第22回日豪合同セミナー


シドニーオリンピック開会式・閉会式、徹底解説
佐和田 敬司(早稲田大学)



昨晩の様子からするとみんなちゃんと起きて来られるものか少々心配であったが、そんなことはまったくいらぬ心配であった。朝9時前に眠い眼を擦りながら這いずるようにのこのことやって来て講堂を覗いてみると、なんとすでに大勢の人が席に着いて開始を待ち臨んでいたのであった。わぁ、元気だなぁ、と感心しながら眺めていると、そのうちに今朝からの参加者も集まってきてあっという間にほとんどの席が埋め尽くされてしまった。いかん、自分の席を確保せねば。正確な人数は把握出来ていないが、過去最高の入りであるのは間違いないようだ。

今年も日曜日のプログラムは昨年に引続き佐和田先生に担当していただいた。今年のテーマは「シドニーオリンピック開会式・閉会式、徹底解説」だ。これについてはすでに先生のホームページ「オーストラリア芸術散策」の「特集バックナンバー」に詳しい解説があるのだが、今回はビデオを見ながらさらに分かりやすい解説をしていただくとのになった。

佐和田先生の解説に先立ち、セミナー実行委員長の長坂より、シドニーオリンピックの持つ歴史的意義についての解説があった。このオリンピックは「グリーンゲーム」(環境にやさしいオリンヒック)と呼ばれており、そのテーマ達成のため、最初から、行政(政府、シドニー市、オリンピック委員会)=企業(スポンサー)=NGOの3者がパートナーシップを組んだ世界で初めての国際イベントなのだそうだ。このことはIOCから高い評価をうけることになった。また、NGOは特にグリーンピースが中心的役割を果たしており、それが開会式で反対デモもなく、ポランティの参加をふくめ、大成功したもう一つの理由なのだった。

NGOについては土曜日の分科会でも取り上げられたが、ITと並び日本は世界的に見てかなり後れをとってしまっているようだ。特にNGOについては正しい理解に欠け、その活動の評価は低く軽んじられる傾向が強いように感じてならない。昨今のNPO法案についても税金逃れに躍起になっている一部の金持層が注目しているに過ぎないのではいだろうか。道楽でやっているNGO、NPOでは、一国の政府と対等に渡り合い、世界の行く末にに影響を及ぼすなんて夢のまた夢でしかない。我々はシドニーオリンピックの事例をもっとよく勉強する必要があるのではないだろうか。

さて、話が横道に逸れてしまったが、いよいよ佐和田先生の登場だ。ビデオを流しながら同時解説をしていただく形式だ。途中大きなポイントではビデオを一時停止し掘り下げた解説があった。開会式ではオーストラリアの歴史を丹念にかつ芸術的に表現されていることがわかる。

芸術性を高めるがため細かい説明が省かれていて、知識の下地のない人にとっては意味不明の場面が多かったはずだ。オーストラリア人にとっては誰でも知っていることだったかもしれない。でも多くの外国人にとっては、理解出来なかった方が多かったのではないだろうか。私の周りのオーストラリア通の間でもわからないことがけっこうあった。それらの疑問を佐和田先生が実に丁寧な解説で次々と解き明かしていって下さった。

閉会式の方は時間の都合で大分はしょったのだが、その中で昨年のセミナーでもとりあげた映画「プリシラ」が登場した場面が取り上げられ、佐和田先生より重要な指摘があった。「プリシラ」は日本では不評であったが、オーストラリアはもとより米国で大ヒットしたゲイの生き様を描いた映画だ。オーストラリア通なら毎年春にシドニーではゲイの祭典が公式のイベントとして認められていることは良く知られている。それだけ同性愛者に対して理解がある国民性なのだと思われがちだが、逆にとんでもないと許否反応を示すオーストラリア人もまた多いのだと言うこと理解しなくてはならない、との指摘だ。事実、オリンピックでゲイを賛美するようなものを出すとは何事だとの抗議も多かったのだそうだ。

オーストラリアでは麻薬が簡単に手に入る、と言われている。キングスクロスには麻薬中毒者のためにいつも新しい注射針を設置している設備まである、との報道をよく目にする。ではオーストラリアは国を挙げての麻薬を促進しているのかというと、それはまったくの逆で大間違いな話だ。生半可な間違った知識をもってオーストラリアにやって来たがために犯罪に巻き込まれてしまった多く日本人がいるの話は高木和男先生の分科会でも取り上げられたことと思う。

まだまだ分かってないことの方が多いのだなぁ、と思い知らされたような気持ちで第22回日豪合同セミナーは終わった。来年また勉強し直してから来るかな。




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