コンポステラの日々 第8回

 1stアルバム「1の知らせ」のレコーディングが1990年8月下旬から始まった。レコーディングスタジオは阿佐ヶ谷のSPACE VELIOという天井が高く響きの良いスタジオを選んだ。当時僕は浦安の某遊園地のブラスバンドの仕事をしていて、火曜日以外の昼間が空いていなかった。そのため火曜日から火曜日の8日間を押さえて、火曜日以外は夕方から24時までやるという今考えると贅沢なレコーディングだった。エンジニアは藤井だったが、藤井の来られない日は小竹という藤井の連れてきた若いエンジニアが録音してくれた。各曲をどのように録音したのかを思い出してみようと思う。レコーダーはフォステクスのB16、ミキサーはローランドのM16Eを使い、部屋の響きを生かしてデジタルリバーブは使わなかった。また、ほとんどの曲でダビングをしたが、クリックは使わなかった。

◎小さな歌
 ダビング無しの一発録り。毎日1〜2テイク録ったので、テイクの数は10テイク以上あった。

◎反射する道
 アルト、テューバ、ドラムでベーシックを録音。後でアルトのソロとソプラノサックスとアルトサックスをダビングする。ドラムを同時に録る時は、隣のデッドで小さな部屋を使用した。

◎雨の中を
 ソプラノ、アルト、テューバでソロも含めて録音。その後パーカッションとソロ中のバッキングをダビングした。

◎箱の中の風景
 ソプラノ、アルト、テューバでソロも含めて録音。その後ドラムをダビング。

◎くつやのマルチン
 ソプラノ、アルト、テューバでソロも含めて録音。その後ソロの内容に合わせて別のパートをアレンジして入れる。パーカッション、テナーサックス、リコーダー、アルトホルン、ピアノなど一番トラックを消費した曲。

◎1の知らせ
 前半はアルト、ソプラノ、テューバで録音。後半はドラム、テューバで録音後、アルトのソロとソロの後ろで鳴っているサックスをダビング。

◎海を渡る風
 ソプラノ、アルト、テューバで録音後、間奏にトランペットとトロンボーンをダビング。ダビング時には、スタジオにあったピアノの中にマイクを入れて録音した音を混ぜた。

◎アジールのマーチ
 アルト、テューバ、ドラムで録音後、中尾がソプラノ、テナーをダビング。

◎トッカータとフーガ
 アルトとゴロスを録音後、後半重なって来る楽器をダビング。

◎ghhgh
 中尾が一人でベーシックを作成。その後篠田と関島の楽器をダビング。

◎最初の記憶
 前半はアルト、テナー、テューバで一発録り。後半はドラム、アルト、テューバでベーシックを録って、バリトン、ソプラノ、アルトホルンを同時にダビング。

◎結婚ポルカ
 アルト、ソプラノ、テューバを録音後、隠し味的にウッドブロックとトランペットをダビング。

◎二人のマキシム
 アルト、テナー、テューバを録音後、ハイハットをダビング。

 ダビングが多いのは、まだこの編成の音の薄さに慣れていなかったせいもあるだろう。打楽器を後でダビングした曲が多いが、中尾はクリックを使っていないテンポの揺れているオケに自然に打楽器をかぶせるのが実にうまかった。

 ミックスも録音と同じスペースベリオでやった。ミキサーも同じくM16E。少々心もとない気がしたのだが、エンジニアの藤井は「今までこれで何枚もCDをつくったでー。」と言っていた。基本的には録り音がそのまま反映されたシンプルなミックスで、曲によってはスタジオの中でアンプで鳴らした音を戻して使ったりした。マスタリングはCDセンターで滝瀬真代さんにやってもらったが、当時の僕はマスタリングをよく理解していなかったので、曲間の長さくらいしか気にしていなかった。


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