映画を通してみるオーストラリアの社会と背景
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2日目日曜日のプログラムは何をするべきか、実行委員会では毎年この問題で悩んできたが、どうも「オーストラリア映画を題材に全体討論」というのがここ数年好評のようだ。昨年は「ある老女の物語」で福祉問題を、以前は「最後の弾丸」「アンボンで何が裁かれたか」等で戦争問題をテーマに行われたが、全体討論会での意見交換は実に熱いものであった。 今年の題材は「プリシラ」。3人のゲイ達が砂漠のまん中のリゾートホテルでのショーに出演するため、シドニーからアリススプリングスまでバスで旅をする。オーストラリアでのゲイの地位は。彼等は何を夢見ているのか。男と女。都会と田舎。様々なシーンから社会問題を考える。 進行役は、1日目の第4分科会「オーストラリア映画の中に見る歴史的瞬間」の講師でもあった、佐和田先生と長坂委員長に、無理をお願いして引続き引受けていただいた。佐和田先生より映画の解説をいただいたき、長坂委員長の司会で進行した。 佐和田先生は、シドニーでは毎年ゲイの祭典が公に行われている社会背景から始まって、映画の中の登場人物の生き様に至まで、詳しく解説してくださった。映画の中で女性達が軽薄に描かれている点の指摘は興味深い。女性上位社会で知られるオーストラリア社会にも多くの問題点が潜んでいるとメッセージなのだろうか。ゲイが知的レベルの高い品格の備わった人種に描かれていることからも対照的だ。スパンコールのドレスとハイヒールでグランドキャニオンの岩の上に立つ夢を語っていた彼等が、道中アボリジニ−との交流から、実際に岩に登った時は、派手な女装はしていたものの、その足は地味な軽登山靴であった。 映画から発せられるメッセージは一つだけではない。正解、不正解といったものはない。人それぞれに別々の感じ方があって然るべきであり、それぞれ全てが正解なのである。皆さんの持っているそれぞれの感じ方を出し合って分かち合うことで更に新しい発想が得られることでしょう、という長坂委員長の言葉から、会場からの活発な意見交換が始まった。 凧上げの意味は何だったのであろうかという疑問。日本国内でのゲイの扱われ方まの実例の紹介からオーストラリアとの比較。その他様々な話が飛び出した。 この映画は米国では大ヒットして、第67回アカデミー賞最優秀衣装賞を受賞した。しかし残念ながら日本ではあまり受け入れられなかった。米国では美しいと絶賛されたあの衣装だが、日本では奇異に映っただけのようだ。文化意識に大きな違いがあるという現れで、この点も面白い。 まだまだ話し足りなく名残惜しい様子ではあったが、修了時間がすでにもう過ぎてしまった。全体討論会の終了とともに第21回日豪合同セミナーも幕を閉じた。 |
佐和田先生(左)と長坂委員長 会場からの意見交換も活発だった |
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