットをして、相変わらず息の合ったところを見せた。1995年、アコースティック・ライヴ盤「almost naked」を発表し、シンガー・ソングライターとしての一面も見せる。

 2000年10月20, 21日の2日間に行なわれたEJのコンサート(ニューヨーク・マジソン・スクエア)「one night only」にゲスト参加し、EJと名デュエット・ナンバー「Don't Go Breaking My Heart」を再演し、その健在ぶりを披露した。


Great Expectations(1970年)-アルバム-

Tamla Motown●STML 11158(LP英国盤)

 当時のタムラ/モータウンは、ソウル分野に留まらず、ポップス分野にも手を延ばし始めていた時期で、キキは同レーベルでは2人目の白人シンガーとして迎えられた。

 本作には自作曲の収録はないが、モータウン・ナンバーを中心に、1966年のダスティ・スプリングフィールドの大ヒット曲「この胸のときめきを - You Don't Have To Say You Love Me」(ピノ・ドナッジォ作曲、後年エルヴィス・プレスリーにも歌われ大ヒットした)や、モータウン史上最も成功したコンビといわれるマーヴィン・ゲイとタミー・テレルの大ヒット曲(R&Bチャート1位)「ain't nothing like the real thing」(アシュフォード&シンプソン作)のカヴァー等、多彩な選曲を収録している。「ain't nothing like the real thing」は1993年にEJもアルバム「Duets」(1993年)にてマルセラ・デトロイトと共にカヴァーしている。

 キキは全編に渡りソウルフルなボーカルをモータウン・サウンドに乗せて聴かせているが、彼女自身の個性はまだここでは見られない。それでも、若きキキの抜群の歌唱力は充分魅力的であり、更に本作のポートレート風ジャケットがとても美しい点が特筆すべきところだろう。


Patterns(1974年)-アルバム-

PHILIPS●6382 079(LP英国盤)

 1964年〜68年まで5年間活動したフィリップス系のフォンタナ・レコード時代の音源の再発盤。1973年にEJのバック・アップにより再スタートを飾ったことで一躍注目をされ、それがきっかけで無名時代の作品がその翌年に日の目を見ることになった。

 全18曲、ここでは溢れんばかりの歌唱力を誇る若きキキの歌声が聴かれるが、全曲他人の作品で、更にキキ自身の実年齢より上の大人の歌をただ与えられているという感じのこの作品からは、後の彼女らしさを感じ取ることは皆無である。だが、当時音楽活動をスタートして、ローカル・バンドでシンガーも努めた後のキキの貴重な初期音源集であることには間違いない。


ラヴィン・アンド・フリー Loving & Free(1973年)-アルバム--EJ(prod.p.vo)参加-

ROCKET●IVS 80707(LP日本盤)

Produced by: EJ & クライヴ・フランクス

 「彼女はどんな歌もすてきに歌っちゃうのさ…(EJ)EJのバック・アップにより華々しく再スタートしたキキのロケット・レコードからのデビュー盤である。キキの伸びやかな歌声が聴けて、彼女の作品中でも最も私の好きなアルバムだ。本作は1976年、EJとの「Don't Go Breaking My Heart」の大ヒットにより一躍キキの注目度が高まり、同年、日本でも後発リリースされた作品である。

 とにかく参加メンバーが凄い!EJ(p. vo)、ディー・マレー(b)、ナイジェル・オルソン(ds)、デイヴィー・ジョンストン(g)、レスリー・ダンカン(b vo)とEJファミリー総出で、これは無名の彼女に対する周囲の期待がいかに大きいかを物語るものである。キキの自作が4曲、EJ&バーニー作が2曲、他には、ジャクソン・ブラウンやゲイリー・オズボーンの作品等、選曲もバラエティなものとなっている。

 本作の1曲目の「Loving & Free」(キキ作)は、彼女がソングライターとしても優れた一面を見せると共に、優しい歌声が心に染みるバラード・ナンバーだ。シングル盤としてもリリースされたカントリー・フレーバーの「Lonnie And Josie」(EJ&バーニー作)、ノリノリのロックンロール・ナンバー「Super Cool」(EJ&バーニー作)等、キキの歌に対する表現力と開口の広さを感じさせる。ラストの「Sugar On The Floor(キキ作)は、EJも取り上げて後のシングル「Island Girl」(1975年)のB面に収録しているが、ここでもキキの楽曲の良さを確認できる。このEJバージョンは現在「Rare Masters」(1992年)にて聴くことができる。

 彼女の才能が大きく開花するきっかけともなった本作には、全編に渡るシンプルなアコースティック・サウンドがキキの爽やかな歌声をより際立たせるかたちとなった。


KIKI DEE(1977年)-アルバム--EJ(prod)参加-

ROCKET●ROLA 3(LP英国盤)

Produced by: EJ & クライヴ・フランクス

 EJとのデュエット曲「Don't Go Breaking My Heart」(1976年)のビッグ・ヒットの後、キキへの評価も高まっていた時期に新録された本作は、音楽的にもより厚みのあるものとなった。EJはプロデュースのみの参加であるが、バック・メンバーには、ディー・マレー(b)、デイヴィー・ジョンストン(g)、ジェームス・ニュートン・ハワード(p)、レイ・クーパー(perc)というEJファミリーお馴染みの顔ぶれが揃い、ブラスでは、ブレッカー兄弟とデヴィッド・サンボーン等が参加している。

