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平成12年(行ウ)第45号 条例無効確認請求事件(以下「甲事件」という。)

平成12年(行ク)第55号 条例無効確認請求事件(以下「乙事件」いう。)

平成13年(行ウ)第98号 損害賠償請求事件(追加的併合事件。以下「丙事件」という。)

                                                     

 

      判 決 要 旨

  (文中の頁数は、判決書の頁数を示すものである。)

 

 

  甲・乙・丙事件原告       明 和 地 所 株 式 会 社

                  (以下「原告」という。)

  甲及び丙事件被告        国     立     市

                  (以下「被告国立市」という。)

  乙及び丙事件被告        国立市長 上 原 公 子

                  (以下「被告国立市長」という。)

  被告ら補助参加人        学枚法人桐朋学園ほか7名

 

(事案の概要)

  被告国立市が都市計画法20条に基づき平成12年1月24日付けで告示した「中三丁目地区地区計画」(以下「本件地区計画」という。)及び被告国立市長が建築基準法68条の2に基づく建築物の制限に関する条例として同年2月1日付けで公布した「国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」(以下「本件条例」 という。)のうち、建築物の高さの最高限度を20メートルとする部分が、原告のマンション建築計画を妨害する意図でされた点等において違法なものであるとして、次のとおり、7つの請求がされている事実である。

(請求1ないし4一甲事件及び乙事件)

  被告国立市(甲事件)、同国立市長 (乙事件)に対し、それぞれ

   −(主位的に)抗告訴訟として、

      本件地区計画及び本件条例の無効確認(主位的)

                  又は取消し(予備的)

   −(予備的に)当事者訴訟又は無名抗告訴訟として、無効確認

(請求5一丙事件)

  被告国立市に対し、4億円(原告所有不動産の価格下落分3億5000万円、原告のマンションが違法建築となった旨宣伝したことによる信用毀損分5000万円)の損害賠償

(請求6及び7一丙事件)

  被告国立市長に対し、本件条例の公布行為の無効確認(主位的)

                     又は取消し(予備的)

(争点)

(1)請求1ないし4、6及び7に係る訴えの適法性(争点1)

(2)請求1ないし4、6及び7につき)本件地区計画並びに本件条例及びその公布行為の適法性・有効性(争点2)

(3)(請求5につき)被告国立市の要任原因(争点3)

(4)(請求5につき)原告の損害(争点4)

 

1(争点1[請求1ないし4、6及び7に係る訴えの適法牲]についての判断【29頁−35頁】、争点2についての付記)

(1)本件地区計画は、抗告訴訟の対象となる処分性を有する行為とは認められないから、請求1ないし4に係る訴えのうち本件地区計画の無効確認又は取消しを求める部分は、その被告適格を検討するまでもなく、いすれも不適法な訴えである。

(2)本件条例の無効確認又は取消しを求める部分が全く一般的に本件条例が無効であることの確認を求めるものであるとするならば、同各請求に係る訴えは、いずれも具件的争訟性を欠き、不適法なものである。

 また、原告が本件条例の制定によって受けた経済的不利益によって既に倒産の危機に直面しているなど、上記のような不利益処分を待って本件条例の効力を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがある等の特段の事情の存在は、いまだこれを見出すことができず、原告が被告国立市に対して併合提起している損害賠償請求によって、その経済的不利益は補填されるものと考えることができるのであるから、あえて現時点において本件条例の無効を確認させる必要はないというべきである。

(3)条例の公布行為のみを捉えて、これを抗告訴訟の対象とすることはできないし、本件条例の制定行為としての公布処分の無効確認又は取消しを求める訴えは、その訴訟形態及び被告適格の有無を問うまでもなく、訴えの利益を欠く不適法なものであることは前記(2)に判示のとおりであり、本件条例の公布行為の無効確認又は取消しを求める請求6及び7に係る訴えは、いずれにしても不適法である。                            

(4)よって、請求1ないし4、6及び7に係る訴えはいずれも不適法なものであって、却下を免れず、したがって、争点2については判断の要をみない(2(1)の記載は、争点2の観点ではなく、国家賠償法上の違法性の有無の観点に限られるものである。)。

 

2(争点3[被告国立市の責任原因]についての判断[35頁一52頁])

(1)本件地区計画の決定及び本件条例の制定についての被告国立市の責任

 本件地区計画及び本件条例については、被告らも、その主張において、原告の本件建物の建築計画がきっかけとなって本件地区計画の決定及び本件条例の制定という被告らの対応がされたものであることは否定していない。

