ティラノがバイオリンに興味をもつきっかけになったのは、NHK教育テレビの 音楽の 番組「トゥトゥ・アンサンブル」です。この番組は泰助が大好きな もののひとつで、 テーマがなりだすと、番組終了まで少しも動かずに集中して みています。 徳永二男さんをゲストに招いてバイオリンを紹介した回に、 「ばいん(バイオリン)、 ばいん」といいだしました。べつの回にチェロが 紹介されたときには、チェロをみて 「ばいん」と言っているので、あれは”チェロ”と いうのよ、と教えたら、「ばいん、 ちお、ばいん、ちお」と言いつづけていました。 わが子ながら、それはとても かわいらしい様子でした。
平成10年11月末ごろのこと。サインペンでらくがき帳に絵を描いていたはずのティラノが、 「ばいん、ばいん」といいだしました。みると、サインペンを左右の 手に一本ずつ もって、バイオリンを弾くまねをしているではありませんか!
「ばいん、ばいん」
こんな感じ?
その後、食卓のおはしでも、同じことをくりかえしました。こんなことをされたので、 親のほうは、まいってしまいました。ちょうど、代々木にある楽器店でバイオリンの 展示即売会が開かれ、安くバイオリンを手に入れることができそうだったので、 2才の誕生日のプレゼントに、ということで購入することにしました。
バイオリンを買ってはみたものの、もちろん、よろこんですぐに弾いてくれる、と いうわけではありません。ホームページ用に写真を撮るから、ああやって、 こうやって、ここを持って、とこんなポーズをとらせてみましたが、
えへ。これでいいの?
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よーし、かんばっちゃお!
いつでもこういう具合というわけにはいきません。はじめて楽器を持たせてみた ときに、やれそこを握ってはいけない、やれこう構えろとうるさく注意したら、 ティラノの眉間にしわが寄り、鼻息が荒くなって、イライラしていました。 ティラノ としては、興味があって好きなようにいじってみたいのに、こどもにとって 楽でない姿勢を要求され、いろいろと命令されておもしろくなかったのです。 そのことに気づいて、もう持ち方を教えたりするのはやめました。 自分が中学生の 頃にバイオリンをはじめて持って、やはり細かい注意が多かったのにうんざりした ことを思い出しました。楽器を壊さないようにだけ注意して、あとは ティラノの音楽を 愛する気持ちをそだてるように、好きなときに、好きなように 触っていいよという 態度でいるように心がけています。
まあ、実際のところバイオリンにとっては受難です。 2才のこどもがもつのだから、 最初の楽器が傷付くのは、ある程度覚悟を していますが、楽器を逆さまに置いたり、 弓で床をビシビシたたいたり、ケースに 乗ったりと、こちらが予想しないことを やってくれるので、みているほうは大変です。 購入して2〜3週間のうちに、すでに 数回コマがはずれました。トホホ。
「くっき(積み木)、くっき!」
それでも、こんなふうにケースをおもちゃにしてみたり、なにより松ヤニ(弓と弦を 擦れやすくするために使う)がいちばんお気に入りだったりして、自分のバイオリンを もてたことはよろこんでいるようです。「たいちゃん、ばいん」といいながら、 ちいさい体でよちよちとケースを持ち歩いています。その重さにたえきれず、 最後は ケースごと床にバンッと落としてしまうので、バイオリンの受難は、当分つづきそうです。