アメリカでラボを持ちたい !
テニュアトラックへの道, 2003-2004年版
8/10/2004 交渉に関して、少しだけ加筆。
8/2/2004 応募書類のカバーレターの例文を
載せました! 参考にしてください。
さて、ポスドクになってから、はや5年にもなる私ですが、結構publicationもたまってき たし、いよいよ独立して研 究室をもとう、という気になりました。日本で助手とか講師になるなんていう 気は全くおきないので(これらの職は独立でないし、ラボをもてない)、アメリ カでassistant professor (注) に申し込むことにしました。通常倍率は 100-200倍くらいですから、まあ狭き門です。
さて、テニュアトラックってなんでしょう。大学でテニュアってのは、まあ任 期なしの職のことで、一度とってしまえば、絶対クビにならないんです。テニュ アトラックってのは、まあその準備期間で、普通6 年間いい仕事をしてると associate professor (準教授)に昇進してtenureがもらえます。だめなら、追 い出されます。Harvardは、associate professorがテニュアではないので、12年 かかります。しかもテニュアの審査が異様に厳しくて、全体の10%くらいしかと れないらしいです。他の大学では、たいてい70-80%くらいはテニュアがとれるよ うです。
それはともかく、この手の話しで、日本語の情報ってのは、あまりてにはいら なかったので、書きとめておくことにしました。アメリカでラボをもつぞ、て いう人の参考になれば、幸いです。
注: Assitant professorは、助教授とか講師って訳します。でも、日本とシ
ステムが違うので、うまく訳できません。仕事的には、日本の任期付き助教授
にちかいのではないかな。
1. 2003年9月-11月 Applicationを送る。
だいたい、9-11月に、公募がたくさん出ます。日本とちがって、100%公募で人 を探します。Natureとか、Scienceの後ろにある情報で、テニュアトラック の公募をさがしました。神経をやってるので、Neuronに載ってる公募 も要チェックです。自分でやってることと、fitしそうなところを見付けます。 私は、生物物理、神経科学関係を中心にみていきました。人によっては、何十 個も応募してる人がいますけど、まあだいたいしぼってだしたほうが、いいの ではないか、というのは私の意見です。推薦状を頼むのもあまりたくさんだと 気がひけますし。
私の場合は研究をやりたかったので、研究での評判が高い、大学院大学がいい わけです。州立なら、State university of .じゃなくて、University of ...っ てのが研究のための大学です。でも、どこがよい学校かとかは、あまり知らな いので(Harvardくらいしかしらない)、ボスと相談してだすところをきめまし た。特にMedical school系は、授業が少なくてすむ、という話だったので、ほ とんどmedical schoolばっかりです。あとは、どこに住みたいか、というのも 大事で、私の場合は、東、西海岸が中心です(普通そうだけど)。結局、だした のは、Harvard MCB, UCSF bioenginnering, Duke neurobiology, Johns Hopkins neuroscience, NIH, Uniersity of Michigan MHRI, University of Washington (Seattle) の7つです。
Applicationは、表書き(cover letter)、履歴書(Curriculum Vitae)、論文目
録 (List of papers)、研究計画 (research interests)で構成されます。また、
普通は、3 通の推薦状(recommendation letter)が必要です。場所によっては
教育方針(Teaching philosophy)を要求されますが、私はそういうところは出
さないことにしました。教育に興味がないわけではありませんが、あるといえ
ばうそになります。
Eメールで送っていいところと、そうでないところがあります。
2. 2004年1月-3月 面接 (Job interview)
やったー。よばれた! 面接によばれるってことは、たいていの場合top 6には
いってる、てことです。Duke, Michigan, Johns Hopkins 12月、Washingtonか
らは1 月、UCSFからは2月に招待がきました。Harvardからは、2月にrejectの
手紙が着ました。だいたい良いニュースは電話で、悪いニュースは手紙できま
