赤ちゃんがやってきた!


どのようにしてメイコがやってきたか

ブロントは3人姉弟の中で育ったので、自分たちもこどもは3人ほしいと 漠然と思っていました。ところが2人産んだところでトリケラがアメリカで 職を得たため、日本を離れることになりました。大企業の駐在員が外国暮しを するのとは違い、渡米前の英会話の勉強も、生活の知恵を授けてくれる ”前任者”なるものもなく、何から何まで自分たちで最初からやらなくては なりませんでした。こどもたちが本当に具合が悪いときに、医師の診察の予約を とりたいのに「市販薬をのませておけ」といって看護婦に診察を拒否されたり、 保険の適用期間寸前に健康診断をうけたために、簡単で、延期しても差し支えの ない健康診断のために2万5千円くらい取られたりと、医療、保険システムの 違いや言葉の壁のために困ってしまうことがたくさんありました。そんな わけで渡米当初は、こんな中で3人目を産むのはとても無理だとほとんど 諦めていました。

お友達の赤ちゃんを目にして「ああ、わたしももう一人赤ちゃんがほしいな」と 思うことがあっても、もう産むまいと自分に言い聞かせる日々が2年ほど続き ました。近所に中国系の赤ちゃんジェニファーが生まれても、韓国人の お友達のサーヤンが妊娠しても、自分が産もうという決意には至りま せんでした。ところが、夏も終わりに近いある夕べ、トリケラのボスの カールの家でバーベキューパーティーがありました。そこに来ていた 生後2ヶ月のカタリーナをだっこしてしまったのが運のつきでした。 アルゼンチンからきた家族に生まれたカタリーナはほとんど黒に近い 茶色の髪に、くりくりにカールした長いまつ毛を持つ本当にかわいらしい 女の子です。「ちょっとだっこさせて」なんて言って抱いてみたら、 カタリーナ・マジックにかかってしまって、「赤ちゃんがほしいのに あれこれと考えて躊躇していたら、いつか後悔する時がくるのかも しれない。今入っている保険は出産までカバーしてくれるから、 どうせ産むなら、トリケラの職場がかわって保険もかわってしまう前の ほうがいい。産むなら今だ!」とすっかりその気になってしまったのです。

ブロントの憂うつ

過去に妊娠したときには基礎体温を計る習慣はありませんでしたが、 今回は毎朝計っていたので、メイコが”できた”その日にすぐに それとわかりました。ほしいと思って授かったメイコだったのに、 3人目を諦めた上で立てていた将来の計画を変更しなくてはならない ことが必要以上に残念に思えて、ひどく憂うつになってしまいました。 「ああ、これキャンセルできたらいいのに」「タイムマシンで あの晩にもどって、やめたほうがいいよって自分に忠告できたら いいのに」などと考えたり、「いや、今朝の体温が高かったのは ふとんを掛けすぎていたからだ」などと妊娠そのものを否定して みたりしました。基礎体温表をつけていなかったら、次の生理が こなかった時点で妊娠を疑うのに、それよりも半月も前に妊娠に 気づいてしまったので、うつうつと思い悩む時間が余分に 長くなってしまいました。時期が早すぎて市販の妊娠検査薬でも 確認がとれないことに加え、長男がキンダーガーテン(5才のこどもが 通う幼稚園。小学校入学前の準備期間にあたるけれども、 実質的には学校教育のはじまり。はじめてお弁当を持たせ、 親元を離れてスクールバスに乗せて学校へやるので、親に とっても子にとっても大きな節目となる)に通いはじめ、 長女も予定していた幼稚園ではな急に保育園に預けることに したため、生活上の変化が大きいのに気持ちがついていかれず、 なんだか気分もよくなくて、9月はつらい1ヶ月でした。

お医者さん選び

次の生理の予定日を数日過ぎた頃に妊娠検査薬を使ってみた ところ、陽性の反応がありました。むむ、やはり!いよいよはじめて アメリカの産婦人科にかかるときがやってきました。 娘の妊娠のときに、産院で妊娠そのものは確認できたものの、 時期が早すぎて赤ちゃんの様子がよくわからなかったため、 また2週間後に診察を受けにいかなくてはならなかった経験が あるので、お医者さんにいくのはもうちょっと後でもいいか、 ということにしました。

