GODZILLAについて


1998年、ハリウッド版のGODZILLAが公開された。日本版のゴジラから離れた全く新しいデザインのゴジラは、新鮮でもあった。一般の評価はあまり高く無い様だが、個人的には、あのGODZILLAを非常に気に入っている。かつて、見た事が無いリアリティの高いゴジラ……。ストーリーも日本の初代ゴジラ程では無いにしろ、大人が十分に楽しめるもので、そのエンターテイメント性の高さは、エキサイティングだった。
しかし、何処か物足りない気がするのは、やはり、日本版と同じゴジラがニューヨークの摩天楼 の間を走り抜ける絵が見たかった、という事だろうと思う。

当初、ハリウッド版GODZILLAは、「スピード」のヤン・デ・ボン監督がメガホンを取る予定だった。彼は結局、彼の考えるGODZILLAには資金がかかり過ぎるという理由等から、製作を降り、代わりに「インディペンデンスディ」のローランド・エメリッヒが監督を引き受ける事になる。そして、彼はパトリック・タトプロスに依頼して全く新しい、新世代のGODZILLAを作りあげるのである。
しかし、実はヤン・デ・ボンが企画していた当初のゴジラこそが、我々が本当に見たかったゴジラなのである。アメリカでは著名な恐竜画家が描いたというそのゴジラは、姿かたちは、ほぼ日本のゴジラそのまま。その上で近年の学術的な側面に基づいて、身体は直立では無く、水平に近くなり、足も筋肉質で少しだけスマートになっている。公開されたハリウッド版GODZILLA程スリムな足では無いが、十分走り回れる形になり、尾も先に行くに従って、ガラパゴス海イグアナの様に縦に平たくなって行く。水中を泳ぐ形を考慮したものだろう。
ここでその図を公開したいのだが、おそらく著作権等が関わるだろう(もっとも私がこの絵を入手したのは、個人のHPからだったが)。そこで自宅にある体高約20cmの初代ゴジラの模型を 写真に撮り、Photoshopで変形・加工し、このゴジラを再現してみた。

これからお読み頂くストーリーは、このゴジラを念頭に描いている。

さて、日本版ゴジラであるが、ハリウッド版公開の翌年、1999年の暮れに、やはりオリジナルのデザインで、「恐ろしいゴジラの復活」として「ゴジラ2000ミレニアム」が製作、公開された。しかし、この作品は全く目を覆いたくなる様なものだった。オリジナルのゴジラはスケッチ、模型の段階迄は、期待十分のものだったが、実際のゴジラスーツになった段階では、コンセプトデザインとは違ったものになってしまっていたし、ストーリーも大人向けとは言えないものだった。
特撮も色々な技法を使っているものの、何しろセンスに乏しい気がする。ゴジラを見る視点・アングルが相変わらずウルトラマンの域を出ていない。
東宝は機会ある毎に、「恐ろしいゴジラ」の復活を企画して来た。1984年の「ゴジラ」、そして今回の「ゴジラ2000ミレニアム」である。しかし、その割に1954年の初代の様な「恐ろしいゴジラ」を描けずにいるのは、ゴジラ自体を得体のしれない怪物として描ききれていないからである。ストーリー・コンセプト自体の問題は勿論だが、ゴジラはそれ自体が多少なりとも人格化してしまっており、自らが明確な意志を持っている様な描かれ方をしている所為も大きいだろう。そこには初代の様に完全な大人向けの映画として製作出来ないという商業的な側面もあるかもしれない。
ハリウッド版ゴジラで感じた、物足りなさを払拭するどころか、益々不満が募ってしまった。

そこで、自分なりの大人の鑑賞に耐えるゴジラ・ストーリーを書く事にした、という訳である。
ストーリーは極めてオーソドックスなものだと思うが、大人の鑑賞に耐えるゴジラの再現を考えた。もう一度恐ろしいゴジラの復活を。原点に戻ったゴジラを狙ったつもりである。