物理が大っ嫌いな人のための物理

最終更新日: 2006年5月30日

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物理が嫌いな人って多いですよね.以前から若者の理科離れなんて言われていたけど,大人や教師達が子供から理科を引き離して嫌いにさせているだけなんですよね.子供たちってみんな身近な所で“なぜ?”を連発するんだけどそれに答えられる大人がいなかったり,理科の勉強に時間を費やすより,受験に関係ある国語,数学や英語を勉強させたがる親.時間がかかり,時には危険も伴う実験を減らして教科書で理屈を教えようとする教師や学校.そうやって人が生まれながらに持っている探求心を奪い取り,理科嫌いを育てて来たのです.ですから私は,モデルロケットを通じて,物理,数学,英語,工作技術,協調性,野外活動を子供たちに教え,ダイビングを通じて自然の素晴らしさを伝え共有することができればと思っています.

平成14年から文部省の指導要領が変わり小中学校で“総合的な学習”という単元が開始されます.当時の中央教育審議会で教科毎の縦割りを止め,理科離れを防ぐために考え出されたと思っています.これで,子供たちから科学の目を奪い取ることが少しでも減れば良いと思っています.そのかわり,子供たちができの悪かった項目を削除し,教育効果が上がったように見せかけるというとんでもない理由から,削除された理科の項目も大変な量で,この点については大改悪と言えます.

ここでは,宇宙につながる物理の基本的な話をできるかぎり解りやすく,正確に紹介していこうと思います.これで,休日は粗大ゴミと化しているお父さんも子供さんから尊敬されるヒーローになること間違いなしです.


(注)本コンテンツを他のサイトでご覧になられた方もいるかもしれませんが,そのサイトの作者も私ですので問題ありません.


F1.質量と重さの違いって何?
F2.人工衛星が地球の周りを回り続けるのはなぜ?
F3.遠心力ってどんな力?
F4.無重力と無重量の違いって何?
F5.地上で微小重力実験ができるって本当?
F6.パラボリックフライトって何?〜微小重力実験の方法その2
F7.人工衛星に貼り付けてある金色のシートは何?
F8.スペースシャトルに貼ってあるタイルは何のため?
F9.スペースシャトルを背にのせて運ぶ飛行機ってどんな飛行機?
F10.どこからが宇宙?

F11.カーナビでどうして自分の位置がわかるの?



F1.質量と重さの違いって何?
Q1.質量とは物質の動きにくさの度合い,つまり慣性の大きさのことです.ですから物質の質量は地球上でも,宇宙空間でも,月面でも変わりません.簡単に考えるならば質量とは物質を地球の表面で測ったときの重さです.正確に言えば“慣性質量”です.
 重さとは,物体に作用する万有引力(重力)の大きさです.重力の変化によって重さは変わりますから,地球上で60kgの人は月面では重力が地球の約1/6ですから約10kgになり,軌道上のスペースシャトルの中では,ほぼ重さはなくなります.
 宇宙を飛行している人工衛星も,船外活動をしている宇宙飛行士も重さはほぼ0kgですが,質量は全く違いますので,宇宙飛行士が人工衛星を簡単に手で掴んで移動したりはできないのです.
海に浮かんでいるタンカーを押しても自分の方が動いてしまいますよね.同じく浮いているのに質量が全然違うからです.
なお,重さの単位はkgm/s2やN(ニュートン)です.不正確ですが慣用的にkg等質量と同じ単位を使っています.


F2.人工衛星が地球の周りを回り続けるのはなぜ?
Q2.動いている物体は外から力が加わらないかぎり,いつまでも一直線に同じ速度で動き続け(等速直線運動),静止している物体は外から力がかからないかぎり永遠に静止しようとします.これをニュートンの第1法則(慣性の法則)といいます.
 ここに摩擦の無いテーブルの上を一定の速度でまっすぐ転がっているビー玉 があるとしましょう.そのビー玉の進行方法に対し指で斜めにちょっと弾くと,当然ビー玉 の進む方向が変わります.その先でまた,ビー玉を弾くと,さらに進む方向が変わります.
 ビー玉を弾く向きをある1点に向けることで,ビー玉はその1点を中心とした多角形を描いて一周します.このビー玉 を弾く回数を増やしていくことでビー玉の動きは次第に円に近づいていきます.この力を連続的にある1点に向けて加え続けることで,ビー玉 は円を描くように運動します.
 等速直線運動をしているビー玉に常に中心に向かう力を加えるにはどうすれば良いでしょうか.ビー玉 に糸を付けて反対の端を一点に固定すれば良いのです.“そんなことあたりまえじゃん.”という声が聞こえてきそうですね.この中心に向けて引っ張る力を向心力といい.衛星が地球の周りを回り続ける原理となっているのです.
 つまり,直線に動こうとする力(慣性力)と,中心へ向けようとする力のベクトルの合成により物体は円運動を続けるのです.人工衛星が進もうとする力と地球の重力が引っ張る力の合成により,人工衛星は地球の周りを回り続けるのです.人工衛星の進む力を大きくすれば,地球周回軌道から飛び出し,人工衛星の進む力を小さくすれば,地球の中心に向かって落下してしまいます.
 これは,物体の速度を上げると遠くまで飛び,やがて地球のへりに沿って飛び(落ち)続けるという説明と同じことです.