でもお医者さんにいくのを少しでも延期したい本当の理由は別の ところにありました。どうやってお医者さんにかかっていいのか、 わからなかったのです。”アメリカでは具合が悪いときにはまず プライマリ・ケア・ドクターにかかるべし”と聞いているけれども、 妊娠しているときに内科にいっても仕方ないし、どうすればいいの? アメリカの人には常識であろうささいな質問を、英語でしなくては いけないので大変気がひけるけれども、いやいやながら、保険会社に 電話をかけました。「妊娠したようだけれども、プライマリ・ドクター にまずかかるべきでしょうか、それとも直接、OB/GYN(オービージーワイエヌ) :産科医obstetrician(アブステトリシャン)と婦人科医gynecologist (ガイナカラジスト)の略、にかかっていいのでしょうか。」 OB/GYNに直接かかってよいとの返事に、ほっと一安心しました。 なぜなら2年間のアメリカ生活で、いままでに一度もプライマリに かかったことがなかったからです。プライマリにかからなくては ならないとなると、知らないお医者さんを渡り歩かなくては ならないことになり、とても気が重くなってしまいます。

さて、実際にかかるお医者さんを決める段階になり、次にかける 電話は、近所のぺギーの家です。ぺギーは御年40才、去る7月に 前述のジェニファーを出産したばかりです。彼女の妊娠中に2度、医者を変え、 最後は助産婦さんに赤ちゃんを取り上げてもらった人です。 彼女が最初にかかったのは、この地域では人気がある ドクター・ワグナー。帝王切開を勧めるので彼女はこの医者を避けました。 次にかかったのは中国系の年の頃40才前後の女医さん、ドクター・ チュー。優しいし、過去に帝王切開経験があり、高齢であるぺギーにも 自然分娩のチャンスをくれるというので彼女は気にいっていました。 最後にたどりついたのは、ここから車で1時間ほどの距離にある ストーニー・ブルックという大きな医療の街の助産婦さん。 遠いところにいる助産婦さんを選んだのは、ドクター・チューに問題が あるからではなく、その助産婦さんがお友達だったからだという ことでした。ストーニー・ブルックまで1時間もドライブすることは わたしには考えられませんが、ドクター・チューは車で15分の ところにオフィスがあるということでしたので、ぺギーに ドクター・チューの名前と電話番号を教えてもらいました。

ドクター・チューに電話する前にしなくてはならないのは、 我が家で加入している保険会社がドクター・チューにかかった費用を カバーしてくれるかどうかです。保険会社が提携していない お医者さんにかかると、費用は自己負担になってしまいます。 どの医者が提携しているかそうでないかの確認は、電話ではなくインターネット で簡単にできます。英語で、しかも相手の様子が見えず、自分の身ぶり手ぶりも 通じない電話での会話はいつも疲れるので、しないで済むのならそれにこしたことは ありません。ほっ。幸いドクター・チューはわたしたちが加入している 保険会社を受け入れていました。ドクター・チューの電話番号もオフィスの 所在地の地図もインターネットで確認できました。

帝王切開の後の自然分娩

現在3才の長女を出産したとき、逆子だったために、帝王切開をしました。 (当時なぜ”帝王”切開というのか知りませんでした。英語ではCesarean section (operation)シーセリアン・セクションとか C-section:シーセクションという のですが、ジュリアス・シーザー Caesar がこの方法で生まれたという由来が あるためだと、アメリカに来てから知りました。ちなみに逆子は breech といいます。余談ですが"e"と"a"をを間違えるとbreach、約束などを破ることを意味します。 もう一つ似ているのはbleachで、"r"と"l"の違いで漂白剤になってしまいます。) 「経産婦はお産が軽くてすむ」といわれているのを体験できずに残念に思いましたし、手術の後、赤ちゃんをお腹にだっこできないため授乳が楽しくなかったのと、 おむつ替えなどの基本的な世話を看護士さんにしていただいていたために 第一子のときと比べて愛着がわくのに時間がかかったという不満も残りました。 そこで今回は、いつ陣痛がくるかというスリルと、ズルリンと赤ちゃんが 出てくる快感をふたたび味わいたくて、リスクが低い限りにおいて、自然分娩に トライしたいという希望を持っています。

帝王切開の後の自然分娩を Vaginal Birth After Cesarean Delivery (VBAC:ヴィーバック)と言います。一度切開をしている子宮は、次の妊娠で陣痛を 迎えたときに、そのストレスに耐えきれずに避けてしまう危険があるとの ことです。前の切開が縦向きの場合はそのリスクが5%、横向きの場合は1% あるのだと説明を受けました。子宮の切開の向きは、体の表面の傷と必ず しも一致しないので、前の出産のカルテなどで、どのように手術が行われた のかを確かめる必要があります。






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