○たまにっきロングアイランド編○

主な登場人物
夫=トリケラ(トプス)、妻=ブロント(サウルス)
長男=ティラノ(サウルス)、長女=アパト(サウルス) (注:ブロントサウルスとアパトサウルスは同じ恐竜の別称です。)

一年のうちで一番よい季節の到来。2台目の車を購入して
ロングアイランドの自然を楽しんでいます。



<平成13年7月>

7月4日
アメリカの独立記念日。ロングアイランドのお金持ち(ケーブル会社の オーナー)が自費で花火を打ち上げるという。昨年ボストンで インディペンデンス・デイを過ごしたトリケラは、アメリカの花火は 日本のとは感じが違うよと言っていた。けれども、夜9時頃に トリケラが勤める研究所内の浜辺へ出かけて眺めてみると、それは、 日本でみる花火と同じだった。「花火」と聞いて、線香花火などを 手に持つ、小さな花火を想像したティラノが「ねえ、あの花火 どうなっちゃってんの?いつ花火やるの?」と不満を訴えていたのには 笑ってしまった。でもそれも昨夏に体験した花火を覚えているから こその不満であって、よくぞ一年前のことを記憶していられるまでに 成長してくれたものよと、嬉しく思った。

7月12日
アパト、はじめてお料理のお手伝い。ピーラーを使って カレー用の根菜の皮をむいた。

7月14日
トリケラの勤務先所有の敷地内にある”バンバリー”のビーチに遊びに行こうかと 水着に着替えているところへ「ピンポーン」。大家さんのダンナさんの ミスター・ドーラン登場。水着のままで出るのは恥ずかしかったので (ビーチでは当たり前の水着姿、これが家の中だと不似合いなのよね) トリケラに出てもらった。がさごそと新聞の音がする。彼はよく、日本の野球選手や 日本食のレストランなどが話題になっていると、新聞を持ってきて 見せてくれる。今日の話題は、地元の海が細菌で汚染されているというものだった。 何でも雨が降った後は、動物のフン(とりわけ カナディアン・ギース;緑、白、茶色の毛の大きながちょう。公園などで 身近に見ることができる。そこ、ここにフンを落としていってくれる)などが 海に流れていってしまい、細菌の数が多くなっているとか。 プールじゃないんだからもともと海は汚いさ、とはいっても、 バクテリアの写真入りの新聞紙面のおかげで、すっかりいやになってしまった。 南側の外海はきれいなのだからと、ロングアイランドを縦断して ジョーンズ・ビーチという大きな海水浴場へ行くことにした。

わー、北側の海とちがって、きれいな砂!貝殻がほとんど混ざっていないくて、 まるで濾して粒をそろえたように滑らか。高い波がどどーんと押し寄せるのに 怖じ気付いてしまい、「誰も泳いでないよ」「今日はそんなに暑くないし」と 言い訳をしながら、だらだらと砂の上に身を横たえた。「おかあさん、一緒に 穴掘って」というこどもの要求を無視しつづけること約30分、寝るのにも 飽きて、穴掘りに参加することにした。これが始めてみると面白い。 となりで黒人のおにいさんが、全身が埋まるほどの深い穴を掘っているのに 刺激されて、わっせわっせと掘りつづけた。そうするうちに日ざしが強くなって きたので、本気で寝入っていたトリケラも起きてきて、泳ぎに行くことに。 トリケラとティラノが連れ立って歩き出すと、アパトも、わたしも連れていって とばかりに「あーん、あーん」と手をのばす。わたしは荷物番として残って いたが「ブロントもおいでよ。すっごく水が冷たいよ」と心底楽しそうな 表情でトリケラがもどってきたので、貴重品をもって、波打ち際まで 行ってみた。海に入っているのはこどもばかりで、水にはいっている大人は ほとんどいなかった。小学生とおぼしき5、6人のこどもたちは、 きゃーきゃー言いながら、高い波を体にぶつけて遊んでいた。表情がひきしまって いるので、さぞかし水が冷たいのだろうと思った。波の勢いがほとんど なくなったようなところで、ほんの少しだけ足を濡らしてみたら、その 冷たいこと、冷たいこと。夏場にレストランで出される、氷が多いために 冷え過ぎてしまったお冷やのような、きりりとした冷たさ。よくこんな 海に入れるなあ、こどもは元気だ。トリケラに抱かれたアパトに目をやると 半身水浸しになっている。海の水を吸ったおむつと半ズボンを身につけて、 固まった表情。「トリケラったら、いやねえ。こんなに冷たくなっちゃって、 かわいそうにね」と話し掛けながら着替えをさせていると「うん、うん」と 返事。バスタオルで覆ってだっこすると、じっとだまって抱かれている。 よほど寒かったのだろう。こんなときは本当に愛おしい。やがて戻ってきた トリケラ。さて帰るタイミングかなと思ったら、「眼鏡もってて。さっき かけたまま泳いじゃった!」だって。「げっ、まだ泳ぐの!?」と思わず 言ってしまった。「あ、もう帰る?じゃあ、ティラノを連れてこよう」と 言って走っていたその背中のさびしそうなこと。もっと遊びたいと 書いてある。ごめんねー。だってトリケラが疲れすぎると、わたしが運転を かわらないといけなくなっちゃうから、と心の中で舌をだす。 戻ってきたティラノもいい表情をしていた。「水が動くからおもしろい!」 海ははじめてではないのに、波を「水が動く」と表現するとは。内海とは 違うスケールの大きさを感じたようだ。ここの冬はひどいけれども、 夏は自然を楽しめて、本当にいいところだなあ。

