ぶらぶら房総

【海岸美の千倉】


海岸美術館 地図


夏、海を見るとなると、ここ房総では千倉をパスすることはできません。
海岸線が美しいということもあるのですが、もうひとつの理由、その名も「海岸美術館」があるからです。

千倉駅からタクシーに乗って、海岸美術館と告げると、名前は海岸ですけど山ん中ですよ、と念のための注意が返ってきます。
ここは海を素材とした作品でよく知られる浅井慎平さんが、大好きな千倉の地を選んで、91年にアトリエ兼美術館として設立したもので、山ん中といってもそんなに深いわけではないのですが、名前からして、海の近くと思い込んでいる訪問者もいるのでしょう。

谷あいの溜池の畔に、自然に侵食され風化することを願いながら、それが叶わぬ不条理に身をすくめているような、不思議な存在感のコンクリートの建物がぽつんと現れます。
中に入ると、やはりこの建物が、自然に侵食されることを願っている様子が伝わってきます。
外光をふんだんに取り入れ、庭というか、裏山というかの草木が、展示フロアのすぐ脇に迫っています。
そういう環境も含め、展示写真もひとつの素材として、美術館全体がインスタレーションになっているような造りです。



その証拠に、ここは館内撮影OKです。
写真家が撮影を拒否するのもおかしい、という理由もあるのでしょうが、それ以上に、美術館の内外装が、撮影されることを望んでいるのです。
肉眼で見て美しい光景が、写真に撮るとより鮮烈な美しさで切り取られる。そのことを計算して、緻密に造られた館だということが、私のバカデジカメラでも、シャッターを押す度に実感されます。
外光を大胆に映し込む床、その反射を遮る影として置かれたピアノ、遮りつつも溶け込むベンチ、そういう光景を俯瞰で見せる2階の回廊。
どこでシャッターを押すとどういう画像になるか、気がつくと宝探しをしながら館内を、そして庭を歩いている自分に気づきます。

庭の奥に、裏山に登る小道があったので、草取り作業中の係の人に聞いてみました。
もしかしてあの道の先で、海がちらっと見えたりしますぅ?
残念ながらそこまでの悪戯はないとのことで、登るのはやめましたが、別のお宝がなにかあったのかもしれません。

→海岸美術館写真集はこちら


海岸美術館をあとにして、今度は本当の海岸に向かって、30分ばかりの散歩です。
ゆるやかな下りの散歩道ですが、私みたいな物好き以外は当然みんな車です。
なにしろ、暑いっ!



途中、料理の神様、高家(たかべ)神社に立寄ります。
なぜこの地に、全国唯一の料理専門神社なのか知りませんが、なかなか古雅な佇まいで、奉納されている絵馬も、さすがに料理人がほとんどです。
書かれている内容をこっそり覗きこみますと、「イタリアン日本一になってやる!」をいをいなんてのもあれば、「おいしい料理でみんなを幸せにしたい」という人類愛タイプなどさまざまでした。

で、私が思わず生唾飲んだのが、料理の神様の軒先で、強い夏の陽射しを浴びる梅干。
うう〜〜ん、うまそう、すっぱそう・・・

千倉海岸 地図


梅干しを見たせいばかりではなく、そろそろ汗でしょっぱくなる唇を舐めながらさらに行きますと、いよいよ千倉海岸です。
ここの海岸線が美しいのは、全体を防波堤で囲い込むことをせず、南北に2ヶ所の海水浴場以外の場所は、太平洋の波を直接受けているからなのでしょう。
遊泳禁止の浜が中央に長く伸び、表情豊かな砂浜を、やはり表情豊かな波が洗っています。
ここではひたすら泳ぐ、あるいは砂浜で身体を焼くだけでなく、ゆっくりのんびり、海岸散歩を楽しみたいものです。



ことに外浜と呼ばれるあたりは、沖に引く潮が強いので遊泳禁止になっているのですが、そのせいか波が複雑で、ただ押し寄せては引くのではなく、波と波が干渉しあって、複雑な動きを演じています。
穏やかな波の連続の合間に、突然一度だけ大波が押し寄せる。
小さな波なのに、力が一方向に集まったのか、特定の場所だけ深く静かに迫ってくる。
取り残された浅い潮溜りの表面を風がわたり、小さな漣をたてる。

好天に恵まれたことも幸いしたのでしょうが、ずいぶん心の洗われる時間を過ごすことができました。

そんなわけで、浅井さんの真似ごとなどして、→海岸写真集


さて、外浜を北の海水浴場まで歩ききると、ちょうどうまい具合に、「夢みさき」なる温泉施設が現れます。 こういうスパリゾート型の施設は、私の好みではないのですが、もうすっかり汗だく塩ふき状態ですから、贅沢は言ってられません。
展望風呂にどぼん、バラの香りのジャグジーにもどぼん、浴後の生ビールごくりで、海岸散歩の仕上げといたしました。

そうそう、ここ千倉は鯨が名物なのですが、鯨料理をじっくり味わう時間が取れなかったので、というか、房総南端まで来てしまうと、西北端のわが家まではけっこう長い帰路になるもので、お土産に「鯨のたれ」だけ買い求めました。
たれにつけて乾かした、いわば鯨ジャーキーみたいなものです。
ヒゲクジラの類は、国際的な保護基準が確定していないらしく、日本独自の規制量を定めて、調査捕鯨対象になっているのだとか。

帰りの列車の中で、缶ビールとともにおいしくいただきましたが、軽く火にあぶるとよりおいしくいただけるという説もありますので、ご興味のある方はお試しください。
潮の香りが濃く漂うような気もいたしましたが、それは私の口のまわりが、まだ塩っぽかったせいかもしれません。


【千倉町】 【千倉町観光協会】 【房州ちくら漁業協同組合】



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After the Rain