 本作には様々な音楽性が見え隠れするが、やはりキキの自作がここでも光る。特にアコースティックなスロー・ナンバーが良い。キキの自作は全11曲中6曲で、うち2曲がデイヴィー、ジェームス、ゲイリー・オズボーンとの共作になっている。

 キキ自身が最も脂に乗った時期でもあり、彼女の歌唱にもより深みが増している。ブラス・セクションの前面導入とジーン・ペイジによるフィリー・ソウル色を漂わせたオーケストラ・アレンジも、タムラ/モータウン時代から培われたキキのソウルフルな熱唱にマッチしているようだ。特に「Chicago」はなかなかカッコイイ出来だ。「Keep Right On」(デイヴィー作)は、デイヴィーのソロ作「Smiling Face」収録曲のカヴァーだが、デイヴィーのヴァージョンとは全く趣が異なり、ここではブラスとオルガンを前面に出したかなりファンキーな仕上がりになっている。本作はキキの多彩なボーカルが堪能できる力作となった。


PERFECT TIMING(1981年)-アルバム--EJ(vo)参加-

ariola●ARL 5050(LP英国盤)

Produced by: Pip Wiliams

 本作ではこれまでお馴染みだったEJファミリーの顔ぶれはすっかり姿を消し(唯一、1曲のみEJがボーカル参加している)、当時流行りのAOR風の軽快でタイトなロック・サウンドを前面に押し出している。キキの自作は2曲のみで、殆ど外部ソングライターを起用し、ポップ色を強めた楽曲とバンド編成による演奏、ソフトなキキのボーカルによって、彼女の新生面を打ち出している。

 収録曲もオリビア・ニュートン・ジョンばりのポップチューン「Star」「Wild Eyes」から、バラードあり、ガール・ポップありと実に多彩な内容だ。EJがゲスト参加したフォー・トップスのヒット曲「Loving You Is Sweeter Than Ever」(スティーヴィー・ワンダー作)では、2人が実にソウルフルに歌い上げている(EJ&キキのコンビは76年の「Don't Go Breaking My Heart」以来2度目となる)。これはシングル・カットもされているが、アルバムでは情感豊かなしっとりと聴かせるバージョンだったが、シングルでは若干異なるリミックスがされている。

 80年代以降、様々な女性アーティストが音楽シーンのトップで活躍する時代を迎えるが、本作でもそんな流れと香りを漂わせた活気に満ち溢れた仕上がりになっている。


Loving You Is Sweeter Than Ever(1981年)-シングル--EJ(vo)参加-

ariola●ARO 269(7インチ英国盤)

Produced by: Pip Wiliams

カップリング:24 Hours

 キキのアルバム「Perfect Timing」(1981年)からのシングル・カットで、EJがゲスト参加したデュエット・ナンバーである。EJ&キキのコンビは「Don't Go Breaking My Heart」(1976年)以来2度目となるが、今回も息の合ったところを見せている。この「Loving You 〜」(スティーヴィー・ワンダー作)は、フォー・トップスによってヒットした曲でもあるが、このソウル・バラードを2人は見事に情感を込めて歌い上げている。2人とも驚くほど従来とは違った歌い方で、キキの抑制ぎみのソフトなボーカルにEJのファルセット・ボイスが絶妙に絡んでいく様はたまらなく良い。これもEJの名デュエット・ナンバーの1つに挙げられるだろう。因みにこのシングル収録曲は、アルバム収録バージョンとは異なるリミックスがされており、ボーカルと演奏がより前面に出されたメリハリのあるシングル・バージョンとなっている。

 カップリングの「24 Hours」(キキ&ゲイリー・オズボーン、Reid Kaelinとの共作)は、同じくキキのアルバム「Perfect Timing」からのシングル・カットで、ここでもキキの円熟したボーカルを聴くことができる。


almost naked -kiki dee live-(1995年)-アルバム-

Tickety-boo●TB01(CD英国盤)

Produced by: Carmelo Luggeri & Kiki Dee

 キキ・ディー(vocals, harmonium, autoharp, percussion)とCarmelo Luggeri(guiter, harmonica, vocals)の2人だけによるアコースティック・ライヴ(1995年6-7月の収録)の模様である。無駄な音は全て排除したシンプルな演奏編成で、ステージも淡々と進行していく。あまりにも装飾のない簡素なサウンドが逆にキキのヴォーカルを浮き彫りにさせているようだ。

 これまでEJのデュエット・パートナーとして名声を得て、ポップ・シンガーとしての部分ばかりが脚光を浴び、なかなかシンガー・ソングライターとしての評価はあまり語られなかったように思う。キキ自身もそれを感じていたかどうかはわからないが、本作に収録された全13曲中6曲がキキの自作曲であるところからも、シンガー・ソングライターとして何も着飾らない生身(裸)のキキがここにはあるようだ。(そういえば、ジャケット写真のキキも一糸まとっていない)

 演奏曲の一番の注目はなんといっても「Don't Go Breaking My Heart」のソロ・ヴァージョンだろう。あまりにも有名なこのポップ・ソングをここではキキ一人のバラード・アレンジで歌っている。元々メロディーが良いだけにどのようなアレンジでも映えるのだろうが、この味わい深いライヴ・ヴァージョンは予想外に良い。ここに意外にもキキの音楽の本質を見たような気がする。


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