英文学科公開授業
The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界



The Last Unicorn―映画化の最新情報

 1982年のアニメーション版は日本では未公開だが、欧米では熱狂的ファンも多い。“アメリカ”の主題歌が今また話題になっている。
 2005年公開予定で製作進行中の実写版は、今世界中のホームページで注目を浴びている。


平成16年

11月6日(土) 『最後のユニコーン』と魔法
“The only rope that could hold her, would be the cord with which the old gods bound the Fenris-wolf. That one was made of fishes’ breath, bird spittle, a woman’s beard, the miaowing of a cat, the sinews of a bear and one thing more. I remember―mountain roots.”

 伝説の怪物Fenris-wolfを縛ることができたロープは、魚の息と鳥のつばと女の髭と猫の鳴き声と熊の腱と山の根っこからできていた、とされる。魔法のメカニズムはナンセンスの原理として、現実世界の論理の限界を超越するものである。超越的真実は現象世界的観点からは狂気として映る。

She thought, the witch knows more than she knows she knows.

 “あの魔女は自分で知っていると知っている以上のことを知っている。”  自覚して「知った」と考えたことは暗記して覚え込んだ、限りある真実でしかない。ありとあらゆる応用と様態の変換を行うことができる本当の理解は、直観的把握として無意識のうちにのみ存在すると仮定されている。

“It comes and goes.”

 魔法の力は“やって来たり”、“行ってしまったり”する。


11月7日(日) 『最後のユニコーン』と“sorrow”

永遠の存在であるユニコーンの持つ独特の属性を探る。

By the sorrow and loss and sweetness in their faces she knew that they recognized her, and she accepted their hunger as her homage.

 ユニコーンの姿を認めた人々がここで示す反応は、この作品におけるユニコーンの属性を定義づけるべく設けられた、本作品独特のものである。

“No,” she said answering his eyes. “I can never regret.” “I can sorrow,” she offered gently, “but it’s not the same thing.”

“sorrow”と“regret”の違いが重要である。“eternal”な存在のユニコーンは、“sorrow”は知っているが“regret”は知らないという。“regret”は運命の奴隷として生きる時間性の存在の属性である後悔や慚愧の念であろう。“sorrow”は永遠の存在であり、生死を超越したユニコーンが生きとし生けるものたち全てに対して覚える悲哀の気持ちであろうか。


アンチファンタシー研究プロジェクト
 書籍として出版された研究書・注釈書とインターネットで一般に公開中のテキスト、研究資料が連動している


キーワード別に主題を解説した注釈テキスト:Annotated Last Unicorn
 様々の文学作品や流行歌からの引用を解説
 テーマを解析するためのキーワード、“old”、“time”、“magic”など
 ファンタシー文学における詩的表現―あり得ない比喩と非在性の世界
  “漫画的要素”、“荒唐無稽”という概念とファンタシー


インターネットで公開中の様々な関連データ
 ホームページ “Fantasy as Antifantasy”
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

 ブログ “Fantasy as Antifantasy Daily Lecture”
The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ
http://antifantasy2.blog01.linkclub.jp/



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