マレーシアからの便り34


 まーくんさんお元気ですか

 マレーシア特派員の私は、HDDのメディア(正式には、磁気記録媒体、略して媒体)を製造する某日本メーカーのジャングルの中にあるマレーシア工場に勤務しています。この媒体は、有名なQxxxxxm社のHDDに組み込まれており、ご存知、火の玉シリーズの一部がそうです。そしてそのHDDが皆さんの愛用されているPCに装着されています。

 さて、今回と次回のマレーシアからの便りは、初めてパソコンに関する話題つまり私の仕事に関するHDDの磁気記録メディアに関する少々技術的な話題をご紹介します。題して、サルでもわかるHDDの大容量化の秘密(前編)です


マレーシアからの便り(34)


 みなさんがお使いのPCにはほとんど全て内蔵されている記憶装置がHard DiskDrive すなわちHDDです。この名前の由来は、柔らかい樹脂基板を使用したフロッピーディスクドライブに対して、開発当初固いアルミ基板を使用したことから、Hard Disk と命名されたとどこかで聞いたことがあります(自信なし)。発明はあの有名な巨大な青色と言われているアメリカの企業です。


 このHDDは起動ディスクとして使用されているため、最も重要なOSや各種アプリケーションソフト、そしてさまざまなデータが記録されており、これなくしてはPCは成り立たないほど非常に重要な外部記憶装置と言えます。

 さて、皆さんがお使いのHDDの記憶容量はどのくらいありますか?
 
Duo230では80MBや120MB程度でしたが、Duo2300c になると1.1GBと容量の増大は着実に進み、現在のPBG3ではとうとう4GB まで容量が増大されまし
た。ところが、ここで素朴な疑問が生じます。つまりHDDの外観は変化していないのに、その記憶容量は驚くほど増大しているということです。
 
そうです、実は記録円盤の記録密度が増大したため、単位面積あたりに記録できる情報の量が文字どおり桁違いに増大し、同じ枚数の媒体を使用して、装置外観は同じでも、記憶容量は増大しているのです。このようなHDDの記憶容量の増大は、内臓されている記録媒体の記録密度の増大、ヘッドの技術革新、そして信号処理技術の改良の3つの技術革新によって成し遂げられてきました。これは媒体を交換する必要のないHDDならではの、閉じた系における内部の機能進化の賜物と言えます。つまり、データの入出力の規格さえ守れば、内部ではどんなことをやってもかまわないため、常に新しい技術が導入されて容量が増大してきました。これは取り外し可能な媒体の互換性を保持する必要のあるフロッピーディスクや光ディスクには実現できない内部進化でした。

 このHDDの記録再生原理は、テープやFDDと同じ磁気記録方式ですが、特徴的なのは、ヘッドが記録円盤である媒体に接触しておらず、ごくわずかな浮上量によって浮いている(グライダーのように滑空している)という点です。

 さて、このHDD記憶容量の増大は現在も進行中でして、年率60%の割合で増大しています。これは大変な成長率でして、ほんの3年前に主流だった1GBの記録容量のHDDが、現在では同じ価格で4GBになっていることからも実感できると思います。このHDDの容量増大競争は皆さんご存じのように非常に熾烈でして、メーカー各社3ヵ月ごとにHDDのモデルチェンジが行われるほど急激な展開を示しており、記憶容量は増大しているにもかかわらず価格はどんどん低下しています。たしか10年前には、100MBの外付けHDDの価格が20万円ほどしていましたが、今では2万円で3GBのHDDが購入できますから、HDDの価格低下速度と記録密度つまり記憶容量の増大速度はプロセッサーの動作周波数の進歩に匹敵するほどです。

 では、このような容量増大を遂げているHDDの中味のうちで、記録媒体はどのような進歩を遂げたかというと、現在では、3.5インチの媒体1枚が約3Gバイトの記憶容量にまで大容量化されています。実に2HDのフロッピーディスクの2000倍です。

 それでは、このような大容量つまり記録密度が向上した媒体は、どのような進歩をとげたかというと、一言でいうと記録膜の磁気特性の向上があげられます。つまり記録密度を上げるということは、単位面積当たりの記録ビット数を増大させることですから、密度の増大のためには、記録ビット1個当たりの長さと幅を減少させる必要があります。特にビット長を減少させるためには、磁気特性を非常に向上させる必要があります。

 それでは、次回はどのくらいこのビットが小さく、そしてHDD内部では精密な動作をしているかということを具体的にご紹介いたします。


 う〜ん、難しいでげすね。でも、おいらにも何となく、わかるでげす。つまり、HDDの記録媒体が記録できる容量が以前よりも大きくなったんでげすよネ。だから、それを読むヘッドの性能や移動距離がスゴク精密になってきているんでげすネ。それにしても、HDDもずいぶん安くなったでげすね。青組のHPに価格が出ていたでげすが、5Gで4万円台でげした。


INDEXに戻る            マレーシアからの便りへ