マレーシアからの便り38


 まーくんさんお元気ですか、今回は強引に私の趣味と偏見混じりのマレーシアで楽しめる音楽についての話題をお送りします。題して、またもや世界は広い(音楽編)です。


マレーシアからの便り(38)


【音楽ジャンル】

 多民族国家マレーシアは、40年ほど前に英国の植民地から独立した歴史をもつために、マレー語、英語、複数の中国語、多数のインドの言葉があり、さらにイスラム教国であるためアラビア語表示までと実に多種多様な言語が交錯しています。このためテレビ、ラジオではこれら多民族聴取者の嗜好に合わせるため、各国の民族音楽やポピュラー音楽などさまざまな音楽が楽しめます。

 マレーシアの音楽は大別すると、マレー民族音楽、イスラム宗教音楽、欧米中心の洋楽の3種類があります。なお、クラシック音楽のレベルはそれほどでもなく、テレビのコンサートの様子からは、日本のアマチュアオーケストラの方が数段高いレベルのように感じました。

【マレー民族音楽】

 マレーの民族音楽は初めて聞いても、なぜかなつかしさがあり、しばらく聞いていると、演歌の雰囲気のあることに気がつきます。旋律、テンポ、歌手のこぶしのつけかた、歌う表情等が、聞けば聞くほど見れば見るほど、ほとんど演歌そのものといえるくらい似ています。このため日本人も違和感なく受け入れることができるようです。

 これに対して、毎朝毎晩、町中に拡声器で流されているコーランのうなるような朗読、これははっきり言って浪速節そのものです。テレビに映し出されるその人の眉間のしわと閉じた目、そして傾げた首の歌う様子には、見る側が肩がこるようです。

 さらに、イスラム教の布教宣伝を目的とした一つのジャンルとしてあるのが、男性グループによるアラーの神様をたたえる歌です。これはキリスト教でいうところの賛美歌、ゴスペルソングに相当するのではないでしょうか。マレーシアではこの歌のコンテストが毎年開かれ、大賞を獲得したグループは歌手デビューできるというものです。メロディーはわかりやすいもので、マレーの民族音楽をベースにコーラン浪速節のエッセンスを加えて近代風にアレンジしてあります。不思議なことに、4、5人のグループであってもユニゾンが基本で、ハーモニーなく、声をそろえてイスラムの神様「アッラー」をほめたたえるという内容であろうと推察できます。なぜなら歌詞の随所に「アッラー」という単語がちりばめられているからです。そして、もちろんプロモーションビデオもあり、白いイスラムの服装をまとったちょび髭のまじめな青年たちが、はでなアクションはなく両手を広げ拳を開閉する程度のしぐさで、山の上や湖のほとり、森の中でただひたすら眉間にしわををよせ一種独特な目つきで絶唱しまくります。

 ちなみに、日本ではアラーの神様と言われていますが、正式にはアに大げさすぎるくらいアクセントを付けて、「アッ!ラー」と発音します。

【中国語の歌】

 中国の旧正月になると、中国のおめでたい正月の歌がテレビラジオで頻繁に流されます。これは日本の正月とよく似ています。カラオケに行くと、みちずれ、星影のワルツ等元歌が日本語の歌が中国語に吹き替え版となり、あたかも中国の歌として歌われています。しばらくするとメロディーから日本の歌であることに気がつくほど、実に中国語の歌詞が合っているので感心しました。
 さらに興味深いのは、ラジオで中国語の歌詞のボサノバを聞いた時でした。中国語の発音は一部フランス語に近い美しい響きがあり全く違和感ありませんでした。

【インドの音楽】

 インドの音楽としては、日本で唯一有名なのが、シタールという楽器とそのミュージシャンであるラビシャンカールでしょう。ところが、インドの音楽は奥が深いようです。基本的にダンスミュージックだと思うのですが、チャチャチャのリズムに乗って、男女の掛け合いの歌という形式が一般的です。やや神秘的なその旋律は、前述のアジアの底辺に通じる演歌のエッセンスというものは全く含まれず、強引な表現ではコミックソングにフュージョンの雰囲気をおり混ぜたようなものです。このため、初めに聞いたときは、シンコペーション多用、突然転調したかと思うようなメロディーとコード進行でとまどいましたが、慣れるとこれがまたいいものです。いわゆる軽いジャズに酔う気分が醸し出されています。
 そして、1曲が平均6分は下らないというように長く、おおげさな間奏が2回ほど入ります。

【FMラジオの洋楽】

 マレーシアでも日本と同様に若者は欧米のポピュラー音楽を好む傾向があるようです。
さて、FMラジオには、日本の何倍も放送局があり、マレー語、中国語、インドの民族音楽専用局、そして英語の専用番組などがあります。このうち私のお気に入りの放送局をご紹介しますと、ある英語放送専門の局です。これはの英語のDJにより音楽と天気予報とニュースが24時間放送されています。その曲はアメリカのポップス中心で60年代から90年代までの名曲、つまり10ccやシカゴ、 S&G、ホール&オーツ、カーペンターズ、ディウォンヌワーウィック、パティーオースチン、ボズスキャッグス、マイケルジャクソン等の名曲が一日中かかっています。しかも、これら欧米ポップスの5曲ごとにマレーシアのポップス、そして8曲に一度は中国語のポップス、さらに半日に一度は日本の曲が登場します。

 マレーシアのFM 放送に登場する日本の歌謡曲(ポップス)には、Dreams Come True やその他でした。しかし、ダントツの人気曲は、やはり「上を向いて歩こう」です。
レコードショップでは、谷村新司やチャゲ&飛鳥、くれよんしんちゃん等の日本のCDが売られているのですから、マレーシアの人にも多少は日本の曲に接する機会はあるようです。マレーシア人は、意味は不明でも、雰囲気でそれが日本語の歌であることは分かっているとのことです。蛇足ですが、先月、日本からの輸入洋楽CDを40リンギット(=1200円)で買いましたが、日本語ジャケットには、2500円と書いてありました。日本国内の半額で買えるとは、不思議ですね。

 それにしても、マレーシアの人たちは、私たち大半の日本人と違い英語の歌詞の意味を理解できるのですから、本当にうらやましいですね。



 
 


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