仮構世界とフィギュアと自己同一性

初音ミク、惣流/式波・アスカ・ラングレー、
戦場ヶ原ひたぎ、ブラック★ロックシューターの人格特性



1 初音ミク
 “初音ミク”は仮構世界と現実世界にまたがって存在する一人の少女である。彼女はマンガのキャラクターと同様に髪型や衣服などに固有の特徴的な姿形を有している。そしてまたアニメの登場人物のように独特の声音を備えてもいる。しかしこの少女は、小説や映画のヒロインの場合のような物語世界的枠組みとして人格特性を決定するストーリーや場面等の具体的情報を提供する細目要素は持っていない。初音ミクは、音楽作成ゲーム・ソフトの中で導入されている、プレイヤーが作曲した楽曲を歌い上げる機能を果たすために考案された擬似人格なのである。その独特の印象的な機械音声は、“ヴォーカロイド”(vocaloid) という名のコンピュータ・プログラムあるいはヴァーチャルなアンドロイドとしての選別的な属性を彼女に与えることとなっているが、本質的には一人の人格性を構築し特定する条件として、むしろ他の多くの仮構世界内のキャラクター達に比べて空隙の部分が多い筈である。しかしこの少女がネット上の動画投稿作品の題材となって独特のキャラクター・イメージを増幅していき、その影響の許に種々のフィギュア製品が製作される過程を経るにつれて、既存の映画や小説等の中の仮構的存在物達とは明らかに異なる様々な背景的特性と、さらに現実存在としてのある種のキャラクター性向をも獲得してきた事実は、人格同一性概念そのものを全方位的に再考する上で取り分け興味深い現象なのである。
 一個のキャラクター像を形成する要素や条件について、実在の人間存在と伝説上の人物あるいは仮構世界内の擬似人格は、その存在論的本質は次元界面を全く別にする根本的に異なったものの筈である。しかしながら一方、仮構と現実の区別を超えた“人間存在”としてある通貫した概念的特質においては、むしろ現実と仮構を隔てる境界線は限りなく曖昧になってくるのが実情である。アーサー王やヘラクレス等の英雄達は、伝説上の人物として各々が一つの名のもとに矛盾する様々の属性や特質を重畳して備えている。またシーザーやクレオパトラ等の歴史上の人物も、数々のエピソードや記述の中で相反する複数の様相において語られて、その人物像は現実と仮構の境界線上に多面的にその人格特性を投射することとなっているのである。この事実は固有名詞に集約される人格概念に止まらず、国家や文化等についても全く同様にあてはまるだろう。チョーチンの下をゲイシャが行き交うエキゾチックな夢の国ニッポンや、荒唐無稽な戦闘技を操るニンジャや神秘的な決め技を隠し持つジュードーやカラテ等の、現実の相応物から遊離した仮構的イメージがその代表的なものである。おそらく“悪の帝国共産主義”や“堕落社会の極みの資本主義国家”、さらには“恐怖政治の狂信者集団タリバーン”等の国家集団的イメージも、偏見に満ちた主観によって賦与された、ある種の仮構的キャラクター概念なのであろう。
 現代に生きる実在する同世代人達にしても、その人格的内実は各観測者個々の心情や対象との関係性を反映して印象と表象を様々に変化させている。意識にとっての外的存在である他者のみならず、現実存在として人格を保有する筈の我々は、分割され得ない“個人”(individual)として特定の時間に固有の座標を占めて存在する唯一無二のものとして自身を捉え、“自我”という単独の意識を備えていることにより他と分別される独個の自己同一性を確証し得ている“自分”として通常“私性”を認識している。しかし、“セルフ”の存在論的確証性は、必ずしも客観的に定かなものであるとは言い難い。意識存在としての我々は単なる空間上の座標点ではないし、有機物の集塊として判断されるものでもないからである。さらに我々意識存在を人格として個別的に特徴づける筈の記憶や属性情報も、通常これらをデータとして保存あるいは複写して時間的・空間的断絶を経て再現することが不可能な選別された特殊要因であるかのように理解されているが、これもまた実は直感に支配された恣意的な憶測でしかない。我々の“人格性”は、固有名詞として命名を施して他と分別されることによって自分の自分性を確証し得ていると錯覚されているものの、実際に思考を行いつつある“我”を規定する要因は、必ずしも科学という仮説においてなされたような厳密な概念化作業によって明確に定められたものではないのである。だから個人としての命名を通して社会の一員として認識されていた関係性を剥奪されて世界との概念的連繋を見失った時、我々は名前のみならずその存在性自体を喪失して何物でもないものとなってしまうのである。改めて無名のものに環帰した意識の主体にとって“自分”を形成する諸要素の細目については未だ未知の部分が多いし、逆に“自分”が実は広範な包括的な何物かに帰属する一部であるのか否かについてすらも、実は原理的には知る由もないのである。結局のところ“自分”として意識されているものが何らかの物質を指示するものであったのか、あるいは特定の概念を指示するものであったのかすらもおぼつかないのが実情なのである。このように実ははなはだ不可解なものである“私性”あるいは“人格性”を再検証するにあたり、初音ミクという擬似人格の保持する種々の表象とイメージについて、フィギュア作品として具現化したキャラクター像を対象にしてその存在論的実質を検証することにより、意識存在としての我々の人格を形成するかもしれぬ未知の諸要素に対する推察の糸口を探ってみることができそうにも思われるのである。
 デスクトップ・ミュージック・ソフトウェア『初音ミク』は、クリプトン・フューチャー・メディアによって2007年8月31日に販売を開始されたアプリ製品である。このシリーズはヤマハの開発した音声合成エンジン“VOCALOID2”を導入しているが、“歌声ライブラリ”の音声データには実際の声優のものを導入していて、それぞれの歌声毎にキャラクターとしての特有の設定が用意され、そのキャラクターの名称が各々の製品名にもなっている。先行するVOCALOIDとしてMeikoとKaitoの二人のキャラクターがあったが、ミクの後発のボーカロイド・キャラクターとしては、既に鏡音リン・レンのペアと巡音ルカが登場している。さらにその他の変種として、他社の開発した“Vocaloid”の範疇に属すると思われるその他いくつかのキャラクター・ヴァージョンも存在する。  “仮構世界キャラクター”初音ミクの原型的な表象は、音楽作成ソフトとして発売されたパッケージの図柄によって構築されているものである。『VOCALOID初音ミク』のパッケージ・イラストのミクは、身長と同じ程の長さの青緑色のツインテールの髪を四角い赤の髪留めで止めている。濃いグレーの袖無しの上着に髪と同色のネクタイを着用しており、黒のスカートとストッキングにも髪と同色の青緑色の縁取りが配されている。さらに肘から下を覆う幅広の黒のアームカバーが、ミクの外形の印象的なフォルムを形成している。ヴォーカロイド・キャラクター特有の選別的な特徴として、耳許に装着したヘッドセットと上腕に刻印された赤い字のシリアルナンバー“01”と、さらにアームカバー下部に装備された計器板がミク独特のメカニカルな印象を形成している。これらは初音ミクを演じる際のコスプレ衣装の中核的な要素となっていて、初音ミクの同一性を判別するための重要な条件となっているものである。
[図1]『VOCALOID初音ミク』のパッケージ・イラスト(1)

 初音ミクのキャラクター同一性を確定するこれらの特徴は、人間存在に対する命名行為にも相当する、彼女の独個として保有する記号的な特質なのである。『不思議の国のアリス』においてハンプティ・ダンプティが意地悪くアリスに語ったように、名称と日常的呼称とその本体自身の間には必ずしも一貫した相等性がある訳ではなく、これらの間には本質的に決定的な乖離があるのが当然なのだが、一方人間の主観的意識の裡においてはむしろこれらの記号性こそが紛れも無い対象物を規定する絶対条件であるかのように認識されているのも、厳然たる一つの事実である。当然ながらフィギュア造形作品のキャラクター同定においても、このような固有の記号性が欠かせない要件となっている。フィギュア製品における初音ミクの記号性の細目を確認することができる代表的な具体例としては、グッドスマイルカンパニー製の“キャラクター・ボーカル・シリーズ01:1/8初音ミク”を挙げることができる。(2)このフィギュア作品においては、上に挙げたこのヴォーカロイド少女の記号的要素が忠実に再現されて、立体造形における初音ミクの“ミク性”を堅固に構築していることを確認することができる。二次元で表現された平面イラスト作品と三次元の立体構造体は、本来は存在理念においては全く異なる別存在である筈なのだが、これらの視覚的な記号的特質の相当性によって、このフィギュアは初音ミクのミク性を主張するための十分な説得力を備えるに至っているのである。
[図2]グッドスマイルカンパニー“キャラクター・ボーカル・シリーズ01:1/8初音ミク(3)

