バロック音楽との出会い


我が家では夫婦でバロック音楽をたのしんでいます。そもそもわたしたちが出会ったのが 大学のサークルで、バロック音楽を演奏する団体でした (バロックアンサンブルのホームページへ)。 夫はチェンバロ(大雑把にいえば、ピアノの祖先のような鍵盤楽器)を、わたしは ヴァイオリンを弾きます。日常の雑事にまぎれて、楽器を弾くことはあまり多くありません でしたが、息子の2才の誕生プレゼントに子供のサイズのヴァイオリンを購入したのが きっかけとなり、我が家ではふたたび音楽がはやっています。というわけで、 勉強もしないで夢中になっていた、青春時代の思い出をふりかえりながら、 バロック音楽について、いろいろとご紹介したいと思います。

わたしが大学一年生の秋頃のこと。サークルの先輩方がひらいたコンサートに 誘われ、行ってみました。休憩時間であったか、演奏会終了後であったか 忘れてしまいましたが、くつろいだ雰囲気のなか、先輩がワインを片手に 楽器を弾き始めたのをみて、たいへん驚きました。いわく「バロック(音楽)は 宮廷の音楽で、王侯貴族が食事をとりながら楽しんだような音楽だから、 ワインを飲みながら弾くのもいいものですよ。」とのこと。 こどもの頃に母親につれられて演奏会へいったときは「じっとしていなさい。 しずかにしなさい。」と叱られてばかりいましたので、(いわゆる)クラシックを 聴くときは、身を固くして畏まって聴くものだとばかり思っていました。だから、 その言葉はわたしにとっては衝撃的でした。そして、ほんのりほほを 染めながら演奏するその雰囲気が、とてもおしゃれに見えたものです。

サークルに入部したのと同じ頃に、わたしは数カ月ほど、市民オーケストラにも 所属していました。こちらには、わたしの居場所は見つかりませんでした。 なぜなら、セカンド・ヴァイオリンのパートが難しすぎて弾けなかったから です。原則としてパート譜は持ち出し禁止、練習は週に一回だけ。他の団員は 特別な練習をしている様子もありませんでした。なぜ曲がどんどん仕上がって いくのか不思議でした。そもそも初めて練習に参加したときに、自分には 勤まらないと気づくべきでした。曲の頭から重音。「きゃー、どの音???」 なんて迷っているうちに、白い指揮棒がビシッとふりおろされ、 ジャガジャーーーン!(曲はマイスタージンガー)わたしは何も弾いていないのに、オーケストラの豪壮な響きが練習場内を満たしていました。その後、 運良く(?)体育のバレーボールで突き指をしたので「弓が持てません」 といって定期演奏会の舞台にはのらず、そのまま辞めてしまいました。 (われながら情けない話です。これで、わたしがヴァイオリンを好きな だけで、上手ではないことをご理解いただけるかと思います。)

他方、サークルのバロック・アンサンブルは楽しくて楽しくて仕方が ありませんでした。初めての定期演奏会で弾いた曲は、J.S.バッハの ヴァイオリン協奏曲(BWV1042)でした。オーケストラと違って ここでは、わたしが弾けていなければ、ちゃんと曲がストップしました。 協奏曲とはいっても、バックはファースト・ヴァイオリン2人、セカンド・ ヴァイオリン2人、ヴィオラ1人、チェロ1人、チェンバロ1人の 総勢7人。人数が少ないのでアラは目立ちますが、それぞれが頑張れば その分だけ曲がまとまっていきました。自分がメンバーの一員であることが 実感できて、とてもわくわくしました。

バロック音楽の魅力について、弾き手としては、比較的少人数で演奏できるため に仲間を集めやすいこと、ロマン派や近現代の音楽よりは技術的問題が 少なく、音楽経験が浅くてもなんとか演奏に参加できることが挙げられると思います (ただし決して、簡単な音楽だとか、つまらない音楽という意味では ありません)。

聴き手としては、演奏者と聴衆の距離の短さが魅力だと 思います。演奏会場での物理的な距離はもちろんのこと(たいていは 室内楽用の小ホールで演奏されます)、心理的にも近く感じられます。 それは、ある程度定着した感はあるとはいえ、クラシックの世界のなかでも バロック(あるいは古楽)というジャンルが、まだまだ新しいからかもしれません。 第一線で活躍している演奏家は、伝統的なクラシックと比べて若いひとばかりです。 伝統や格式といった高い壁ができていないことは、演奏者と聴衆の関係を新鮮に 保つためにとてもよいことだと思います。やはり音楽は、畏まって聴くよりも、 つまらないならつまらない、感動したなら感動したで、演奏者と聴衆が 互いの反応を感じ取れた方が楽しいのではないでしょうか。




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