ひとしずく・・・献血あれこれ

 

 ちまたでは、「献血は人のため」と云われています。確かに、血液を工場で作ることは出来ません。しかし、「人のため」と云う表現に、気恥ずかしさから来る抵抗感を覚える人もいることと思います。
 かく云う自身がそうでした。初めて採血ベッドに横たわったのも、高校のクラブの仲間に引き込まれたのがきっかけです。当時から「人のため」と云う言葉にどうしても馴染めず、「気障な者が他人に格好をつけたがっているだけ」と、献血そのものに悪い印象を抱いていました。採血が終わり、オレンジジュースを飲みながら休憩しているとき、満足あるいは充実感より、虚脱感のほうが大きかったと記憶しています。今も、当初の印象が完全に拭い去れたかと問われれば、自信を持って肯定出来るかどうか、怪しい限りです。
 けれども、嫌悪の対象でしかなかった献血も、百十回を越えるまでになりました。当初あれほど嫌っていたにもかかわらず、どうしてここまで続けられたのか。自らに問いながら制作出来ればと考えています。

更新日 2002年05月14日


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「献血好きに100の質問」への回答


原点は全血200ml

 はじめに、国内の献血について、概要に触れて置きます。

 献血出来るのは、年齢と体重の基準を満たした人です。満16歳以上64歳以下、体重は、男子が45kg、女子が40kg以上あれば、誰でも献血を申し込めます(献血の種類により多少異なります)。ここで「申し込める」と云うのは、問診、さらに事前検査で健康状態を確かめるからで、これを通過して、いよいよ採血する訳です。
 採血用ベッドで採血針を腕に刺し、規定量の血液を採ります。採血後に待合室で飲み物をもらい、献血手帳に記録し、全て終了・・・これが凡その流れです。
 現在の制度では、献血を大きく四つに分けることが出来ます。

・全血200ml

・全血400ml

・血小板成分献血

・血漿成分献血

 ここでは、日本で献血が始まって以来ずっと採用され、献血の原点とも云える全血200mlを取り上げます。

 国内の献血は、日本赤十字社(以下、日赤)だけが扱うことを許されています。これから先、記録・論評とも献血礼賛に走らず、是々非々で臨むつもりです。ただし、全血200mlに重きを置いた内容になることをご了承ください。


 

先ずは健康チェックから

 いますぐにも輸血を必要としている人のために役立つなら、と献血に応じても、血液を提供したことで逆に健康を損ねては、折角の善意が無駄になるばかりか、今度は提供者が入院する羽目になり兼ねません。そこで、予め本人の健康状態を確かめ、献血をしても影響がないと判断出来る場合に、血液を提供してもらうことになっています。これが問診・事前検査です。
 献血は、各地の日赤血液センター、献血ルームと呼ばれる出張所、街頭の移動献血車で受け入れています。強制ではなく、あくまで善意の提供が建て前なので、いずれも受付に自ら赴き、献血(血液の提供)を申し出る形を採っています。申込用紙に必要事項を記載し、その裏に印刷されている問診に答えます。
 問診では、過去の病歴、一定期間内の輸血・抜歯・海外渡航の有無などに加え、エイズ感染の恐れが無いかどうかを問われます。薬害エイズが大きく報道されて以来、問診に全て答えなければ献血を断るようになりました。
 エイズに感染後、およそ二箇月は検査結果に現われません。一方、採血した血液を直ちに輸血に回すことも少なくありません。感染を知らずに採血すると、輸血を受けた人が感染する恐れが大きいと云えます。そのため、日赤では、献血感染の恐れのある人が、検査を目的とした献血をすることを固く断っている訳です。
 自己申告の後、本人が署名して問診は終了、看護婦による
事前検査に移ります。
 この段階では、採血に先だって腕に注射針を刺し、血液を抜き取ります。右腕で採血をするなら左腕、左なら右腕で検査をします。どちらで検査をするかは、本人の希望を容れてもらえます。献血後の三十分から一時間は、採血した腕で重い物を持たないよう注意されます。そのため、何か予定のある人は、利き腕での採血を避けると良いでしょう。とは云え、これも善し悪しで、採血の際ごく稀に差の出ることがあります。尤も、大概は関係無いので、ご安心を。
 抜き取った血液で
比重を測ります。同種類で比重の微妙に異なる試薬を数本用意し、本人の目の前で血液を一滴ずつ垂らし、浮き沈みで判断します。このとき、比重の値が1.052に満たない人は献血出来ません。この規定により、国内では女性の何割かが断られて仕舞います。日本の女性は、比重の平均値が1.052を下回っていて、これに引っかかると健康な人でも採血を見送る訳です。
 注射針を抜いたあとに脱脂綿を当て、医療用テープで止めます。このとき、傷跡を揉まないよう注意を受けます。そして、医師の問診と血圧測定で問題がなければ、いよいよ採血です。


(つづく)

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