生命感のあるポーズと活き活きとした表情のみならず、髪や衣服等のプラスティック素材の効果的な選択による的確なディテールの表現などにおいて完成度の高いこの造形作品は、フィギュア愛好家の高い評価を得て販売終了後にまもなく再販が決定されたばかりでなく、その後いくつかの変化形ヴァージョンさえもが生み出されている。その中の取り分け印象的な一つが、“マックスファクトリー製キャラクター・ボーカル・シリーズ01:1/7初音ミク”である。幾分大きめのスケールの1/7ヴァージョンはグッドスマイルカンパニー製の先行作品とは微妙に姿勢の異なる、ディテールの表現に異質の要素を加えた出来映えのものになっていて、細身ながらブーツや上着等の衣装に締めつけられた肉付きの表現がとりわけ印象的なものになっている。しかし、初音ミクの記号的同一性決定要素においては、その細目は変わることなく踏襲されていることがよく分かる。
[図3]マックスファクトリー“キャラクター・ボーカル・シリーズ01:1/7初音ミク(4)

 これらのフィギュア造形によって確証されるキャラクター表象の同一性条件と共に、上記の二つのモデルの間において確認される変異と新たな付加的属性もまた、人格同一性を考察する上で重要な実例を提供しているのである。何故ならば示唆的な事実として、これ以外にも“初音ミク”の名を冠したさらにいくつかの変種が存在するからである。これらはそれぞれ有名イラストレーターの描いた初音ミクイラストを立体化してフィギュア製品化されたものであるが、各々の外観的特徴において興味深い偏差が確認されるのである。当然ながら、全ての記号的特徴において完全に一対一対応的な同等性が厳密に保たれていなければ人格の同一性が認定され得ない訳ではない。人間知性の判断基準そのものが曖昧性にその機能的特質の重要点を負っていることを暴き出すように、立体造形作品においてはいくつかの記号的要素の改変や省略が同一キャラクターのヴァリエーションとして提示されるところにおいて、創作の工夫と人格表現に関するコンセプトのプレゼンテーションの主張がなされることとなる。
 このような造形作業に対する選別的評価を要求するグッドスマイルカンパニー社のもう一つの野心的な作例が、「初音ミクLat 式」である。“Lat式ミク”は音楽作成ソフトVOCALOIDシリーズの機能を刷新した新ヴァージョンのアプリケーションであるが、そのパッケージ・イラストにおいて新規の表象を初音ミクというキャラクターに賦与することになっている。
[図4]グッドスマイルカンパニー“初音ミクLat 式(5)

[図5]グッドスマイルカンパニー“初音ミクLat 式眼鏡装着(6)

「Lat式ミク」においては、特徴的な髪型やスカートとストッキングの配色等において本来のミクを定義していた基幹的な記号性は確かに保たれているが、髪の色合いはやや明るい青緑色に変わり、上着の色は大胆にオリジナルにあったものとは対照的な白に変更されている。さらに肩のシリアルナンバーは縮尺された結果、一見したところアームバンドのようにも見えるものとなっている。アーム・カバーと計器板は見事に省略されて姿を消している。ネクタイもオリジナルと同色ではあるものの、フォルムは微妙に変化したものとなっている。これらの変更点にも関わらず、この立体造形作品が初音ミクを形どったものであることに疑いを挟む余地のないものであると判断される事実は、我々人間知性の同一性判断基準における記号的属性抽出過程の曖昧性の要因を炙り出すものとして、この作品の重要なコンセプトを提示しているのである。さらに従来の定義的記号性を逸脱する付加的要素として赤いフレームの眼鏡装着がLat式ミクの新規のキャラクター特性を形成していることは、とりわけ無視することのできない事実である。これらの記号的特質の省略と新たな特質付加の事例が暗示する種々のキャラクターの秘める変化形の展開の可能性については、ミク以外にも多数のフィギュア製品が示唆に富む作例の提示を実際に行ってくれた結果、キャラクター特性あるいは人格規定概念における内包と外延に関する再検討を要求するものとなっているのである。
[図6]Lat式ミクパッケージ・イラスト(7)

 グッド・スマイル・カンパニーとマックス・ファクトリー社は、初音ミクその他様々のフィギュア制作において優れたコラボレーションを実現している。その結果、両社の初音ミク立体表象のヴァリエーションは驚嘆に値するほど広範囲に渡る、内実の豊かなものとなっているのである。これら両社による初音ミク立体表象化の実例のいくつかを、さらに詳しく検証してみることにしよう。
 下はイラストレーターTonyの考案したポーズと表情に基づく、マックスファクトリー製“初音ミク Tony ver.”と呼ばれる立体造形作品である。Tonyヴァージョンの初音ミク・フィギュアは、衣装や頭髪、髪留め等においては先行する初音ミク・フィギュアの特徴を忠実に踏襲しているが、体を大きく捩じった大胆なポーズに代表される明朗な顔つきと表情に、新しい属性あるいは傾向が賦与されているのである。このムーブメントを見事に反映して、ツイン・テールの髪が肉厚のソリッドではなく、薄手の一枚板のプラスティック素材で成形されているのが、立体造形としての構造上の特質となっている。
[図7]マックスファクトリー”初音ミク Tony ver.(8)

 原型初音ミク・フィギュアからさらに乖離した表象造形を施された応用的作品例としては、よりリアルなディテール表現を用いた“レーシング・ミク”と、本来のミクには不釣り合いな豊かな胸が印象的な“初音ミクVN02 mix”の二つを挙げることができる。この両者を比較してみると、頭髪の形状や色合いなど、複数の概念軸における同等性と相違性決定条件の存在がさらに多元的に指摘し得ることを確認できるのである。これらの各々の軸線上における属性のパラメータ配分を変更することによって、さらなる変化形の種々の具現化を導出することも当然可能となるであろう。
[図8]“レーシング・ミク”(9)

[図9]“初音ミクVN02 mix(10)

 さらに、初音ミクの立体表象における変化形ヴァージョンの印象的な一例として、“supercell feat 初音ミク”を加えることができる。このフィギュア作品も純正の“初音ミク”として作成された製品ではありながら、先行例とは造形的に大きく異なった特徴を保持する、新たな属性規定概念軸とパラメータ配分を賦与されたことが確認される初音ミク関連フィギュア作品なのである。一癖ある独特の表情から窺うことができる、暗示的な性格的属性特質の変化の幅が特徴的である。
[図10]“supercell feat 初音ミク”(11)

 ひときわ興味深い事実は、ヴァリエーション豊かな初音ミク・フィギュアを制作したグッドスマイルカンパニー社とマックスファクトリー社が、別シリーズのフィギュア製品“ねんどろいど”と“フィグマ”のそれぞれにおいても、“初音ミク”の制作を平行して行っていることである。ねんどろいど・シリーズは、2頭身のプロポーションで統一されたかわいらしい雰囲気が特徴のフィギュア製品であるが、“ねんどろいど・ミク”の造形の詳細を検証してみると、シルエット上の大きな変革にも関わらず、上で指摘した“記号性”の各々がそのまま忠実にここにも活用されていることが明らかになる。あるいは反転的に、フィギュア・シリーズという概念軸の線上に原型フィギュア作品からねんどろいどに至るまでの各種変化形を展開するパラメータ配分の移行範囲が存在することを暗示する興味深い事例として理解することもまた可能であろう。
[図11]“ねんどろいどミク”(12)

 おそらく犬や馬等の動物の持つ知覚対象認知機能やAIの保有するであろう同等性認知能力においては、外形的特徴においてプロポーションの大きく異なる1/7あるいは1/8スケールのオリジナル・ミクとねんどろいど・ミクの人格的同等性を確証することに困難を覚えるであろうことが予測される。しかし我々人間知性の認知アルゴリズムは、むしろ先に確認した視覚的記号性を核として、より主観的な角度から包括的に対象物の同等性を認識しているのである。8頭身のプロポーションから2頭身のプロポーションへの変化を行うねんどろいど化過程において、様々の省略と変化あるいは新たな属性付加にも関わらずミクの同一性維持を妨げることがないものとして受け入れられた認知メカニズムの存在は、種々の変化形ミクが初音ミクとしての同一性を堅固に維持しつつ、さらに新たな多様性を持つミク属性の別界面を開拓することに成功する可能性を暗示するものなのである。
[図12]“フィグマ・ミク”(13)

