国宝の鬼瓦

国宝の鬼瓦シリーズ

 国宝の鬼瓦シリーズは、国宝建造物の屋根を対象にそこに鎮座まします鬼瓦をとりあげます。
 国宝に指定されている建造物は全国に131ケ所。寺院が97ケ所、神社が25ケ所、城が5ケ所、その他4ケ所となっています。
 当会の調査によればその中で鬼瓦がいる国宝建造物は寺院で50ケ所、神社で3ケ所、その他で1ケ所です。

 鬼瓦の姿はさまざまです。時代、屋根の形、作者(鬼師)などの違いでいろいろな形があらわれます。
また鬼瓦は撮影する角度によって大きくその顔かたちは変わってきます。もちろん季節によっても時間帯によってもかなり受ける感じが違います。
 皆様も神社仏閣にお参りした節は、是非カメラを屋根の鬼瓦に向けてみて下さい。きっと新しい発見があるでしょう。

14. 国宝 向上寺三重塔 の鬼瓦

向上寺三重塔

  向上寺三重塔。多くの人はこの国宝の塔を御存じあるまい。まず場所をお教えしましょう。
 地図はここをクリック。広島県の瀬戸田町にある。瀬戸田町は広島県でも有数な観光の島で、西の東照宮といわれた耕三寺は昔から観光の寺として有名であり、平山郁夫美術館、そして瀬戸内の蛸を材料とした地元の蛸料理コースは絶品である。拡大図はここをクリック。

 時代は足利将軍の室町幕府時代。地方に守護大名がありその下に地頭がいた。生口島は鎌倉時代生口水軍(海賊)の根拠地であった。安芸国沼田(ぬた)莊・竹原荘(現広島県三原市・竹原市)の地頭は小早川氏である。瀬戸内海地方をその勢力版図としていた。その後小早川氏は毛利勢の一翼をになうことになるのである。

 生口島が小早川氏の勢力図に入ったのは南北朝初期であり、小早川宣平の末子惟平が生口島を譲与され、室町幕府からもその地頭職を安堵され小早川生口氏の祖となったと云われてる。
 応永四(1397)年小早川春平は賢僧・愚中周及を迎えて現在の広島県三原市に仏通寺を建てたところ、佛通寺に参集する修行僧が多数に及んだので、応永十(1403)年、生口島に百人余りを収容する宿泊施設として向上庵を建てて住わせた。向上寺はその傍らに建てた小堂に始まるという。当時、向上庵の他にも20あまりの庵があったといわれ、その庵に由来した地名も残っている。

 愚中周及和尚は室町時代の禅宗の僧侶で、13歳の時京都で夢窓疎石について勉強したあと、18歳で中国は元に渡り即休契了という僧のもとで7年間修行し、さらに日本に帰った後も山中にこもり厳しい修行を重ね立派な僧侶となったのです。
 当時の仏通寺には多くの子院があり広大な寺院で全国でも有名な禅道場として知られた臨済宗仏通寺派の大本山です。僧侶で絵師でもあった雪舟が作ったと伝えられる庭園などが今でも仏通寺に残っています。

 向上寺の三重塔は、1432年小早川元信・信昌によって建立され、昭和33年2月8日に国宝に指定されている。瀬戸田水道を見下ろす潮音山に建つ和洋を基調とし唐様を取入れた朱塗りのみごとな三重塔です。高さ19m。1432年(永亨4年)に建てられ、 国宝の三重塔の中では最も新しいものです。 この塔の特徴は組物に入れられた 装飾彫刻です。
 尾垂木下の二手先目の肘木先端に 見事な彫刻が施され、その彫刻は、 植物の葉を抽象化した若葉という 図案になっています。色彩と、力強い刻線が あいまって強烈な印象を与えています。また、各重に花頭窓を配し、四隅の親柱の 飾付けには珍しい逆蓮華(蓮の花を逆に かぶせた形)が見られます。建立年が明らかで、唐様の手法が極めて濃厚で 、細部にも特色ある手法が多い点から、禅宗寺院の 塔婆として建築史上貴重なものです。

 また三重塔がある潮音山山頂は展望台になっており、360度瀬戸内海や周辺の島々を眺めることができます。平山郁夫画伯の「燦 瀬戸内海・広島県 瀬戸田向上寺塔」やベルカントホールで使用されている緞帳「瀬戸田曼荼羅」もここからの風景が描かれているのです。

 昭和38年に解体修理、昭和57年に全面塗り替え修復が行われており鬼瓦は昭和の鬼瓦になってしまっているようです。

 

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 ここには18体の鬼瓦がある。三重塔だから鬼は全部で(3×4=)12体のはず。同じ鬼を角度を変えて撮っているのでこういう結果となりました。どれがダッブテいるか鑑定願えればと思います。それなりに味わいのある顏です。初層、二層、三層と分けて撮ったつもりが現像してみるとどれがどれやら不明と相成りました。どなたか現地で今一度確認して下されば幸甚です。