あなたは、僕の事等もう覚えている筈はありません。
僕はあなたの事を見つめていただけでしたから。

あの頃、僕達はクラスが一緒で、勿論、話をした事もありましたが、
あなたは、
僕が想いを寄せていた事等知りません。
いえ、僕にしたって、あなたに本当に想いを寄せていたのか、
唯、少し可愛いと思ったあなたを
やはり同じ様に好意を寄せていた友人と、
単なるアイドルの様に、わくわくする気持ちを楽しんでいただけなのか、
今となっては、はっきりしません。
それでもやはりあなたの事を、
「可愛い女性」だと胸を高鳴らせていたのは事実で、
あなたに自然と眼を向けていたりしたのでした。

修学旅行の日、僕と友人はこの一週間の旅行の間に、
なんとかあなたの写真を撮ろうと、話したのでした。
あなたが他の女友達と写真を撮っている所を、そっと後から狙ったり、
バスの中であなたが気の付かないうちに撮ろうとしたり、
それでもやはり、僕も友人も、
互いに相手のフィルムにあなたを焼き付けてしまうのは、
ちょっと悔しくて、
チャンスの巡ってくる度に、邪魔をし合っていたものだから、
結局あなたの写真は、
写真屋に撮ってもらった何枚かの大きなクラス写真の、
大勢の中の小さな顔だけでした。
それでも僕と友人は、その数枚のクラス写真のうちの、
この顔が可愛い等と、こっそり言い合ったものでした。

あなたはもの静かで、とても優しそうに見えました。
そう、きっと僕は、あなたを愛していたというよりも、
やはりアイドルとして見ていた気がします。
だからこそ、深刻にならずに、
あなたをわくわくするだけの気持ちで見ていられたのではないでしょうか。

ねぇ、もう一度、記憶の糸を手繰り寄せるつもりで、
僕と逢ってみませんか。
お互いに遠く離れた存在だったからこそ、
淡く切ないデ・ジャヴの様に、
わくわくする気持ちを取り戻せる様な気がするのです。