す。
面接でいろんな人と話せて刺激になるし、違う研究所をあちこちみるのはとて
も楽しいものです。こういうのを通して、今後10年くらいの範囲で自分がやり
たいこととかも、はっきりしてきます。
日本人(というか私の)の発音は、アメリカ人にとって聞き取るのが大変なので、 ゆっくりと話すこと、語尾をはっきりいうことが大事です。私の場合は、文章 の最後で発音が弱くなる傾向もあって、これもよくありません。子音が弱くな りがちなので、子音を強く言う練習もしました。特に単語の最後の子音は弱く なりがちなので注意。ESL(English as second language) の教師がみてくれて助かりました。
<追記>その後、Johns hopkinsからきたポスドクに話しをきいたところ、JHU にいけなかった理由は、やはりセミナーがいまいちだったから、ということで した。うーん、やはり英語の壁は厚いのか。特に学生やフィールドが違う人に アピールするのは難しかったようだ。
3. 2004年4月 2次面接 (Second interview)
2次面接というのは、呼ばれた段階で、大学側はもうオファーをだす準備をし てます。少なくとも、ものすごく興味をもってるということです。この段階で 私の場合は、Duke大学だけが残りました。あとは、だいたいrejectの手紙が 来るか、無視されるか、という感じでした。 2次面接では、売り手と買い手の立場が逆転します。そして、贅沢な接待旅行 のような感じになります。普通は家族を連れて行きます。今回は、Dukeしか行 かなかったので、Dukeで何があったのか、という話をすることにします。
初日:ローリー探検ツアーおよび日本人のポスドク、Kさんの家へ。
2日目:不動産家で、家の値段などをチェック。教授たちとディナー。 ディナーは妻同伴。大学がベビーシッターを手配してくれた。
3日目:Chalk talk。 これは重要です。これでうまくいったら、採用、といわれ ていました。黒板の前で、今後どんな研究をしたいかを話します。1時間半く らい。
そして、翌々日には、Chairの人から電話があって、全員一致で採用、という ことを知らされました。めでたし、めでたし。
4. 交渉 (Negotiation)
正式なオファーレターをもらう前に、大学側からオファーを出す準備があるこ とを電話でいわれます。このときからオファーにサインをするまでは、あなた (私?)がもっとも強い立場にある期間です。基本的には、"Everything is negotiable"ですから、立場を利用していろいろ条件をよくしてもらいます。 ただし、サラリーだけは大学で決まってしまってることも多く、うまくはいか ないかもしれません。スタートアップパッケージに関してはかなりの交渉がき きます。スタートアップパッケージは、最初グラントをとれるまでの2年分の 予算、1年分のTeachingやサービスの免除です。スペースが十分あることを確 認するのも大事です。
私の場合は、2光子顕微鏡が必要だったので、高めのスタートアップの予算が 必要でした。これは、Chairの人が特別に予算を作ってくれました。値段はこ こには書けませんけど、基本的に要求したもの、全てがもらえました。ラボの スペースは、1000 ft sq. (100平方メートル)で、まあ最初としては、十分で しょうか。
交渉においては、自分を安売りしないことが重要です。自分が行く大学の平均 のサラリー、スタートアップパッケージ、ラボのスペースなどは、よく調べて おいたほうがいいでしょう。また、ラボスペースに関しては、数字だけでなく、 access できるfacilityも重要です。例えば、Cold roomやTissue culture roomなどは、自分の部屋の中につくる必要がある場合とそうでない場合では実 質的なスペースに大きな違いができますから、チェックする必要があります。 家の高い場所からオファーをもらった場合は、家を買うお金のサポートを交渉 する事もできるようです。
ただし、交渉も やりすぎは禁物です。結局交渉してる相手は、将来の自分の 上司です。ラボのセットアップや、Tenureの審査のときに、味方になってくれ るのはずの人と悪い雰囲気になるのは、将来のためになりません。
下に参考までに、PhDのみの人が職をとった場合の統計を載せておきます (Making the right moveより)。
平均年間サラリー : $79,190 (範囲$60,000 - $100,000)
平均スタートアップ: $508,200 (範囲$200,000 - $1,075,000)
平均ラボスペース : 1200 ft2
5. 役にたつリンク