F3.遠心力ってどんな力?
Q3.動いている物体は外から力が加わらないかぎり,いつまでも一直線に同じ速度で動き続け(等速直線運動),静止している物体は外から力がかからないかぎり永遠に静止しようとします.これをニュートンの第1法則(慣性の法則)といいます.
 あなたは停止している電車に進行方向を向いて立っているとしましょう.この電車が急に走り出したら,あなたは後ろに倒れそうになりますね.電車が動きだしただけで,あなたには何の力も働いていないのに後ろに引っ張られるように感じますね.(倒れそうになるのは,地球の重力によって,あなたは電車の床に押し付けられているからです.重力が無かったらあなたは電車の後ろの壁に激突することになります.)この後ろに引っ張られる感じの力を慣性力と呼びます.慣性力とは動いているものは動き続け,止まっているものは止まり続けようとする力です.
 電車が直線を走り,カーブに差し掛かったとしましょう.あなたは電車が曲がる方向と反対側に引っ張られ体が傾きますね.ここにも慣性力が働いています.あなたは電車とともに直線運動をしていて,電車がカーブを曲がっても,あなたの体はそのまま直線運動を続けようとして,カーブと反対方向に体が傾くのです.この場合の慣性力を遠心力と呼びます.もし電車が同じ場所をぐるぐる回ったとすると,あなたの体は慣性の法則でまっすぐ進もうとしているので,常に回転する円の外側に引っ張られる感じがします.
 つまり,物体を回転させると遠心力という特別な外向きの力が発生するわけではないということです.遠心力は回転している当事者にしか感じられない力ということです.その証拠に重りに紐をつけて振り回し,突然紐が切れると,重りは(自分の周りを回りながら遠ざかったりせずに,)その瞬間に回転の接線方向に直線に飛んでいくのです.つまり,向心力が無くなり,直線運動を続けようとする慣性力だけになるのです.
 回転運動に関する説明を簡単にするために,向心力と同じ大きさで向きが反対の(見かけ上の)力を遠心力と呼んでいるのです.


F4.無重力と無重量の違いって何?
Q4.重力の影響を受けていない状態を無重力といい,重力が存在していても何らかの力で打ち消し,あたかも重力が無いように見える状態を無重量と言います.
 つまり宇宙を飛ぶスペースシャトルの中は,重力が無い“無重力状態”ではなく,スペースシャトルもその中の人や物も全て同じ速度で真っすぐ進もうとし,同じ地球からの重力を受け,その力が釣合っているから,見かけ上,重力が無いように感じる“無重量 状態”なのです.
 新聞や本などでは,この言葉の定義がいい加減になっていることが多いです.


F5.地上で微小重力実験ができるって本当?
Q5.私たちは通常重力に逆らっているから重力を感じているのです.地球表面の重力を打ち消すためには,重力に逆らわず,重力の中心に向かって落下すれば良いのです.
 実験装置を落下させる落下塔というものがあります.落下搭の仕組みは,地球の中心に向けて真っすぐ立てたタワーもしくは掘った穴に実験装置を内蔵したカプセルを落下させるというものです.遊園地にあるフリーフォールと基本原理は同じです.
 北海道空知郡上砂川町にある地下無重力実験センター(JAMIC:Japan Microgravity Center)*にある落下搭を例に説明します.この設備は旧炭坑の縦坑を利用したもので,全長710m,自由落下距離は世界最大の490m,10秒間の微小重力環境が実現できます.
 落下塔の内部は空気抵抗でカプセルが減速しないように,空気抜きのダクトが設けてあります.落下終了時はこのダクトを制御することでエアブレーキにもなります.
落下カプセルは二重になっており,実験装置は落下カプセル内に取り付けるのではなく,落下カプセル内の空間の内カプセルに取り付け,落下カプセルに固定されてはいません.この落下カプセルの中は真空にされています.落下カプセルの上部には空気抵抗により減速した分を補うための空気ジェットスラスタがあります.実験機器を搭載した内カプセルが落下カプセルの床に触れそうになったら,空気ジェットスラスタを噴いて落下カプセルを加速し,内カプセルが落下カプセルに触れないように制御し,常に自由落下させます.
この構造により内カプセル内は10-5gという非常に良好な微小重力環境になります.
落下搭にはガイドレールがあり,落下カプセルはそれに沿って落下します.着地時には,エアブレーキと機械式ブレーキにより緩やかに減速(8g以下)されますので,市販の実験装置や測定器が使用できます.
 また,岐阜県土岐市にある日本無重量総合研究所(MGLAB:Micro-Gravity Laboratory of Japan)には自由落下距離100m,自由落下時間4.5秒間の落下搭があります.この落下搭は搭内を真空にすることにより,空気抵抗を無くし落下カプセルを自由落下させています.

