コンポステラの日々 第9回
「1の知らせ」の録音を終え、アルバムの発売は1990年の12月25日と決まった。CD発売記念のコンサートは、発売日である12月25日にMANDA-LA2でやることにした。発売記念コンサートの前の秋には、ライブは1本のみ。イカのフユのゲストでMANDA-LA2に出た。イカのフユは、現在シーサーズのメンバーである持田明美(ヴォーカル、三線)と、LOVEJOY等で活躍している服部夏樹(ギター)の二人のユニットだ。オリジナル曲が実に秀逸なユニットだった。
この年の10月、風の旅団という劇団の「ウル・ファウスト」という公演に参加した。風の旅団はテント芝居の劇団で、設立当初から篠田や中尾、大熊は音楽制作にかかわっていた。音楽制作のメンバーと役者で「オルケスタ・デル・ビエント」という名義でライブをやったこともある。僕は98年の芝居から音楽の録音に参加していた。風の旅団の芝居の中で、劇中曲の録音に篠田が一番強くかかわった芝居は「ウル・ファウスト」だろう。何曲か書き下ろしの曲を作って、当時代々木にあったチョコレートシティで録音した。「PHOTON」に収められている「こぶしの踊り」もその時作ったものだ。また、「1の知らせ」に収録した「アジールのマーチ」という曲のタイトルをつけるにあたって、篠田はこの芝居にインスパイアされたようだ。風の旅団とは通常は劇中曲の録音という形でかかわっていたのだが、この年の「ウル・ファウスト」では第一幕の間ずっとコンポステラの3人が舞台にいて、BGMを生で演奏した。その時の扮装はぼろぼろのタキシードに、所々黒く塗った顔。喜劇やギャグマンガで爆発直後のシーンに立っている人物を想像してもらえば良いだろう。
1990年12月25日、「1の知らせ」の発売記念ライブを吉祥寺MANDA-LA2で行なった。この時「1の知らせ」収録曲を演奏したのはもちろんだが、クリスマスでもあるので少しクリスマスの色も出してみようと、クリスマスキャロルを何曲か演奏してみた。衣装は「ウル・ファウスト」で着たぼろぼろのタキシードを風の旅団から借りた。聖夜にふさわしい衣装だったと思う。
この頃、僕は篠田に誘われて二つのユニットに参加した。ひとつは今も続いている「スリル」、もうひとつは「くじら”ドラゴン”オーケストラ」。どちらもその経緯などを書くと長くなるので省略するが、とりあえず忙しくはなってきた。原マスミのホーンセクションを始めたのもこの頃だ。コンポステラもアルバムを出して、これからという時期。僕は6年間在籍していた浦安の某遊園地のブラスバンドを辞めた。
コンポステラの日々 第1部 「1の知らせ」以前編 終わり
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