 その実際例を、さらにもう一つのフィギュア・シリーズである“フィグマ”を対象にしても確認することができる。フィグマは手足の関節が自由度の高い可動仕様となっていて様々にポーズを変化させることができるばかりでなく、複数の形態を持つ手足の別パーツを付け替えることにより、種々の異なった表情を具現することができる、表象表現のヴァリエーションの幅の広いフィギュア製品である。フィグマ版の初音ミクもねんどろいど版の場合と同様に、人間知性にこのヴォーカロイド・少女キャラクターの人格同一性を確証させる、確たる記号性を備えたものとなっている
 ねんどろいどとフィグマの双方とも頭部や手足のオプション・パーツの交換により多様な姿勢と表情を具現することによって、その特質の多様性を通してキャラクターの潜在的に持つ多義的表象を導出するものである。グッドスマイルカンパニー社によるねんどろいど版初音ミク・フィギュア及びマックスファクトリー社によるフィグマ版初音ミク・フィギュア造形の試みは、オリジナル・ミク・フィギュアとの表象造形の対比もしくは類似性の提示を図ることによって、示唆される概念軸と軸線上のパラメータ配分という論理値の存在を照射する試行を通して、存在論と認識論の根幹に関わる重要案件の挑戦的な事例創出を行ってみせているのである。さらに初音ミクの他にも様々のキャラクターが実際に“ねんどろいど化”あるいは“フィグマ化”されている事実は、人格同定試行における同一性判別条件とそこに関与する記号性の?がりの興味深い具体例の多くを現出させることにより、一連のフィギュア造形作業に一種のコンセプチュアル・アートとしての位相を賦与する結果となっている。つまりオリジナル・ミク・フィギュアとねんどろいど・ミク・フィギュアを通貫して初音ミクの“ミク性”を判別することのできる我々の認知機能と、そしてまた多様なキャラクター群を提示するねんどろいど・フィギュアに通底する“ねんどろいど性”を直感的に看取する我々の認知機能は、心理学のみならず論理演算的認知機能解析に関するAI研究の重要課題となり得るものとして、その哲学的かつ応用技術的意義性を主張するものなのである。
[図13]オリジナル・ミクとねんどろいど・ミク(14)

 初音ミクキャラクターは、オリジナルのゲーム・ソフトのヴァージョン・アップに伴ってパッケージ・デザインを新たにし、さらにいくつかの外観の異なる変化形を生み出している。Lat 式初音ミクと並んでミクのキャラクター表象にさらなるヴァリエーションを加えることになったのが、音楽作成ソフト『Vocaloid』の機能拡張版アプリケーションとして発売された“Miku Append”である。このソフトのパッケージ・イラストにおいて初音ミクは、衣装や装身具ばかりでなくこれまでに無かった神秘的な表情と浮揚感のある不思議な姿勢を獲得して、そのキャラクター表象にまた新たな属性を付加することになっている。
[図14]“Miku Append” パッケージイラスト(15)

この初音ミクの人格的印象を大きく変革することとなった“アペンド・ヴァージョン”の初音ミクイラストを基にした立体造形化も、1/7通常モデル・フィギュアとフィグマ版の双方において既に実現されている。“アペンド性”は明らかに初音ミクキャラクター属性を決定する多元軸マトリクスの一つのスケールを形成する基幹条件として機能しているのである。当然ながら他の種々のキャラクターの変化形を展開する行列図表においても“アペンド性”は独立して同等の機能を発揮することになるであろう。
[図15]アペンド・ミク・フィギュア(16)

[図16]フィグマ版アペンド・ミク(17)

アペンド・ミク・フィギュアにおいては、より透明感を増した頭髪とオリジナル・ミクの特徴であったサイハイ・ブーツに替わって素足に黒いストッキングを装着している点と、ダンスのステップを踏んでいるような軽快な仕草に替わって動きを止めて空中に浮遊しているような神秘的な姿勢が印象的であるが、1/7モデルとフィグマ版との間にはやはり明らかな相違点もいくつか存在する。既存のマトリクスの空白項目を補填するかのように後に発売されたねんどろいど版のアペンド・ミクは、上の特徴にさらにヴァリエーションを加えた印象的な特質を展開することとなっている。
[図17]ねんどろいど・アペンド・ミク(18)

 Lat式ミクの眼鏡やアペンド・ミクの素足の例にも増して初音ミクに関する表象のヴァリエーションの付加例として興味深い事実は、後発的なキャラクター規定属性としてミク表象に“ネギ”というアタッチメントが追加されたことであろう。ミクの持つ独特の髪の色合いと制服に用いられた浅葱色の配色の及ぼした連想からか、ネット上の動画投稿サイトにアップされたミクが小道具としてネギを手にしていたことが見事にミク本人の属性要素と一致して、いつのまにかネギをかざして踊っていることが初音ミクのミク性を決定する主要条件となってしまったのである。ネギを手にして踊っている“ネギ・ミク”は種々の2次創作イラストやフィギュア製品の題材としてインパクトの強い印象的な図像を形成するに至っている。その結果、時にはネギを手に取るだけで初音ミクの簡易コスプレが成立してしまうのである。後発的に付加された要素がキャラクターの根幹的属性としての地位を獲得するという、事象の成立過程に内在する因果関係性逆転のメカニズムは、アーサー王伝説(19) やキリスト教聖書(20) などの“サイクル”と呼ばれる伝説群における複合的テキスト集成環境の中でエピソードの分岐と共に属性と特質の集積がなされた結果、一個のキャラクター像が多面的に醸成されていくという経過と照合することもできるだろう。“ネギ・ミク”は様々の意味で時間性と因果関係性を超えた存在と現象の概念的把握に関する再考察に寄与する興味深い事例の一断面となっているのである。当然ながらフィグマやねんどろいど等の初音ミク関連フィギュア製品のいくつかにおいても、ネギはオプションの付属物の形で積極的に導入されている。以下に示すのはフィグマとねんどろいどにおけるそれぞれのネギ・ミク・ヴァージョンである。
[図18]フィグマ・ネギ・ミク(21)

[図19]ねんどろいど・ネギ・ミク(22)

 上の例に確認されるように、ネギ・ミクは8頭身フィグマ・ミク対2頭身ねんどろいど・ミクの対照においてもこの相関性を反映しており、フィグマ=ねんどろいど、オリジナル=ネギ・ヴァージョンの順列組み合わせを網羅的に完成する行列展開を座標変換的に創出することを可能にする、固有の変換アルゴリズムが存在することを示唆している。さらに興味深いことは、ねんどろいど・ネギ・ミク界面における種々のミク表象のヴァリエーションの提示までもが実際にいくつかの製品造形として実現されている事実である。以下のねんどろいど・ミクの変化形の例は、他のディテールのヴァリエーションと共にミクの特徴的な髪の色がネギに対応しているところが、見逃すことのできない着眼点である。
[図20]ねんどろいど“初音ミク アブソリュートHMO・エディション”(23)

ここに確認した変化形創出例の具現する諸事実は、それぞれの概念と現象体の集合間に通底するある種の共変的特質を抽出する可能性を暗示しているようにも思われる。つまり“ねんどろいど性”という全てのキャラクターに対して適用可能な一つの汎用属性があると仮定するならば、いかなるキャラクター原形に対しても一意的に一定の変換記述あるいは変形操作を及ぼすことにより、“ねんどろいど化”という属性賦与が一連の操作結果として普遍的になされることが期待できることになる。これはミクのねんどろいど・ヴァージョンが形成されたように、他の種々のキャラクターのねんどろいど・ヴァージョンを、人的な想像力の助けを借りることなく機械的な演算処理過程として自動的に生産する手順があり得ることを示すものなのである。さらに“ミク”属性と“ねんどろいど”属性が並列的な重ね合わせが可能な同一平面上の概念的特質であり得るならば、“ねんどろいど性”あるいは“ミク性”等の属性規定要素は様々に他の概念への変換操作を適用することさえもが可能な“変数”として利用可能な値となるので、例えば“ねんどろいど”属性とさらに別種のドール製品群である“プーリップ”属性の交換を行い、“プーリップ・ミク”の創出を導くこともできることが予測される。その概念操作の実際の適用結果が以下の“プーリップ・ミク・ドール”である。
[図21]プーリップ・ミク・ドール(24)

プーリップ・ミク・ドールは、特徴的なツイン・テールの頭髪と原型のコスチュームデザインに忠実な衣装表現等において確かに初音ミク性を導入しながら、繊維質の頭髪とグラス・アイ等の装着によって従来のプーリップ・ドールとしての同一性を堅固に維持してもいる。  さらにプーリップ・ドールと形態的共通要素を持つがプーリップとはまた異なるもう一つのドール製品群である“ブライス”属性と“プーリップ”属性との交換あるいはミク属性とブライス属性の重畳を行い“ミク”属性との積を求めた結果として、“初音・ブライス・ミク”を提示する手順も同様に導かれることとなるであろう。この概念操作手順の適用結果が、既に実際に3DCGソフトを活用した作例として示されているのである。下は「3DCGコミュニティサイト」に公開されているヴァーチャル・フィギュア作品、“初音・ブライス・ミク”の作例である。
[図22]初音・ブライス・ミク(25)