※ (株)地下無重力実験センター(JAMIC)は、平成15年3月31日をもって解散しました。


F6.パラボリックフライトって何?〜微小重力実験の方法その2
Q6.F5で述べた落下棟よりもっと長い時間微小重力環境を作り出す方法にパラボリックフライト(放物線飛行)という方法があります.
 ワイヤーの切れたエレベータのように,落下しているカプセルの中の物体はカプセルと同じ速度で落下するので無重量状態になります.それと同様に,放り投げたボールの内部はボールと一緒に飛んでいるので無重量 状態になります.この放物線を描いて飛ぶことをパラボリックフライトと言います.
 航空機を使用したパラボリックフライトは,放物線運動を行うように航空機を操縦して機内に無重量環境を作り出します. ボールを投げるときできるだけ強く上向きに投げることで地面に落ちるまでの時間を長くすることができるように,航空機でもできるだけ長い無重量環境をつくるためにパラボリックフライトに入る直前で最大速度に加速して急激に機首を上げ,エンジンをアイドリング状態にします。そして慣性と重力に任せた放物線運動を行い,安全に回復できるように機首下げ角が限界を超える前にエンジン出力を上げ,機首を引き起こして通常飛行に戻します.
 日本のダイヤモンドエアサービス(株)が行っている双発小型ジェット機MU-300でのパラボリックフライトでは,1回当たり10-2g以下の微小重力環境を約20秒間作り出せます.
 NASAが宇宙飛行士の訓練等に使用しているジェット輸送機KC-135Aでは,およそ1回当たり25秒間のパラボリックフライトができます.この訓練では,重力の変化に酔って嘔吐してしまうことがあるので,このKC-135A輸送機はVomit Comet(嘔吐彗星)という俗称で呼ばれています.


F7.人工衛星に貼り付けてある金色のシートは何?
Q7.サーマルブランケット(断熱材)の一種でMLI(Multi Layer Insulator)と呼びます.構成は,ポリイミドフィルム“カプトン(商品名)”10層になっていて,中のカプトンは両面アルミ蒸着しています.外側は片面のみアルミ蒸着しているので,カプトンの色が黄色く見えるのです.
 各層の間はデュポン社のダクロン(商品名,衣類の繊維に使用されています)でできたメッシュを入れています.これにより層の間に隙間ができ,熱伝導を遮ることで断熱効果を出しています.
 国際宇宙ステーション(ISS)は軌道が低いためMLIだと原子状酸素による劣化が激しいので,ベータクロスというガラス繊維にアルミ蒸着したものを使用しています.その表面はテフロンコーティングされています.