7月17日
YMCAのサマーキャンプで、今週から”キンダーダンス”でダンスを習う。 先週までの”プレイキャンプ”よりも開始時刻が15分早いことを すっかり忘れ、遅刻させてしまった。到着してみたら、バレエの レッスン着に身をつつんだ女の子がずらり。ありゃ、バレエのクラスに 間違ってきてしまったかと思ったので先生に尋ねたけれども、どうやら この教室でいいみたい。うちのティラノはふだんのTシャツに半ズボン、 運動靴という出で立ちだけど、いいのかしらとドギマギしていると、 なんとティラノと一緒に英語のレッスンを受けている中国人のレイの 姿を発見。よかった、レイも普段着だ!なんだか予想していたのと様子が 違っていて落ち着かないけれども、いつまでも親が教室にいてもいけない ので "Have fun!" といい加減な挨拶をして、息子を置き去りにしてきた。 後でどんなことをやったのかと尋ねても「レイとあそんだ」といったような 返事しかかえってこなかった。

7月19日
ティラノ”キンダーダンス”の2回目。今日はダンスを楽しめた様子。 「波ってねえ、こんなふうに、ざざざざーってね。それでざぶん!って なってね、それでざざざざーってなってね、それから‥‥」と わたしが夕食を作るかたわらで、いつまでも波を体で表現して踊りつづけた。 なるほど、体をつかって、何かの真似をする(表現する)というねらいで、 ここロングアイランドでは身近な”海”がテーマというわけだ。 近頃、体の発達がめざましいティラノはきっと”キンダーダンス”を 喜ぶだろうと思って選んだのだけれども、とても気に入っているようなので 嬉しく思った。

7月20日
今日は初めて、トリケラの勤務する研究所所有のプールへ行ってみた。 3才以下の子供は遊泳禁止とのこと、あら、アパトは水に入れない。 ティラノにうき輪を与えてプールで遊ばせ、アパトは手を引いて プールサイドを歩かせた。早い時間に到着したので、ほかには誰もいない。 たった一人で水に浮かんでいるティラノは、「一緒におよごう」と せがむが、アパトが水に入れないのでかなわず。ごめんね。

やがて別の家族がやってきた。小学校中学年くらいのおねえちゃんと 幼稚園生くらいにみえる弟くん。ティラノは目を輝かせて、"Hi!"と 自分から声をかけた。弟くんは"How old are you?" ティラノが "I'm four." と答えると、"I'm five, so I'm older than you." などと 威張ってみせていた。ティラノがうき輪につかまってユラユラしながら "Come on!" と言っても知らんふり。ティラノがあんなにがんばって アプローチしているんだから、少しは相手にしてくれないかしらと 思ってみていると、おねえちゃんと一緒に見事な飛び込みを披露。 それも、5回も6回もくり返し。こりゃ、相当に泳ぎこんでいるんだな。 レベルが違いすぎて、ティラノと遊べるわけがない。ティラノも 驚いたようで、「おかあさん、おかあさん、大変。おともだちが お水にもぐっていっちゃうよー!」「あの子は泳ぐのがとっても上手 だから、ああいうことをしても大丈夫なんだよ。」「じゃあ、ぼくも 眼鏡(ゴーグル)をして、お水の中がどうなってるかなって、 見てみたいんだよ。」「あれは難しいから、たくさん、たくさん、 練習しないとできないの。」「だってぼく、とっても、とっても 泳ぐのが好きだもん。」30分以上も水に入っていたせいで 紫色のくちびるになりながらも、1才年上の男の子のやることが うらやましくて仕方がない。大好きなボトル入りの天然水を 飲ませてやるぞと誘っても水から出てこず、最後には、海やプールの 事故はいのちにかかわるのだから親の指示がきけないのなら 金輪際連れてこないぞと脅したら、やっとこさプールから あがった。ちびっ子を連れているのでやむを得ないけれども、 心ゆくまで泳がせてやれなくて、わたしも残念だった。

7月22日
アパト、自分のことを「のーちゃー」と。

7月27日
アパト語録。「おかさん、いくよ(お母さん、行くよ:ボールを投げるときに)」、 「貸して」、「なあに、おかさん(何?お母さん)」。

7月28日
トリケラと同じ棟で働くUさんのお宅で、バーベキューパーティー。 日本人研究者全員集合!と聞いていたが、中にはフランスから来ていて 合気道を習っているという白人さんも。彼はお手洗いの場所をわたしに 尋ねるときに「すみません、おてあらーいはー、どーこでーすかー?」と 流暢に日本語を話していたけれども、日本語で返事をしていいのかどうか わからなくて、結局、英語で答えた。U家のお手洗いはその後、 流れなくなったり、鍵があかなくなって人が閉じ込められたりと、 トラブルが続いた。幽閉された男性が「どないしよう」と お手洗いの中からため息をもらしていると、大阪出身のU家ご主人が 「そこの窓からでてきてください、あははは」と答えていた。 関東出身のわたしだったら、「すみません、すみません!!」といって 冷や汗をかいてしまうような場面。こういうときには、関西の方の おおらかさが本当にうらやましくなってしまう。

我が家のまわりではセミの声が聞こえないので、ロングアイランドには セミがいないのかと思っていたが、U家ではうるさい程の鳴き声なの だという。そういっている間に、セミの幼虫が外にでてきた。 パーティーの間にもどんどん殻を脱いでいた。こどもたちは興味津々。

7月29日
アパト語録。「ちょいえ!(それ!のつもり:ビーチで石を投げるときに)」、 「じょーじゅー(上手:くるくる回って踊った自分をほめて)」。






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