“初音・ブライス・ミク”は、立体造形作品としての物理的実体を有することのない代わりに、縦軸・横軸方向に360度の回転を行って頭髪の隙間や衣服の裏側等の内部造形までをも仮想的に描像する機能を持つCGアートである。(26) この“ヴァーチャル・ミク”の表象は、3DCGデザインを行うコンピュータ・アプリケーションの段階的操作の結果生成したデータ加工の集積であるので、その手順を特定し一連のアルゴリズムとして抽出することが可能なものである。ここに仮定した変換操作アルゴリズムの存在を任意の現象物と属性に対して適用することによって、変換記述/生成の原理的照応を事物の存在と属性の連続体としてある行列として記述可能な宇宙の原型的基質(27) の裡に求める試行を想起するならば、コンセプチュアル・アートとメタフィクション表現の裡に通底概念として潜む存在物の同等性あるいは相違性の主題の深層を考察することもまた可能になるに違いない。
 マックスファクトリー社/グッドスマイルカンパニー社とその他各社の現出せしめた総体としての初音ミク・フィギュア作品群は、物理的存在物とその存在を規定するであろう概念・表象との相関に関わる、宇宙の原存在における意味局相と質料局相の事象発現以前の潜勢態次元における共変性を暗示する、システム法則性の照射試行の企図さえ窺わせる興味深い事例提示となっているのである。この形而上的発想のさらなる応用例として、“擬人化”表現の試行の展開例を万物照応的に敷衍することにより、例えば鯨ミク、烏賊ミク、ゴキブリミク等のキャラクター概念の様々な具象化が可能なことも暗示されている。原形質的初音ミクの発現形として条件・形質を網羅したマトリクスの展開を仮想するなら、現実存在人間ミク、宇宙人ミク、未来人ミク、エスパー・ミク等種々の項目に充当する初音ミクの同位体的存在が考え得るからである。参考に、ゴキブリの美少女擬人化の作例を挙げて、初音ミクゴキブリ化の試行に対するヒントとしておくことにしよう。
[図23]ゴキブリ擬人化少女“ごきちゃ”(28)

[図24]ゴキブリ擬人化少女“ごきちゃ”(29)

こうして象徴哲学体系に代表される古代思想にあった生物相の空と陸と海におけるそれぞれの対応のみならず、万物の照応と相関における、コレスポンデンス(correspondence)の原理がホロスコープ的展開の行列として任意の表象の偏差と類比として全宇宙的に反映されることが確認されることにより、あらゆる概念間の種々の関連性あるいは相当性が密接に裏付けられた“意味のある世界”を具現する緊密な曼荼羅的見通し図の照射を図る企図を、フィギュア造形の中に読み取ることも可能になると思われる。“全”の中に反映されているすべての“個”と、各々の“個”の中に秘匿されている“全”の本質が双方向的に見て取ることのできる神秘主義的秘教パターンを構築する魔術的システム理論の存在が、そこに示唆されているからである。
 このような形而上的概念抽出試行作業において最も興味深い作例の一つと思われるものが、ねんどろいど・シリーズの一つとして、“マンガ作品『らきすた』の登場人物である柊かがみが初音ミクのコスプレをしている”ヴァージョンである。本体が“かがみ”であり、装われた人格表象として初音ミクが選択されたことが、ねんどろいど・フィギュアとして明示的に具現化され得ている事実は、反転的に“かがみのコスプレをしている初音ミクのねんどろいど・ヴァージョン”のみならず、プーリップ・ヴァージョンやブライス・ヴァージョンその他の作例創出の可能性をも示唆するものなのである。
[図25]ねんどろいど・かがみとねんどろいど・ミク(30)

 この問題を敷衍することにより、概念と記述の相関を保証する原初的システム理論の本質に対する考究の糸口を捕捉する新たな手立てを見出すこともできる。例えば、“狸に化けている狐”と“狐に化けている狸”の表象化における類似と相違の検証や、“羊と名乗る狼”と“狼と目される羊”等の概念的相関における表象の遷移と連関、あるいは深層的意味次元における根幹的な同一性・相当性の認証という哲学的試行さえもが効果的に提示される展望が開けてくるであろう。この発想をマトリクス的に補填した実例として、実際にフィギュア製品界においては、“ねんどろいど版ミク・コスプレ・柊かがみ”に並んで “フィグマ版ミク・コスプレ・柊かがみ”も既に製品として公開されているのである。
[図26]フィグマ版ミク・コスプレ・柊かがみ(31)

初音ミクというフィギュア作品を対象にキャラクター同定上の指標となるべき要素としてミクのヴォーカロイド制服に確認したコスチューム、青緑色の極長ツインテールに確認した髪型、小道具としてのねぎに確認した後発的アタッチメント、さらに特有の印象を喚起する姿勢・ポーズ等があったことが確認され、これらが省略あるいは他の要素とそれぞれ置換され得るものでもあったことは、例えばさらなる新ミクヴァージョンの潜勢態として任意の空白の行列を補完することにより髪の色違い、目の色違い等の変化形のみならず基幹的概念軸そのものの跳躍を図る“ヌード・ミク”、“巨乳ミク”、“スキンヘッド・ミク”等の創出可能性があることを暗示してもいる。さらにミクの兄弟分であるメイコ、カイト、鏡音リン/レン、巡音ルカ達の各種同位体との類似性あるいは相違性が方程式化されることにより、行列的な属性配置から網羅的な仮構表象的人格性の展開を図ることが可能となり、曼荼羅としてのキャラクター展開の可能性を考えるならば、反転的に全ての人間存在を初音ミクとして記述する試行も、その妥当性を主張することになるに違い無い。そうであるならば、キャラクターはその本性上“一個の他と分断し得る独立した存在”である以上に、“相互浸透し合う重ね合わせ可能な相矛盾する要素の集積体”として理解すべき概念なのであるかもしれない。


2 惣流/式波・アスカ・ラングレー、綾波レイと戦場ヶ原ひたぎ
 初音ミクを対象にして行ったフィギュアの疑似人格特性についてのこれまでの考察の問題点を、『新世紀エヴァンゲリオン』の中心的キャラクターであるアスカとレイに適用して応用的検証を試みることも可能である。『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する印象的なキャラクターの一人が、奔放な傲慢美少女“惣流・アスカ・ラングレー”であったが、劇場版アニメ映画『新世紀エヴァンゲリオン 破』に登場するアスカは“式波・アスカ・ラングレー”の名を与えられており、露出度の高い印象的なデザインの“テスト用・プラグスーツ”の着用場面の影響等で、オリジナルであった惣流・アスカ・ラングレーとは微妙に異なった表象特性を備える結果になっている。透光素材を用いた“テスト用・プラグスーツを着用しているのは式波・アスカ・ラングレーに限られ、惣流・アスカ・ラングレーには、このプラグスーツを着用するシーンはない。しかし厳密には作品背景的偏差を背負った異なるキャラクター達であると解釈されなければならない惣流・アスカ・ラングレーと式波・アスカ・ラングレーの、個人存在としての外観あるいは属性における客観的差異の判別困難性において現出するはなはだ微妙な人格同一性に関する問題点は、製品化されている種々のフィギュア造形の結果を検証して見るならば、初音ミクの例が示していたようにむしろ制作された各々のフィギュア・ヴァージョン毎に指摘し得る事実であったのである。つまり初音ミクの様々な変化形の場合と同様に、惣流・アスカ・ラングレーあるいは式波・アスカ・ラングレー自身と綾波レイ自身についても、全く同様の同等性と偏差の展開が一連のフィギュア作品群として具現化されているのである。アスカにせよレイにせよ、実に多様な表象を与えられた彼等の“同形体”が既に無数に存在することを確かめることができる。以下に示すのは、その膨大な実例のごく一部である。アスカもレイも、原作に明示された特質のみならず、個々のフィギュア製品として派生的に具現化することとなった造形作者の刻印的特性や製品シリーズの特徴的背景を属性決定要素の明示的な一つの軸として保有する、多元的なマトリクス上に展開する離散的キャラクター像表象の実態を示していることが明らかである。
[図27]アルター”ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 1/8 式波・アスカ・ラングレー テスト用プラグスーツVer.”(32)

[図28]WAVE”ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 式波・アスカ・ラングレー プラグスーツVer.(33)

[図29]やまと“CL#026 新世紀エヴァンゲリオン 惣流・アスカ・ラングレー”(34)

[図30]アルター”惣流・アスカ・ラングレー”(35)

[図31]やまと“CL#025 新世紀エヴァンゲリオン 綾波レイ ver.2”(36)

[図32]フロイラインリボルテック綾波レイ(37)


