3月のイサキ釣り

懐かしい釣り場では、懐かしい魚が釣れる。ぼくにとっては、大原のイサキがとても懐かしい。いまから15、16年前、大きなうねりの中を春日丸は出船した。まだ、夜も明けていない時刻、岸壁の街灯や船の照明灯はやけに寂しいというのに、乗客だけは非常に元気だ。その頃のぼくは、まだそれほど船には強くなかったので、当然船酔いして2、3時間はキャビンで寝ていた。が、不思議なもので魚が釣れ出すと自然と目が覚めて、体に力が甦ってくる。あの釣り人が持っている精神力は、ものすごい。

  静かに釣るといいらしい

 イサキの産卵期は、夏。5月の連休を過ぎたあたりから乗っ込みのシーズンとなり、入れ食い状態が続くようになる!
 が、3月のイサキは、コマセに狂って入れ食い状態になることは、まだあまりない。
 イサキといえば上品な食味、その上品なイメージ通りのどちらかといえば静かめの釣り、が春のイサキ釣りだ。

  そっと誘うといいらしい

 いまのイサキは、誘って釣るのがいい。コマセも意図的にはまかず、誘いの動作の中で自然にぱらぱらと出す程度がいい。
 クロダイのフカセ釣りのように誘い上げて、アタリがなければサオを下に向けエサを沈め、再び誘い上げる…。
 ゆっくりと、さびくのではなくて、あくまで食い気を誘う。静かにそっと誘うといい。

  タナを見極められるかが勝負!

 タナを絞り込むためには、まず4〜5メートルの範囲を静かに誘いながら探ってみる。25〜30メートルのタナを探る場合、まず30メートルまで仕掛けを降ろし、静かにそっと誘ってみる。イサキがかからなければ、1メートル程度ミチイトを巻きとり、再び静かにそっと…。これをくり返しながら、25メートルまでタナを探る。これがワンセット。
 ワンセット終了したら仕掛けを巻き上げて、コマセを補給する。コマセカゴの中が空になっていたらコマセの出しすぎ、多少残っている程度でちょうどいい。
 エサは、イカ。米粒大に刻んだものを使う。大きいと食いが悪い。なくなっていたり、損傷していたら付け替える。
 積極的にはエサを追わないイサキでも、アタリはかなり明快だ。そして、豪快にサオを引き込んでくれる。ここであわてて合わせると失敗する。向こう合わせで充分だ。心配なら、素早くリールを7〜8回巻いてしっかりハリ掛かりさせる。

  初夏の最盛期には…

 乗っ込みのシーズンに入ったイサキは、どん欲だ。コマセをタナでまき、ハリをコマセの中に入れ、じっと待っていれば全てがOK。それだけで、強烈なアタリがくる!
 イサキ釣りにはまってしまった人は、一度は初夏のあの釣りを経験しているはず。ぼくもその一人だ。
 外房独特の大きなうねりの中、必死にサオを握りリールを巻いた。あの頃は、サビキで釣った。
 懐かしいなあ。

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1997年3月にとあるDailySportsというスポーツ紙に掲載した記事を、手直しして掲載しました。(March 10, 1998)


Updated November 8, 1998 Tadahiro Iwami / e-mail iwami@air.linkclub.or.jp