市川市民アカデミーテキスト

自分との共生

ジャンヌ・ダルクの影とナウシカの影
―神や悪魔として現れるものたち

担当:黒田 誠

(平成17年12月10日、和洋女子大学国府台キャンパスにて開催)

▼映画ジャンヌ・ダルク(Joan of Arc)と影

 聖女ジャンヌ・ダルクに関わる出来事は、歴史上の確かな事実である。
 1420年、イギリス国王ヘンリー5世と、フランス国王シャルル6世の間に結ばれたトロワ条約に従って、シャルル6世の死後フランスは英国の領土となった。ヘンリー5世の死の直後、シャルル7世王太子が王位を取り戻すために始めた戦役がこのドラマの舞台である。ランスでのシャルルの戴冠を記録する文書も、ジャンヌがイギリス軍に捕まった後、魔女としての審判を受けた際の裁判記録も、実際に保管されているのである。

▼神の啓示を受けて、フランスに侵攻したイギリス軍を撃退したと伝えられているこの少女の真実の姿を、映画「ジャンヌ」はどのように捉えているだろうか。



 映画では15世紀の当時の人々の生活の有り様、服装や建築、そして戦争に用いられた武器や道具等がリアルに再現されている。
 主人公ジャンヌの人間性も皇太子シャルル等周囲を取り巻く人々の場合と同様に、幻想を排したリアルな感覚で描かれている。


 ジャンヌは様々の神秘体験を経て神のお告げを受けたと確信して、王大使シャルル7世に自らの使命を語る。

 魔女裁判の審判を受けながらも、審判員達を逆にやり込める気丈なジャンヌである。彼女は王太子や他の貴族達とは違った、確たる信念がある。審判を行う神父達よりもその信仰は強靭である。





 しかし独房に残された彼女の前に、無気味な影が姿を現すことになる。誰よりも厳しくジャンヌを問いつめる彼の正体は何なのか。ジャンヌを救う神は果たして現れたのだろうか。








▼『風の谷のナウシカ』のナウシカも、ジャンヌと同じように不思議な信念に導かれて、運命の渦中に飛び込む。そしてナウシカの前にも不可解な影が姿を現す。ジャンヌの影とナウシカの出会った影は、等質のものなのだろうか。違いはどこにあるのだろうか。




ナウシカの心の深淵の世界の中では、他者の魂の裸形の姿も影として現れる。











ナウシカの選んだ共生は、どのようなものだったか。


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