人前で化粧するお嬢さん

病院の待ち合い室のいすに座っていたら、となりにドスンと かばんを置いた人がいた。二十歳そこそこの女性だった。 しばらくして気が付くと彼女は人目もはばからずに、メイクをはじめた。 気になったけれども、そのうちやめるだろうと思って無視した。 でも彼女はやめなかった。ちょっと筆を加えては、飽きずに鏡に 見入り、またちょっと筆を加える。延々と続けた後、パタンと コンパクトを閉じたので、ホッとした。するとまた別のアイテムが 登場して、ちょこちょこ、じー、ちょこちょこ、じー、と やっている。ムラムラと注意したいという気持ちがわきおこるのを 懸命にこらえた。すると化粧品をかばんにいれてくれた。 ああ、よかった!と思う間もなく、口紅がでてきた。あ〜あ。

誰もおかしいって教えてあげないからああなんだ。若者が変なのは 大人の責任だ。注意しなかったら直らない。そう思ううちに がまんできなくなった。「ちょっと、すいません。お化粧は 人に見られないようにするもの、うんぬん。だから続きは お手洗いでなさったら?」と笑顔まで添えてやさーしくやさーしく 説明した。正面から見たら、とってもかわいらしいお嬢さんだった。 「はい。」と答えた声もとてもかわいらしかった。でも彼女は その場で化粧をつづけた。わかってねーじゃねーか!と無性に 腹がたったが、それ以上は何もいえなかった。 化粧姿を人に見せない、というのは、もう古いの?('99.2.24記す)


読んで下さった方からのコメント

さて、人前で化粧するお嬢さん読みました。 うーん。多いですね、最近。 青年期の若者は、外的制約から逃れようと する無意識の行動が働いたりするのではないでしょうか? だから、時として社会の常識に反抗してみたりする。 たぶん、その女性、心の中ではどきどきしていたと思いますよ。 やっぱり注意されたという気持ちはあったと思います。 他者の視線は気になるものの(この年は異常に他者の視線が 気になる時期ですよね)、社会の常識にも反抗して 自分の思い通りの行動もしたい(ここでは化粧すること)という 中途半端なプライドがあったのではないのでしょうか? それにおそらく、誰かに注意されたいという気持ちもあったかもしれ ません。私の教えている学生は、やはり授業前、中、お化粧をする 女の子がいます。注意しないで、無視しているとエスカレートする のですが、注意すると、結構嬉しそうに、恥ずかしそうに止めたりします。





ご意見、ご感想は こちらまでお願いします。
E-mail : hiikoysd@air.linkclub.or.jp
メールがこなくてさびしい思いをしています。
おたよりお待ちしています!