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ROAD TO BRAZIL !!

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2000/9/21 閉ざされた道
 修行記の方、しばらく送っていませんでしたが、僕は相変わらず元気にやっています。2週間ほど前に丹君が去り、入れ替わりでnかたさんと合流しました。nかたさんのハチャメチャぶりに僕も便乗し、ブラジル生活も新展開を迎えております。詳しくはnかたさんの「ブラジルレポート」を参照下さい(笑)。

 最近は僕を取り囲む状況が本当にめまぐるしく変化していました。何かと忙しくて修行記を書く暇もありませんでした。まずアパートを引っ越した事がひとつ。電話付きの非常に良い物件を探すことが出来たので、思い切って移ることにしました。道場のあるイパネマよりの場所です。nかたさんを迎えてからは、一緒にキモノを買いに行ったり、nかたさんのぶっ壊れたPCをネットに接続するために奮闘したりと、しばらくは大忙し。nかたさんも僕のアパート探しに付き合って下さいました。nかたさんのルームメイト、イギリス人のクリフという奴とも仲良くなり、クリフがナンパした彼女とか、その彼女の妹とか、数珠つながりに知人が増えていきました(笑)。クリフはなかなかクレイジーな奴なので、彼のペースに合わせると少し疲れます。でも変化のある日々は、色々な意味で気持ちをリフレッシュさせてくれたと思います。

 道場はいつしかブラジレイロモードに入ったようで、練習がハードになってきました。何やら見たことのない青帯連中が増えたなぁと思っていたら、彼らはブラジレイロに出場するために地方から集まった、他のアリアンシの選手達でした。アレシャンドリの所で調整するのが慣例のようです。普段の練習の場合、アレシャンドリはスパーの時間になると、いつも他のインストラクターと談笑しながら座って見ているだけでした。でも最近ではそれぞれのスパーリングを監視して回り、怒号を飛ばします。こちらもうかつに手を抜けません。普段ならあきらめてしまうようなシーンでも、ちゃんとやるようになりました。僕は元立ちばかりやらされ、何だか多めに練習させられている気がします(笑)。言った事が出来ない選手、動きの悪い選手は、かなり厳しいことを言われているようです。ふて腐れる奴もいます。レオやフィリップといった普段やらないデカイ黒帯同士も、スパーで組まされ始めました。レオがあのフィリップをボコっていたのには驚きました。強すぎます。ついでにnかたさんがフィリップ体験しました。スウィープで顔面から叩きつけられ、マジで流血していました。

 nかたさんは持ち前のフランクな性格上、アッと言う間に道場に溶け込んでいました。nかたさんがブラジレイロに日本人枠で出場する事は、アレシャンドリにも了承してもらえました。これで一安心。早速バッハへレジストレイションをしに行く事になりました。バッハへ行くのは中井さん達と別れて以来なので、すごく久しぶりでした。一応電話でアポ取ったのですが、当たり前のように英語が通じないので、とりあえず行くしかないな、という感じでした。しかし行ってみると、意外に簡単にレジストレイションを済ませる事が出来ました。日本の連盟からちゃんとFAXが届いていたようで、名簿にはすでにnかたさんの名前があったのです。お金を払い、Tシャツを受け取って終わりです。nかたさんはマスターにするかアダルトにするかをすごく迷っていました。マスターだと相手がおらず、登録即優勝、金メダルが持って帰れるのです。しかしそれで金メダルを持ち帰っても、みんなに何を言われるか分かったもんじゃないと、結局アダルトにしたようです(笑)。