 アニメ作品の中では、キャラクターの発した特定の台詞がキャラクター特性そのものを決定する要因として認められることも多い。その代表的なものが、アニメ史上かつてない屈折した人格の保有者であった『起動戦士ガンダム』の主人公アムロ・レイの語った「親父にだって殴られたことないのに。」という、いじけきった台詞である。同じく屈折した心性の軟弱ヒーローが登場する『新世紀エヴァンゲリオン』の中から同等の著名な台詞を探すとするならば、へたれ主人公碇シンジの連発する「逃げちゃだめだ。」の病的独白や、ツンデレ美少女惣流・アスカ・ラングレーの「ばかばっか、み〜んなばっか。」の奔放発言を挙げることができる。そしてまた多くのアニメ・キャラクターは、身に着けているコスチューム、取り分け制服により個人そのものの同定が可能になっていることが多い。代表的なものが『新世紀エヴァンゲリオン』に登場するアスカとレイのプラグスーツである。二人は同じ中学に在籍することから同等の制服姿で作品世界に描写されているが、彼等の搭乗する人型汎用兵器エヴァとのシンクロをより緊密にするために、搭乗員のシンジやアスカやレイはそれぞれ固有の戦闘用ユニフォームを備えてもいる。搭乗機との同調を確実にするため頭部に装着するインターフェースも加えて、それぞれのキャラクターの身に着ける戦闘服であるプラグスーツは各々色合いやデザインにおいて変化のあるものとなっており、コスチュームの色・形によって容易に人格同一性を判別することができる結果となっているのである。これは彼等の各人が単独で搭乗機エヴァ初号機から2号機までとの同調を可能にするファーストからサードまでの“チルドレン”と呼ばれる世代枠を充当していた事実と見事に符合する結果となっている。

[図33]ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 式波・アスカ・ラングレー【プラグスーツVer.】(38)

[図34]REAL ACTION HEROS エヴァンゲリオン新劇場版:破 綾波レイ(39)

[図35]真希波・マリ・イラストリアス(40)


これは彼等と同様にエヴァに乗り込む能力を持つキャラクター達である渚カヲルや、劇場版エヴァンゲリオン“破”において後に登場した真希波・マリ・イラストリアスの場合においても当てはまる事実である。  しかし作品世界の設定条件に従って、制服着用は個々のキャラクター同定条件には結びつかない、複数の人物によって共有される特質として示される場合もある。その具体例は『化物語』に登場する戦場ヶ原ひたぎ、羽川翼、神原駿河の三人の美少女達のフィギュア造形に確認することができる。

[図36]化物語 戦場ヶ原ひたぎ 完成品フィギュア[グッドスマイルカンパニー](41)

[図37]化物語 羽川翼 完成品フィギュア[グッドスマイルカンパニー](42)

[図38]化物語 神原駿河 完成品フィギュア[グッドスマイルカンパニー](43)


この場合はそれぞれのキャラクターの体形を反映して各々のユニフォーム着用姿が特有のフォルムを形成していることが造形上の要となっている。特に胸の膨らみが及ぼす上着のシルエットの変化は無視することのできないものだろう。『ダ・カーポ』と『To Heart』以来、胸の形状を忠実に反映した制服表現はゲーム・キャラクターとフィギュア・デザインの欠かせない要素となっている。 戦場ヶ原ひたぎの使用する特殊武器である文房具に代替するキャラクター補完要素として羽川翼の場合は携帯電話を保持しており、神原駿河の場合は背景としてBL本の山を従えていることも、立体造形上の工夫として見逃すことができない。さらに羽川の装着する眼鏡と神原の着用するスカートの下のスパッツ等も、キャラクター特質を表現する欠かせない要素となっている。(44)  作品中で戦場ヶ原ひたぎの着用するコスチュームは制服に限られていた訳ではないので、下のように異なるコスチュームを纏ったひたぎのフィギュア制作例も存在する。ここでは彼女の髪型もアニメの映像に忠実に、ポニーテールが採用されている。衣装や髪型などに窺うことができるこれらの変化形の全てに通貫して認められる“戦場ヶ原ひたぎ性”が、人格同一性概念として重要な考察対象とされることになるのである。

[図39]戦場ヶ原ひたぎ、髪型・コスチューム変化ヴァージョン(45)

 立体造形作品であるフィギュアの中から人格規定的な特徴的付加条件を探索するならば、むしろキャラクターに特有の姿勢を挙げることができるだろう。殊にフィギュア作品では、彫刻と同様に独特のポーズに造形の要がかかっているといってもよい。例えば『化物語』の極めて印象的なツンデレ・キャラクターである戦場ヶ原ひたぎの場合では、彼女が戦闘の武器として用いた文房具であるカッターナイフとホッチキスを恫喝的にかざした姿勢がこれにあたる。可動式のフィギュアである“フィグマ”においても、ひたぎのこのポーズを再現することを予定して基本的な身体造形とパーツの作成がなされているように思われる。この姿勢と小道具はねんどろいど・ヴァージョンにおいてもやはり忠実に反映されているのである。

[図40]figma(フィグマ) 化物語 戦場ヶ原ひたぎ[マックスファクトリー](46)

[図41]ねんどろいどぷち 化物語セット戦場ヶ原ひたぎ(47)


しかしこの魅力的な被害妄想/加虐趣味のツンデレ美少女キャラクターのフィギュア造形作成例として最も記憶に鮮明なのは、ひたぎが高校校舎の階段上で一瞬、主人公阿良々木暦に対する戦意を喪失し、武装解除をして制服の中に隠されていた文房具の全てを床のうえに放擲した一瞬の場面を、これらの小道具の細密表現を用いて見事にフィギュア化させた制作例である。作品世界の背景を巧妙に反映させて人格決定要素の造形化を図った典型的な成功例として評価することができるのが、[グッドスマイルカンパニー]制作の“化物語 戦場ヶ原ひたぎ完成品フィギュア”である。立体造形においては“パンチラ”という概念は存在しない。全方位的視角を前提としたフィギュア作品においては下から覗き込めばパンツの姿が視認されることが当然だからである。このひたぎ武装解除シーン・フィギュアにおいてもやはり気になるのは、ひたぎのスカートの下のパンツである。その造形と表象のプレゼンテーションの詳細を確認してみると、パンツの柄にもホッチキスに代表される特徴的な文房具パターンが施されており、戦場ヶ原ひたぎ属性を印象的に構築していることが確認できる。
[図42]グッドスマイルカンパニー“化物語 戦場ヶ原ひたぎ完成品フィギュア”(48)

[図43]グッドスマイルカンパニー“化物語 戦場ヶ原ひたぎ完成品フィギュア”(49)


このフィギュア作品は、立体造形作品の印象的な表象提示を図る戦略として、スカートを取り外して内部を詳細に観察することができる便利な仕様となっている。要請された作品鑑賞の必然のルールに従って、改めて彼女の着用しているパンツと文房具プリントの表現効果の詳細を検証してみることとしよう。
[図44] 戦場ヶ原ひたぎ、パンツ前(50)

[図45] 戦場ヶ原ひたぎ、パンツ後ろ(51)

パンツの前後に施されたフリルや背面の飾りリボンなど、デザイン的にも非常に優れた文房具柄パンツであることが確認される。これに呼応するかのようにマックス・ファクトリー社製のフィグマ・シリーズにおいてもやはり、ひたぎの身に付けているパンツの柄はホッチキスシルエットを強調した文房具柄が採用されているのである。
[図46]figma 戦場ヶ原ひたぎ(52)

[図47]figma 戦場ヶ原ひたぎ パンツ(53)

[図48]ねんどろいどぷち 戦場ヶ原ひたぎスカート脱衣ヴァージョン(54)

 この事実はもう一つのフィギュア・シリーズ“ねんどろいど”においても同様に確認することができる。このようにホッチキス柄パンツは、一貫してフィギュア造形における戦場ヶ原ひたぎの人格同一性を決定する記号としての決定的な機能を果たしているのである。 上で確認した着衣と姿勢の詳細を[アルター]制作の“化物語 戦場ヶ原ひたぎ完成品フィギュア”の作例と比較してそれぞれのコンセプトの相違を検証してみることによって、フィギュア造形におけるポーズと小道具的背景要素の興味深い相関を確認することができるだろう。
 アルター版では背景の階段とその上に散乱した文房具は同様に採用されているものの、造形上のコンセプトはグッドスマイルカンパニー版とはまたひと味異なったものとなっている。しかし戦場ヶ原ひたぎが着用しているパンツ柄においては、アルター版においてもグッドスマイルカンパニー版と同様に特有のホッチキスパターンが踏襲されていることが確認されるのである。
[図49] [アルター]“化物語 戦場ヶ原ひたぎ完成品フィギュア”(55)

[図50] [アルター]“化物語 戦場ヶ原ひたぎ完成品フィギュア”パンツ(56)

