註1)首里城は14世紀後半に創建された城だが、1609年の島津の琉球侵入以降、南殿が創建され、その後、なんどか焼失のうきめにあっている。最近では沖縄戦で焼失し、現在の首里城は92年に復元されたという。最初、もし古琉球の王城として残すなら薩摩藩の接待所として使われていたという南殿はなくしてしまったほうがいいのではなどと不埒なことを思ったが、そうもいかなかったようだ。復元作業に携わった高良倉吉氏がその時の苦心を書いている。

 「、、、なにしろ当の首里城は戦争で完全に失われており、首里城に関する資料もことごとく散逸してしまった状況のなかではじまった。作業開始時点では、一体、どこまで復元できるか、正直いって不安でならなかったのだが、何はともあれ、とにかく資料収集を徹底的に行う必要があり、入手した資料から細大もらさず情報をひき出すしかなかった。
 窮すれば通ずで、予想以上の資料が続々と集まりだした。たとえば、昭和の初期に首里城正殿の解体修理を行った際の図面が文化庁の資料室にあった。また、一八世紀中葉に正殿の大規模な修理が行われたことは知っていたが、そのときの工事報告書にあたる古文書が沖縄県立芸術大学の鎌倉コレクションから出てきたのである。こうした貴重な資料が発見されたために、正殿に関してはかなりの自信をもって復元できることになった。しかし、北殿、南殿、番所をはじめ、奉神門などについてはこうした資料がえられなかったため、しかたなく骨格をコンクリートで建て、戦前の写真にもとづいて外面のみを往時にもどす「外観復元」の手法を用いざるを得なかった。」(高良倉吉『琉球王国』より)


註2)首里森御嶽(すいむいうたき)。城(グスク)の説明を辞書でひくと、「城塞型グスクは軍事上の施設ではあるが、その内部に例外なしに聖所をもっており、たとえば、首里城には首里杜(もり)、真玉(まだん)杜と称される二つの聖所が存在した。グスクとは本来こうした聖所をさし、その聖所を中心に一帯を石垣で囲い城塞としたが、城塞となったのちもなおグスクと称されるゆえんはこの聖所の存在にあった。城塞化しなかった大部分のグスクはそのまま聖所としてあり続けているところから、グスクの本質を聖所としてとらえる点で研究者の意見はほぼ一致している。、、、」(電子ブック版「日本大百科辞典」)とある。この記載にでてきて、首里杜(もり)と呼ばれているのが、たぶんこの首里森御嶽のことだろう。

 「おもろそうし」の「第一」には、聞得大君(きこえおおぎみ)(王国時代、国王に対応する最高位の神女で、太陽神に成り代わることができる神女)が、首里杜(もり)ぐすく、真玉(まだん)杜ぐすくに降りて、神遊びをした、と伝えるうたが沢山収録されている。その冒頭のうたをあげておこう。

聞得大君ぎや
降れて 遊びよわれば
天が下
平らげて ちよわれ
又鳴響む精高子が
又首里杜ぐすく
又真玉守ぐすく


註3)カニステルは枇杷みたいに大きな種子をもっているが、果肉を食べた後これを捨てずに植えるとちゃんと発芽すると石川さんが言っていた。


註4)翡翠葛(ヒスイカズラ)。「フィリッピンのルソン島に自生する長さ20mにも達するツル性の植物。5Bほどの花は、オウムの嘴に似ていて、美しい翡翠色。花序は長さ40Bあまりに垂れ下がり、時には1mにも達する。日本国内では珍しく、熱帯植物を展示した温室で稀に花が見られる。当園には1996年に導入、1998年に初めての花が咲きました。」(東南植物楽園の掲示)


註5)運天。これを書いてから、伊波普猷『古琉球』(岩波文庫)を読んでいて「運天」という地名が、国頭郡今帰仁村にあることを知った。「おもろそうし」の14−16に、日本の武士たち(大和勢、山城勢)が上陸した場所として登場するのだ。「小湊」とも呼ばれているので、たぶん漁村で、もしかしたら、知念村海野一帯にのこるこの名字をもつ人々の祖先は、今帰仁村運天の出身者なのかもしれない(推測)。


註6)「残波やる夜半サ」(^^;。


註7)豆天。詩の同人誌「Intrigue」vol.9に恩地妃呂子さんが、「沖縄の旅 タイムリミット180分」という文章を書いていて、そこにでてくる「さやいんげんの大きいやつのような」豆のてんぷらのこと。牧志公設市場近くの狭い路地の天ぷら屋さんで売っていて食べたとあったので、ひそかに楽しみにしてたのだが、ついに幻になってしまった。この豆天の味なるもの、石川さんはご存じだろうか?



 もののついでに、これまで「KIKIHOUSE」の読書メモに載せた沖縄に関連する本の感想文をリストアップしてみました。


ARCH 谷川健一『古代海人の世界』(小学館):民俗学の立場から、古代の漁労民について多面的に考察した本。

ARCH ラブ・オーシュリ、上原正稔編著『青い目が見た「大琉球」』(ニライ社):欧米人の書いた琉球探検・紀行文に付された珍しい挿画の数々を紹介した画文集。

ARCH 高良倉吉『琉球王国』(岩波新書):琉球王国のコンパクトな歴史概説と、行政制度の研究書。

ARCH 砂守勝巳『オキナワ紀聞』(双葉社):写真家のオキナワ写文集。沖縄で暮らす人々への接近遭遇ルポです。

ARCH 田口ランディ『コンセント』(幻冬舎):サスペンス小説だが後半に沖縄のユタが登場。

ARCH 谷川健一『神に追われて』(新潮社):民俗学者の書いた沖縄の巫女病(神ダーリ)をテーマにしたノンフィクション小説。

ARCH 外間守善『海を渡る神々』(角川書店):海の彼方にある原郷信仰を考察するフィールドノート。ニライ・カナイ信仰への関心からはじまったという著者の研究の実地探査は世界中に及ぶ。

ARCH 村井章介『海から見た戦国日本』(ちくま新書):16~17世紀前半にかけての日本を、周辺海域との関わりから考察する。琉球の交易ネットワークの大きな拡がりについても触れられている。