(奈良国立文化財研究所蔵)この獣身紋鬼瓦は外形が裾広がりのアーチ形をしており、獣の正面を描いてその全身像を表現したものである。
蹲踞(そんきょ)の姿勢をとり、両手を膝の上に置く。円形の腹部を中心に置き、肩を怒らせ、腕は筋骨隆々で、巻き毛が立ち上がって体を覆っている。
顔は比較的小さく、太い眉の下につり上がった小振りな目がのぞき、上下の歯の間から舌を突き出しているところが特徴である。
平城宮では8世紀後半から顔面のみを表わした鬼面紋鬼瓦に変わる。上下の歯牙をむき出し、舌を噛んだ形が特徴である。眼は杏仁形で、眼尻をつり上げる。鼻は小振りで、鼻翼を丸めて小さな鼻孔を表わす。下顎に放射状のヒゲを配し、周囲に巻き毛をめぐらす。
平城宮出土の鬼瓦は第1期(708〜721)、第2期(721〜745)二式と四式、第3期(745〜757)五式、第4期(757〜770)六式の4種類に分類されている。
表紙(目次) | 東京にいる鬼瓦 | 「おまけ」 |