新しいいのち


初診(1999.1.18)

市販の妊娠検査薬の反応が陽性でした。三連休が明けた今日こそ 愛児センターへ行こうと、いつもよりも早起きしました。 けれども出発時刻が近づくにつれ、出かける気力がなえて いきます。前回の妊娠が困難であることを知ったのが愛児センターで あったため、なんとなく愛児センターへ行くと、悪いニュースを 知らされるのではないかという恐怖感がありました。 (二度目の妊娠と死産を参照。) 一番自分が望んでいるようなお産ができるのは愛児センターだと 思いながらも、遠いからとか、市外なので母子手帳のタダ券が 使えないからなどと文句をつけて、行こうかどうしようかと 迷いました。夫はわたしの「ぶつぶつ」につきあって、 話を整理してくれました。個人の産婦人科医院なら待ち時間が短くて 長男を連れていっても楽だけどお金がかかる、大病院では 待ち時間が長く出産後に新生児といっしょにいられない、また 待ち時間の間に他の人のかぜがうつると困るなどなど。 話合っているうちに、夫立ち会い出産ができ、出産直後に授乳でき、 その後は母児同室で過ごせる愛児センターの長所を再確認しました。 愛児センターへ行く決心が固まり、えいっ、と出かけていきました。

出発する直前に実家の母から電話がかかってきたので、愛児センターで 待ち合わせし、受診中の長男の面倒を見てもらうことができました。 久しぶりに見る超音波のモニタに映ったのは、2.4mmの羊水と、 その中で小さく拍を打っている心臓でした。

今度は「ふつう」の妊娠でした。「ふつう」。

前回「異常」な妊娠だったふたごたちに、わたしは強い愛情を 感じています。ふたごへの執着が強すぎるあまり、あたらしく 宿った「ふつう」の命に対して、よろこびを感じません。 ふたごのことが、わたしの心の中で決着がついていないという ことを実感しました。こういう自分の感情に戸惑い、 おなかの子に対して申し訳ない気持ちです。このまま、 この子が生まれてきたらどうなるのだろうと不安です。

妊娠第8週(3ヶ月)(1999.2.2)

この二週間、少々やけぎみに食べたり、ビールを飲んだりして しまいました。お腹の子が死んでしまっているのではないかと いう不安感が強く、ストレスを感じていたからです。 当然この時期には胎動は感じられないし、つわりもほとんど なし。おなかの中でこどもが死ぬという実体験があるので、 わたしにとって、それは”いつでも起こりうること”なのです。

今日は長男とふたりで受診です。お腹のうえにこどもを乗せた 状態で、内診をうけました。たった二週間の間に、おなかの子はぐっと 大きくなっていました。心臓の脈が力強く感じられます。 ちゃんと生きていてくれたと、安心しました。

診察は短時間で済みましたが、帰宅はとてもとても大変でした。 せっかく街へでるのだからと、受診前に銀行へ寄ったのが最大の失敗 でした。運わるく(?)スピードくじの景品が当たってしまった のです。荷物を背負い、片手で長男と手をつないで歩いたのですが、 フリーだったもう片方の手に景品の紙袋を持つはめになりました。 愛児センターに着くまでは長男が歩いてくれたからよかったのです。 問題は受診後に長男が昼寝に突入してから。

だっこ帯を忘れてしまったので、長男を手でおんぶするしかなくなり ました。リュックと紙袋を片手に持ち、空いた方の手で眠った長男の おしりを支えました。このおんぶがたいへん、背中の長男は、 まるくなりながら、どんどんずり下がってくるのです。11kg程の 小柄な二歳といえども、片手で背負うのはつらい!うんうん、うなり ながら駅へ向かいましたが、悪いことは重なるもの、頼みの エレベーターは無情にも「点検中」。やむなく、地下鉄の改札へ 向かってずんずんと階段を降りていきました。

最後に襲ってきた不幸は、紙袋の崩壊。横浜に到着したところで 把手の片方がビリビリと裂けてしまったのです。眠った子を 背負った上に袋が破けてしまっては、もう歩けません。 高島屋の喫茶室に飛び込みました。折しもおやつタイム。 着飾った奥様や母娘などが優雅にお茶を飲んでいる中、 破けた紙袋をかかえて眠った子を連れて髪を振り乱している わたしは、さぞこの場では浮いているだろうと思いながらも、 長男が昼寝から覚めるまで休ませてもらいました。ああ、しんど かった!

妊娠第12週(4ヶ月)(1999.3.2)

相変わらず、一ヶ月間、不安な気持ちで過ごしました。つわりがなくて 食欲モリモリ。下腹部は少し太ったかなという程度に大きくなったように 感じられ、おっぱいも張ってきました。それでも胎動を感じられる 時期がくるまでは、死んでいるかも、という不安をぬぐえないような 気がします。

診察の結果、心配する材料はなにもなさそうでした。今日は 長男は内診台の上のわたしのお腹の上から、一緒に超音波のモニタを 見ました。「ほら見てごらん、あかちゃんだよ」と話し掛けて おきました。やっと、次回から母子手帳を用意するようにといわれました。

長男は帰宅してからしきりに「あかちゃん、みた。あかちゃん、みた」 というようになりました。医師の解説なしには、何がどうとも判別のつかない 画面ですが、むすこの心に何か残るものがあったようです。 彼が甘えてお腹の上にのしかかってくるような時は、あかちゃんが つぶれちゃうと困るからやめてと説明してきましたが、 何のことだかわからなかっただろうと思います。でも、今日の 診察で、わたしたち家族に異変が生じていることをはっきりと 認識してくれたようです。思えば一年前に妊娠していたときは、 長男自身がまだ赤ちゃんのような状態で、おかあさんのお腹には 赤ちゃんがいると説いてきかせる気もおこりませんでした。 いまでは”赤ちゃん”から”こども”に成長して、すっかり 頼もしくなりました。長男は親がいうのも何ですが、とても 気立ての優しい子です。きっといいおにいちゃんになってくれると 思います。

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