 これらの印象的な戦場ヶ原ひたぎ・フィギュア制作例と比較して同様の立体造形表現上の高い評価を下し得る創出例として、[コトブキヤ]制作の“化物語 戦場ヶ原ひたぎ 完成品フィギュア”を挙げることができる。これは実際の立体造形におけるキャラクター特性表現に関する工夫として、ひたぎに取り憑いた“重し蟹”をフィギュアの台座に配した、取り分け興味深い制作例なのである。
[図51][コトブキヤ]”化物語 戦場ヶ原ひたぎ 完成品フィギュア”(57)

ここで改めて問題とされなければならないのは、戦場ヶ原ひたぎの同一性を指示する“ひたぎ性”は果たして個物としての身体的延長範囲の本体に限られるのか否か、という点である。この蟹の爪の台座や先ほどの彼女の保有する武器であった文房具に加えて、印象的なシーンを形成する背景を構築していた階段等の例が暗示するように、人格同一性と目されるものをさらに空間的に拡張した周辺環境にまで及んで理解すべきであるかもしれないからである。“ベルの定理”を導出した光子対の観測実験の例が語るように、現象あるいは存在の“個物性”は、必ずしも古典力学が仮定したように単位粒子あるいはその結合としての連続性という条件に拘束されるものではなく、むしろ離散的にその絡み合い的関係性による同一性を判断してよい場合が確かに存在するからである。このような不連続的同一性認定基準に従えば、憑依した怪異やキリスト教神話においてあらゆる人間個々に定められているとされる固有の守護天使や、さらにまた歴史的人物の固有人格を特定する不可欠の運命を担う事となった他の因縁的関係性において密接な役割を果たした別人格の各々もまた、ある意味で特定の一つの人格の影の部分としてその別次元の裏面を補完する規定要素として認め得ることとなるのである。西尾維新の原作『化物語』の主題として選ばれた“怪異”の秘める意義性がこの人格規定上の概念措定に関わる問題を照射するものであることと並んで、フィギュア造形上の人格同定に関わる特質は様々の同一性再考察の着眼点を提供してくれるものとなっている。ちなみにコトブキヤ版においても戦場ヶ原ひたぎの着用するパンツには、やはり特徴的なホッチキス柄が採用されている。
[図52] [コトブキヤ]”化物語 戦場ヶ原ひたぎ”前(58)

[図53] [コトブキヤ]”化物語 戦場ヶ原ひたぎ”後ろ(59)

 これら各社制作の戦場ヶ原ひたぎフィギュアが着用していたホッチキス柄パンツの変種としての各々の相違性と、これら全てに通貫して認められる同等性の内実が興味深い考察対象となるだろう。しかし全体性と個別性、原理的存在特質と現象性の相関に対する再考察を企図する視点から改めて人格決定要素の検証を行うにあたって、先ずはこれらのフィギュア作品の特質を定着させることとなったアニメーション作品における各々の印象的なシーンの実際を検証しておく必要がある。コトブキヤ版フィギュアの戦場ヶ原ひたぎに取り憑いた怪異“重し蟹”の表象造形に文字記号を導入した演出は、やはりアニメ版にあった怪異の視覚表現を忠実に立体造形に反映させたものであった。

[図54]アニメ『化物語』“重し蟹”のシーン(60)

[図55]アニメ『化物語』“重し蟹”のシーン(61)

 しかしながら興味深いことは、これらのフィギュア作品の戦場ヶ原ひたぎのキャラクターの表象化に決定的に役立ったアニメーション作品におけるそれぞれの場面においては、これらの特徴的な姿勢と印象的な表象は動画としてそれほど強調されたひたぎとの合体シーンを形成していた訳ではないという事実が確認できる点である。フィギュア作品において極めて印象的なひたぎの姿勢とこれらの象徴的図像は、アニメの中では時間軸の推移の中に紛れて、さほどひたぎ自身との一体感が強調されてはいないものであった。フィギュア作品の静止した立体造形における印象的な図像を形成していたスカートからこぼれ落ちる瞬間の文房具群は、時間芸術としてカットバック手法を効果的に配した演出を行ったアニメ演出においては断片的に分断され、むしろこれらが階段上に散乱した一瞬の場面において視覚化されているのである。
[図56]アニメ『化物語』“文房具シーン”(62)

[図57]アニメ『化物語』“文房具シーン”(63)

[図58]アニメ『化物語』“文房具シーン”(64)

[図59]アニメ『化物語』“文房具シーン”(65)

 しかもアニメの高校校舎階段上のこの場面では、ひたぎが身に着けているパンツの映像は一切示されてはいない。戦場ヶ原ひたぎの印象的な下着お披露目シーンは、ストーリーが進行したさらに後になってからのものなのである。忍野メメの助言を受けていったんひたぎの自宅に戻り、シャワーを浴びて衣服を着替える際に初めてひたぎのホッチキス柄下着が画面上に確認されることになっていた。つまり階段上の制服姿のひたぎが身につけていたパンツは、ホッチキス柄パンツとは異なるものであった筈なのである。階段上の制服着用姿においてホッチキス柄パンツを採用していたグッドスマイル版もアルター版も、実はアニメにおける映像記述には必ずしも忠実なものではなく、コトブキヤ版のパンツのみがアニメの視覚表現を反映した正しい下着着用姿をフィギュア化していたことになる。つまり基本的に時間要素を包含することのない立体造形作品においては、アニメの時間的推移を跳躍した表象造形がなされていたことになるのである。(66) この点を考慮に入れると、実はカッターナイフとホッチキス突きつけ恫喝姿勢も全文房具武装解除シーンも、フィギュア造形の際において改めて印象的に賦与された、ひたぎの特有の属性と理解されるものだろう。原作ライトノベル『化物語』とは次元界面を異にするアニメ作品『化物語』に、さらに各種フィギュア製品等の複数の別界面にある仮構世界を通貫して戦場ヶ原ひたぎの“ひたぎ”性が複合的に形成され、戦場ヶ原ひたぎというメタ仮構的人物の通貫的キャラクター特性の完成に至っているのである。これらは例えばキリスト教伝説における“イエス・キリスト”というキャラクターが保有するに至った“聖痕”や“茨の冠”などの表象と同様の、後発的にキャラクター属性を構築することとなった特殊アイテムと看做すことができるだろう。このようにして、特徴的な恫喝ポーズと彼女の着用しているホッチキス柄パンツは、戦場ヶ原ひたぎの人格特性を規定する最重要要素となるに至っている。全方位的視角に対応する立体造形作品においては、アニメにあったそれぞれ異なるシーンから得られた人格規定に関わる諸情報の重畳がなされて、このキャラクターの記号的人格規定へと導かれていたのであった。この検証結果から改めて、“人格”を決定する基幹概念の再考察を企てる必要が生起すると思われるのである。
[図60]アニメ『化物語』”下着シーン パンツ”(67)

[図61]アニメ『化物語』”下着シーン ブラ(68)


3『考える人』とブラック★ロックシューターとヴィニェット
 造形作品における人格同一性の決定条件の及ぼす展開範囲を考察するための参考例として、ロダンの代表作『地獄門』を採り上げてみることにしよう。ダンテの『地獄編』にある記載を彫刻作品として具象化したこの作品は、題名の示す通り地獄の入り口にある門そのものが造形の対象として選び取られている。しかしロダン作の彫刻作品として最も著名であると思われる『考える人』は、実はこの群像作品『地獄門』の一部なのである。果たして一個の完成した立体造形作品『地獄門』の一部として『考える人』のパーツがあるのか、あるいはこの作品の中心的存在である『考える人』の保持する彫刻作品としての同一性を投射した背景として『地獄門』の造形があると考えるべきであるのかの問いは、人格同一性概念の本質を考える上で極めて興味深い問題の所在を照射することになる。つまり『考える人』の同一性の延長性である“外延性”と『地獄門』の同一性の延長性である“内延性”の共軛的関連性をいかに捉えるかが、概念それ自体の裡にある同一性認定の再考察を要請する契機となるからである。
[図62]ロダン『地獄門』(69)

[図63]『地獄門』の「考える人」(70)

 例えばフィギュア作品ブラック★ロックシューターのキャラクター形成要素と思われる特徴は、左目に燃える青い炎・巨大な武器“ロック・キャノン”・胸と腹部の傷跡・貧弱な胸・黒いコート・左右非対称のツインテール等様々であるが、これらと並んで印象的なのが圧倒的な質感を持つ市松模様の台座であった。フィギュア一般を指示する記号としてまず優先的に機能するのが台座の存在なのであるが(71) 、黒白の市松模様の台座はブラック★ロックシューターの人格同一性を指示する特有の記号となっているのである。市松模様はフィギュアの台座のみならずアニメ『ブラック★ロックシューター』の様々のシーンにおいても背景パターンを構築していて、このキャラクターの存在特性を補完する極めて印象的な要素となっている。
[図64]”ブラック★ロックシューターRock Canon ver.”(72)