F8.スペースシャトルに貼ってあるタイルは何のため?
Q8. 大気圏突入時の高熱からスペースシャトル本体を守るためです.
 地球帰還時に超高速で大気圏に突入するスペースシャトルは,強烈に前方の空気を圧縮します.
その圧縮された空気中の分子は激しくぶつかり合って,持っていた分子の運動エネルギーが熱になります(これを断熱圧縮といって,スペースシャトルと空気との摩擦による発熱ではありません).
 軌道上を約8km/sの速度で回っていたスペースシャトルは,大気圏に突入すると空気を押しつぶすように圧縮し,この圧縮された空気は超高温状態になります.温度としては,圧力や空気の濃さにもよりますが,10,000℃を越えることもあり,このような高温では,空気の成分は分子の状態では存在できず,原子,イオン,プラズマの状態になります.
 このような高温から機体を守るためにはいくつかの方法があります.
 スペースシャトルのように耐熱タイル(セラミックタイル)を貼る方法を輻射冷却法と言って,耐熱タイルが加熱されて高温になると,自ら熱を外に向かって輻射するようになるという原理を利用しています.
耐熱タイル自体からの熱伝導がスペースシャトル本体に伝わるのですが,熱を伝えにくい材質を間に挟むことによって,熱がスペースシャトル内部へ侵入することを防ぎます.
 スペースシャトルには,一番加熱される機首や主翼,尾翼の先端には,3,000℃でも強度や剛性が変化しないカーボン・カーボン・コンポジットという炭素繊維で強化した炭素材料にセラミックコーティングしたものを装着しています.
その他の機体翼面や胴体にはガラス繊維の断熱材やセラミックタイルで覆っています.
 大気圏突入時のスペースシャトルは,機首先端部の最高温度は1,600℃,機体下面の最高温度は1,000℃になります.
このような高温から断熱材によって守られているのです.
 もし,耐熱タイルを貼らないとしたら,この高温に耐える素材で熱が内部に侵入しないように熱伝導の悪い素材で機体を作らなければなりません.真っ赤に加熱しながらも熱が他に伝わらず,宇宙の原子状酸素による腐食にも耐え,機械的な強度も十分あるような素材を開発するより,セラミックタイルを貼る方が遙かに効率良いのです.地球帰還後,剥がれたり傷んだタイルは交換すればまた打上げできるのですから.
 昔のアポロ司令船のように,スペースシャトルより遙かに高速で大気圏に突入する機体の場合,輻射冷却法では間に合いませんので,アブレーション熱防御法という方法をとります.アブレータと呼ばれる耐熱材料は,炭素繊維,ガラス繊維などに樹脂を混ぜた繊維強化型プラスチックで,300℃を越えれば熔け始めます.アブレータは炭になりながらガスを発生し,そのガスが超高温空気と機体との間に布団のように広がって,熱を遮断します.さらにアブレータはプラスティックですから,金属に比べ遙かに熱を伝えにくく,機体に熱が伝わるのを防いでくれます.
 アブレータは自ら熔けることで機体を守っているのです.地上に到達するまでに無くならないように計算して十分な量のアブレータを機体に塗布しておきます.


F9.スペースシャトルを背にのせて運ぶ飛行機ってどんな飛行機?
Q9.シャトル輸送機(SCA:Shuttle Carrier Aircraft)と言って,ボーイング747-100と747-100SRをそれぞれ改造したものでNASAには2機あります.
 主な改造内容は以下の3点です.
 ・強度確保及びシャトル取付のために3つの支柱を装備.
 ・水平尾翼の先端に垂直尾翼取付.
 ・座席等全てのインテリア等を除去.

NASA905:
 1機目のシャトル輸送機で,1974年にアメリカンエアライン(AA)社より購入しました.
1990年11月までこの1機で運用し,スペースシャトル滑空試験機エンタープライズ号もこれで運びました.

NASA911(N747BL):
 1989年に日本航空(JAL)がボーイング社に売却し,それをNASAが購入したもので日本の国内線を15年間飛んでいたものです.国際線と違って国内線の方が離発着が頻繁なので足回りが頑丈にできているからです.JALが昭和48年9月に導入した機体番号「JA8117」です.総飛行時間32,168時間,総着陸回数23,678回の機体でした.
ボーイング社で改造後1990年11月20日にNASAに引き渡されました.

シャトル輸送機主要諸元
 翼幅:59.6m(195フィート8インチ)
 全長:70.7m(231フィート10インチ)
 高さ:垂直尾翼頂点まで19.3m(63フィート5インチ)
   コックピット頂点まで9.8m(32フィート1インチ)


F10.どこからが宇宙?
Q10. 国際航空連盟(FAI : Federatia Aeronautica Internationale)が高度100kmから上を宇宙と定義しています.なお,米国空軍は80kmから上を宇宙と定義しています.

では大気圏とはどこまでを言うのでしょうか.
大気圏は対流圏,成層圏,中間圏,熱圏,外気圏に分けられ,外気圏は高度500kmを超えます.つまり学術的には,スペースシャトルや国際宇宙ステーションが飛んでいる高度400kmあたりはまだ大気圏内です.

NASAではスペースシャトルなどが地球帰還時に大気圏に再突入する際に,高度120kmを大気圏再突入としています.これは,大気による機体の加熱が始まるあたりなのでしょう.

このように,どこからが宇宙という境は実はありません.地表から遙か宇宙空間まで無段階につながっているのですから.そこで一般的には大気がほとんど無くなる100kmから先を宇宙としています.

なお,大気とは惑星に存在する気体のことで,地球の場合それは“空気”と言うことになります.そして空気の成分は高度が高くなるに従って薄くなり,高層では太陽からの紫外線等によって分解され,原子状酸素(オゾン)が増えていきます.


オーディオカメラ旅行バイク映画宇宙物理花火教育と広報