 ブラジレイロが開催される場所は、空港からほど近い、イアッチクルービというスポーツクラブです。nかたさんと一緒にタクシーで行きました。イパネマからだと50分くらいです。着いて驚きました。何と試合場は屋外なのです。と言っても屋根がある素晴らしい会場でした。「うおお、こんな所で試合が出来るのかぁ!」とワクワクしてしまいました。nかたさんの試合は4時試合開始の為、3時くらいに僕らは現地入りしました。すでに会場では熱い戦いが繰り広げられていました。今日は青帯の部だけです。nかたさんはいつになく緊張していました。あんなシリアスなnかたさんの顔には、もう一生お目にかかる事はないでしょう(笑)。会場には道場の仲間も何人か来ており、アレシャンドリも来ていました。レオジーニョとテレレーにもまた会う事が出来、挨拶しました。

 何だかジロジロ見てくる選手がいました。よく見るとグレイシー・ウマイタのダニエル・コヘア君ではありませんか。パンナムで僕が負けた選手ですね。向こうはよく覚えてくれていたようで、僕もすぐに分かりました。ムンディアルも僕と同じカテゴリーにエントリーしていて、優勝したのは彼でした。僕が決勝までいけばやれたはずなのですが、それは実現しませんでした。「ブラジレイロも紫帯で出るのかい」と聞くと「茶帯になれたんだ」と答えたダニエル君。さすがにそうだろうなぁとは思っていましたが、個人的にリベンジしたいライバルでもあったので、遠い存在になってしまったようで悔しかったです。また同じ土俵に上がれるように僕もがんばるしかありません。

 そうこうしているうちに、nかたさんの試合の時間です。僕はビデオカメラを片手に少し壇上に上がり、撮りやすい位置を確保しました。nかたさんは青帯アダルトプルーマ級にエントリーし、相手はマリオスペーヒー率いるブラジリアン・トップ・チームの選手でした。

 開始早々勢いよく引き込んで、股をくぐってくる相手。nかたさんは何とかベースを保とうとしましたが、結局股をくぐられてバックを取られそうになりました。亀になって堪えたところを、クロックチョークを仕掛けられました。グルグルと回る相手。耐えつづけるnかたさん。しばらくするとレフリーが試合を止めました。nかたさんは開始1分足らずで壮絶に散ったのでした。落ち方は半端ではなかったです。首を上下にガクガクと震わせ、全身痙攣していました。後で聞いたところ「目覚めたとき、自分の舌を飲み込んでいるのが分かった。すぐに吐き出した」という程でした。舌をザックリやってました。もう少しで死んでいたかもしれません。僕は駆けつけるかどうか迷いましたが、結局このドキュメントを映像に収める方を選びました。

 試合後にうなだれるnかたさんでしたが、アレシャンドリも「彼にとってはいい経験になったはずだ」と言ってましたし、本当にその通りだなと僕も思います。nかたさん自身、すでにブラジルに来て何か掴んだようです。それは技とか実力とかうんぬんではなく、考え方のような物だとか。何にせよ、やってみなければ分からないが、やってみたら分かる事がある、ということなんでしょうね。nかたさん、お疲れ様でした!

 さて、今回のブラジレイロ観戦は、僕自身も会場の場所や雰囲気を知ることが出来たので、大いに収穫がありました。「来週末はいよいよ俺の試合だ!」そう意気込んで気合を入れたところだったのですが、ここでまたさらに驚くべき事実が発覚しました。

 どうやらブラジレイロの日程が変更になったらしいのです。アレシャンドリには「お前の試合は月末になった」と言われました。ただ今ブラジルは選挙まっさかり。阿部さんの師匠であるルイス・ペデネイラス氏も立候補しているそうです。そのあおりで、紫、茶、黒の部は移動したのです。多少拍子抜けしましたが、試合前によりたくさん練習出来るって事だからまあいいや、と納得していたのですが、甘かったです。その月末とは今月末ではなく、来月の末の事だったのです。10月の20、21、22日に移動しました。

 何が問題かと言いますと、実は僕のビザは10月20日で切れてしまうのです。航空券もちょうど20日発のを取っています。3ヶ月の滞在予定でしたので。やばいです。あまりの突然の出来事に悶絶しました。果たして僕のブラジレイロへの道は、このまま閉ざされてしまうのでしょうか。
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