[図65]”1/8 ブラック★ロックシューター Black blade ver.”(73)

これらのフィギュアの実例の示すように、実際のフィギュア作品制作において導入されている台座は、記号として想定される台座の典型的な形象を大きく跳躍して、しばしばさらに深くキャラクターの持つ本質的な意味形成上の要素を色濃く反映したものになっているのである。
[図66]”ブラック★ロックシューター animation ver.”(74)

[図67]イラスト”ブラック★ロックシューター”(75)

 フィギュア作品においてはこのような人格特性の投射する台座や背景等の周辺環境への反映表現は、“ヴィニェット”(vignette)という語を用いて語られることが多い。元来は書物のページを飾る背景として考案された葡萄の蔓を形象化した唐草模様風の文様を呼んでいたこの語は、フィギュア作品において背景のシーン全体を構築する人格特性補完要素として機能するジオラマ的構築物を指す概念として定着した感がある。
[図68]アニメ“ブラック★ロックシューター”、背景壁面の市松模様(76)

[図69]アニメ“ブラック★ロックシューター”、背景床の市松模様(77)

 属性と意味性向の裡に示唆される外延性を観念と関係性の連続体として無限に延長する試行を適用するならば、キャンバス・額縁・台座のみならず時には名札や題名までもが、一個の芸術作品と切り離すことが出来ない概念的関係性に包含されているのである。その意味においてはCDのジャケットも音楽の一部であり、ピアニストの衣装も演奏の一部と考えられるだろう。さらにまた観客や鑑賞者の存在も、その作品の本質的中核性を厳密に論議するこの思考操作の枠外に除外されるべきものではない。概念形成上のこの捻転的なメカニズムを照射してみせたのがルネ・マグリットのコンセプチュアル・アート作品『これはパイプではない』と、この作品との連動性を持った種々の関連作品群であった。(78) 全体性の宇宙の一断面としてある独個の表象の現れとして理解されたライプニッツの“モナド”の概念と類比的に、フィギュア作品においては周囲の環境を含めた総体として一人の人格の補完物が、有機的な統合的表象として立体造形を施されて具現しているのである。以下に示すのは、様々のフィギュア作品において確認された多角的な“ヴィニェット”の応用例である。フィギュア造形における特有のキャラクターの人格性と、そして作品として保持する独特の意味性は、むしろヴィニェットという概念の許にこそ捕捉されるべきものであるのかもしれない。
[図70]シャイニングウィンド ホウメイ 〔アルター〕(79)

[図71]化物語 ブラック羽川 〔アルター〕(80)

[図72]Fate 遠坂凛-UNLIMITED BLADE WORKS[グッドスマイルカンパニー](81)

[図73]化物語 千石撫子[グッドスマイルカンパニー](82)

[図74]初音ミク 恋は戦争ver. [グッドスマイルカンパニー](83)


 本稿において参照されたフィギュア画像は、全てインターネット上のウェブサイトのページから引用されたものである。いくつかのフィギュア制作会社が合同でコンセプチュアル・アートの優れた理念を具現化させていると看做し得るのと同様に、ネット上ではフィギュアの通信販売ページやサブカルチャー紹介ページなどの様々なサイトが互いを補完し合いながら、膨大な相互参照する造形と表象のアーカイブを構築する結果を実現しているのである。殊にフィギュア作品賞玩における特有の流儀と鑑賞過程が存在することを見事に例証する様々な「フィギュア・レビュー・ページ」が存在することは、文化現象としてのフィギュア存在を理解する上で特筆しておく必要のある事実である。フィギュア作品の鑑賞と評価における具体的着眼点とその言語表象化の模範例が、これらのウェブサイト上で見事に具現されているのを確かめることができるのである。
 以下に本稿の執筆に当たって画像を引用させて頂いた、論考の指摘対象として的確な処置を施して種々のフィギュア画像が公開されていたインターネット上のウェブサイトの一覧を記す。

フィギュア・レビュー・サイト
 あまたのひかり: http://amata.info/archives/3071745.html
 怪人の集会所: http://kaijin.akiba.coocan.jp/
 foo-bar-baz: http://www.foobarbaz.jp/
 はっちゃか: http://blog.livedoor.jp/hacchaka/archives/51313664.html
 Taste: http://taste.style.coocan.jp/
フィギュア通信販売サイト
 あみあみ:http://www.amiami.jp/shop
 Hobby Stock:http://www.hobbystock.jp/
 アマゾン:http://www.amazon.co.jp/
 Good Smile Company:http://www.goodsmile.info/
 やまと:http://www.yamato-toys.com/index.html
サブカルチャー紹介ページ
 アキバHobby:http://akibahobby.net/

1 『VOCALOID初音ミク』のパッケージ・イラスト画像は、ウェブサイト「アマゾン」から引用。
2 その他にいち早くミク・フィギュアの印象を決定する役割を果たしたフィギュア作品としてヴォークス社の“モエコレ・ミク”がある。
3 グッドスマイルカンパニー“キャラクター・ボーカル・シリーズ01:1/8初音ミク画像は、ウェブサイト「Hobby Stock」から引用。
4 マックスファクトリー“キャラクター・ボーカル・シリーズ01:1/7初音ミク画像は、ウェブサイト「アキバHobby」から引用。
5 グッドスマイルカンパニー“初音ミクLat 式画像は、ウェブサイト「あみあみ」から引用。
6 グッドスマイルカンパニー“初音ミクLat 式眼鏡装着画像は、ウェブサイト「あみあみ」から引用。
7 Lat式ミクパッケージ・イラスト画像は、ウェブサイト「アキバHOBBY」から引用。
8 マックスファクトリー”初音ミク Tony ver.画像は、ウェブサイト「アキバHOBBY」から引用。
9 “レーシング・ミク”画像は、ウェブサイト「HOBBY STOCK」から引用。
10 “初音ミクVN02 mix”画像は、ウェブサイト「アキバHOBBY」から引用。
11 “supercell feat 初音ミク”画像は、ウェブサイト「あみあみ」から引用。
12 “ねんどろいどミク”画像は、ウェブサイト「アマゾン」から引用。
13 “フィグマ・ミク”画像は、ウェブサイト「アマゾン」から引用。
14 オリジナル・ミクとねんどろいど・ミク対照画像は、ウェブサイト「アキバHOBBY」から引用。
15 “アペンド・ミク”イラスト画像は、ウェブサイト「アキバHOBBY」から引用。
16 “アペンド・ミク1/7”フィギュア画像は、ウェブサイト「アキバHobby」から引用。
17 “アペンド・ミク1/7”フィグマ画像は、ウェブサイト「Good Smile Company」から引用。
18 ねんどろいど版のアペンド・ミク画像は、ウェブサイト「アキバHobby」から引用。
19 伝説上の英雄人格アーサー王を定義づける要因として、我々は“約束された勝利の剣”エクスカリバーの所有者であることや、妖精の国で傷を癒し帰還する王として待ち望まれる存在であることを知っているが、個人としてのアーサー王存在がこれらの属性を獲得するのは当然のことながらその人生のそれぞれのある時期に至ってからのことであった。
20 典型的にキリスト人格を決定する磔刑の際の「エリ、エリ、サバクタニ」の台詞や手足の聖痕をナザレのイエスが獲得するのは、その最晩年に至ってからのことである。
21 フィグマ版ネギ・ミク画像は、ウェブサイト「アキバHobby」から引用。
22 ねんどろいど版ネギ・ミク画像は、ウェブサイト「アキバHobby」から引用。
23 ねんどろいど“初音ミク アブソリュートHMO・エディション”画像は、ウェブサイト「アキバHobby」から引用。
24 プーリップ・ミク・ドール画像は、ウェブサイト「あみあみ」から引用。
25 初音・ブライス・ミク画像は、3DCGコミュニティサイトCG(http://www.cg-site.net)から引用。
26 CGアートとして全方位的に回転可能なヴァーチャル画像の特質を理解するために、代表的な角度から見た画像を下に挙げておく。








27 ドナルド・クヌースがフォント概念に適用して“メタフォント”と呼んだ原形質的概念の置換がこれに相当する。クヌースは各フォントが共通して持つ同一フォント内のアルファベット各文字間の相当性とあらゆるフォントに通貫して認められるであろう単一アルファベット文字の同等性を対象にして概念と表象の間の関係を語っていた訳であるが、この問題はフィギュアとキャラクターを対象にして全く同様に考察することができるのである。
28 擬人化ゴキブリ美少女画像は、ウェブサイト「アキバHobby」から引用。
29 擬人化ゴキブリ美少女画像は、ウェブサイト「アキバHobby」から引用。
30 ねんどろいど・かがみとねんどろいど・ミク画像は、ウェブサイト「アキバHOBBY」から引用。
31 フィグマ版ミク・コスプレ・柊かがみ画像は、「アマゾン」から引用。(http://www.amazon.co.jp/dp/B001U0PB80/)
32 アルター”ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 1/8 式波・アスカ・ラングレー テスト用プラグスーツVer.”画像は、ウェブサイト「あまたのひかり」から引用。
33 WAVE”ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 式波・アスカ・ラングレー プラグスーツVer.画像は、ウェブサイト「怪人の集会所」から引用。
34 やまと“CL#026 新世紀エヴァンゲリオン 惣流・アスカ・ラングレー”画像は、ウェブサイト「やまと」から引用。
35 アルター”惣流・アスカ・ラングレー”画像は、ウェブサイト「foo-bar-baz」から引用。
36 やまと“CL#025 新世紀エヴァンゲリオン 綾波レイ ver.2”画像は、ウェブサイト「やまと」から引用。
37 フロイラインリボルテック綾波レイ画像は、ウェブサイト「foo-bar-baz」から引用。
38 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 式波・アスカ・ラングレー【プラグスーツVer.】画像は、ウェブサイト「あみあみ」から引用。
39 REAL ACTION HEROS エヴァンゲリオン新劇場版:破 綾波レイ画像は、ウェブサイト「HOBBY Stock」から引用。
40 真希波・マリ・イラストリアス画像は、ウェブサイト「HOBBY Stock」から引用。
41 化物語 戦場ヶ原ひたぎ 完成品フィギュア[グッドスマイルカンパニー](画像は、ウェブサイト「あみあみ」から引用。
42 化物語 羽川翼 完成品フィギュア[グッドスマイルカンパニー]画像は、ウェブサイト「あみあみ」から引用。
43 化物語 神原駿河 完成品フィギュア[グッドスマイルカンパニー]画像は、ウェブサイト「あみあみ」から引用。
44 乳房の形状を忠実に反映した特徴的な上着の部分は、一部の識者の間では“乳袋”という専門的呼称を与えられて論議の対象とされている。
45 戦場ヶ原ひたぎ、髪型・コスチューム変化ヴァージョン画像は、ウェブサイト「アキバHobby」から引用。
46 figma(フィグマ) 化物語 戦場ヶ原ひたぎ[マックスファクトリー]画像は、ウェブサイト「あみあみ」から引用。
47 ねんどろいどぷち 化物語セット戦場ヶ原ひたぎ画像は、ウェブサイト「はっちゃか」から引用。
48 グッドスマイルカンパニー“化物語 戦場ヶ原ひたぎ完成品フィギュア”画像は、ウェブサイト「はっちゃか」から引用。
49 グッドスマイルカンパニー“化物語 戦場ヶ原ひたぎ完成品フィギュア”画像は、ウェブサイト「はっちゃか」から引用。
50 戦場ヶ原ひたぎ、パンツ前画像は、ウェブサイト「はっちゃか」から引用。
51 戦場ヶ原ひたぎ、パンツ後ろ画像は、ウェブサイト「はっちゃか」から引用。
52 figma 戦場ヶ原ひたぎ画像は、ウェブサイト「Taste」から引用。(http://taste.style.coocan.jp/)
53 figma 戦場ヶ原ひたぎ パンツ画像は、ウェブサイト「Taste」から引用。(http://taste.style.coocan.jp/)
54 ねんどろいどぷち 戦場ヶ原ひたぎスカート脱衣ヴァージョン画像は、ウェブサイト「はっちゃか」から引用。
55 [アルター]“化物語 戦場ヶ原ひたぎ完成品フィギュア”画像は、ウェブサイト「アキバHOBBY」から引用。
56 [アルター]“化物語 戦場ヶ原ひたぎ完成品フィギュア”パンツ画像は、ウェブサイト「アキバHOBBY」から引用。
57 [コトブキヤ]”化物語 戦場ヶ原ひたぎ 完成品フィギュア”ウェブサイト「あみあみ」から引用。 58 [コトブキヤ]”化物語 戦場ヶ原ひたぎ”画像 前は、ウェブサイト「怪人の集会所」から引用。
59 [コトブキヤ]”化物語 戦場ヶ原ひたぎ”画像 後ろは、ウェブサイト「怪人の集会所」から引用。
60 アニメ『化物語』“重し蟹”のシーン画像は、DVD『化物語』から。
61 アニメ『化物語』“重し蟹”のシーン画像は、DVD『化物語』から。
62 アニメ『化物語』“文房具シーン”画像は、DVD『化物語』から。
63 アニメ『化物語』“文房具シーン”画像は、DVD『化物語』から。
64 アニメ『化物語』“文房具シーン”画像は、DVD『化物語』から。
65 アニメ『化物語』“文房具シーン”画像は、DVD『化物語』から。
66 アニメにおいては、戦場ヶ原ひたぎのパンツは映像としての記述が行われていなかった部分については、観測効果の及ばない空隙の部分が残されていたものとして理解されることになるだろう。小説等の仮構世界における具体的記載のない背景的情報については、現象として確定する以前の原存在的多義性が推測されることと相似的な情報欠落が、2次元映像表現であるアニメにも認められることになる。
67 アニメ『化物語』”下着シーン パンツ”画像は、DVD『化物語』から。
68 アニメ『化物語』”下着シーン ブラ”画像は、DVD『化物語』から。
79 『地獄門』画像は、663highland, Rodin's "Gates of Hell" in front of the National Museum of Western Art at Ueno, Taito-ku http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:National_museum_of_western_art02_1024.jpg より引用。
70 『地獄門』の「考える人」画像は、写真共有サイト「フォト蔵」、「上野 ロダン 地獄門」
http://photozou.jp/photo/show/150060/5378668 より引用。
71 任天堂ゲーム『スマッシュ・ブラザーズ』は、同社制作のアクション・ゲームやロール・プレイング・ゲーム等ヴァラエティに富む種々のゲームのキャラクター達を勢揃いさせてこれらをフィギュア化し、相互に対戦ゲームを行うという趣向の興味深いメタ・ゲームである。『スマッシュ・ブラザーズ』のオープニング・シーンにおけるキャラクター総覧では、台座の付加が彼等のフィギュア属性を定義づける決定的な条件として導入されている。







(以上の画像は、任天堂ゲーム『スマッシュ・ブラザーズ』から引用。)
台座の果たす同等の記号的機能は、筆者自らをフィギュア化させた以下の画像においても確認することができるだろう。



72 ”ブラック★ロックシューターRock Canon ver.”画像は、ウェブサイトGood Smile Companyから引用。
73 ”1/8 ブラック★ロックシューター Black blade ver.”画像は、ウェブサイトGood Smile Companyから引用。 74 ”ブラック★ロックシューター animation ver.”画像は、ウェブサイト「アキバHobby」から引用。
75 イラスト”ブラック★ロックシューター”画像は、ウェブサイト「アニブロ」から引用。(http://noranotamariba.blog18.fc2.com/blog-entry-82.html)
76 アニメ“ブラック★ロックシューター”、背景壁面の市松模様画像は、DVD『Black★Rockshooter』から引用。
77 アニメ“ブラック★ロックシューター”、背景床の市松模様画像は、DVD『Black★Rockshooter』から引用。
78 マグリットの著名な絵画作品“Ceci n’est pas une pipe”では、パイプとおぼしき画像の下のキャンバス内に“Ceci n’est pas une pipe”と読める文字らしきものが書き込まれていたのであった。パイプの絵がパイプではないのと同様に「これはパイプではない」と読み取れる画面上の染みもまた、必ずしもこの絵の題名を指示する記号であるとは限らない。作品と主題と題名の概念的乖離を見事に照射したこの作品に対しては、他の制作者達によって様々なヴァリエーションが提示されている。“Ceci n’est pas une pipe”の文字が書き込まれた絵の題名とおぼしきカードが画布上に描き込まれた変化形や、歯ブラシの姿が描かれた下に“Ceci n’est pas une pipe”の文字が書き込まれたヴァージョン等がその例の一部である。
79 シャイニングウィンド ホウメイ 〔アルター〕画像は、ウェブサイト「あまたのひかり」から引用。
80 化物語 ブラック羽川 〔アルター〕画像は、ウェブサイト「あまたのひかり」から引用。
81 Fate 遠坂凛-UNLIMITED BLADE WORKS[グッドスマイルカンパニー]画像は、ウェブサイト「foo-bar-baz」から引用。
82 化物語 千石撫子[グッドスマイルカンパニー]画像は、ウェブサイト「foo-bar-baz」から引用。
83 初音ミク 恋は戦争ver. [グッドスマイルカンパニー]画像は、ウェブサイト「あみあみ」から引用。

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