 被告国立市長がこのような拳に出たのは、大学通り周辺の景観を維持することを目的とするものであり、このことのみに着目すると、多くの国立市民の共感に支えられた行動とみることができる。また、良好な景観をできる限り保持することが望ましいことについては一般的かつ抽象的には多くの国民が共通して認めるところであると思われる。

 しかしながら、保持することが望ましい良好な景観が具件的にどのようなものを意味するかについては、いまだ国民の間に共通の理解が存するとはいい難いし、まして、具体的な法令上の規制がない場合にまで、景観の保持の観点から私有財産権の行使が制約されるとの考え方は一般的なものとはいい難い。したがって、景観保持の観点から新たな法的規制をする際には、その規制内容が適正なものか否かに加えて、その規制が既存の権利者にいかなる影響を及ぼすものかを慎重に検討することが必要である。このような観点からすると、本件地区計画の決定及び本件条例の制定は、本件土地についての既存の権利者である原告が高層マンション建築のために多額の投資をしている点を無視しているばかりか、その行動を積極的に妨げようとしている点において、景観の保持の必要性を過大視するあまり、既存の権利者の利益を違法に心外したものというほかない。

 また、行政の一貫性という観点から検討するに、本件土地は、行政上の規制の観点からすると、その北側までの大学通り沿いの土地とは正反対に、中高層マンションの適地とされ、建物の高さ制限もされていなかったのであるから、原告が容積率の許す限りの高さの分譲用マンションの用地としてこれを取得することは、不動産売買業を営む者として無理からぬものであり、既に用地取得などに多額の支出をしている以上、所期の目的に沿った建物を建築することもまた法的に保護されるべき行為というベきである。他方、被告国立市長は、本件土地における建築物の高さの制限につき法的拘束力を有する規制をすることなくこれを放置していたばかりか、むしろ高さの制限とは相容れない都市計画が定められていたにもかかわらず、原告の本件建物の建築計画を知るや、にわかに、行政指導においてこれを阻止しようとし、これが功を奏しないとなるや、原告側の事情を熟知していながら、本件地区計画の決定をし、さらには本件条例を制定したものと認められる。

 以上のような被告らの一連の行動は、それ以前における自らの不作為はもとより、東京都の定めた都市計画の内容とも相容れない点において、行政の一貫性を欠くとともに、原告のそれまでの行政規制への信頼を裏切っている点で、自らの行政庁又は地方公共団体としての責務の僻怠により生じた事態の責任を、何ら違法な行為をしていない原告に転嫁するに等しい行為をしたものということができるし、原告が既に多額の投資をして本件建物の建築に着手しようとしていることを無視し、かつその行動を妨げようとした点において、建築基準法68条の2第2項が定める「当該区域内における土地利用の状況」という考慮要素を考慮しなかった違法があるというべきであり、これらの行為により原告の本件土地所有権を侵害したことにつき、不法行為の責めを免れることはできないものといわざるを得ない。

(2)信用毀韻行為

 被告国立市長は、国立市議会での一般質問に対する答弁において、被告国立市長の認識として原告の建設している本件建物が違法建築である旨を発言し、さらに、東京都知事等に対して、電気・ガス・水道の供給の承諾が留保されるように働きかけ、これが報道されたことにより、原告が違法建築をしたとの認識を広く第三者に知らしめたのであるから、これらの発言等により、原告の社会的評価が低下し、その社会的借用が毀損されたことは明らかである。

 被告国立市長は、東京地裁決定を引用するなどしてこれを根拠として前記発言をしているが、その引用に係る部分は単なる理由中の判断であって何ら法的拘束力を有するものではない。したがって、この段階では原告の行為が違法建築に当たるとの公権的な判断がされたわけではないのであるから、公的地位にある者が、あたかもそれがされたかのような言動を行うことは、広く第三者に誤った認識を与える点において違法な行為といわざるを得ない。

3(争点4[原告の損害]についての判断[52頁−57頁])

(1)原告は、本件地区計画及び本件条例がなければ、原告の所有する本件土地について20メートル以上の高さの建物を建築することにより最有効活用をすることが可能であったのに、本件地区計画の決定及び本件条例の制定により、仮にそれらが有効であるとすると、本件土地上に建物を新築する際には同建物の絶対高さの制限を受けることとなって、これにより本件土地の最有効活用が法律上制限され、その意味において本件土地の所有権を侵害されたものと認められ、本件建物が既存不適格建築物となったことによって原告が被った損害の額は、証拠(鑑定書)によると4億円を下らないものと認めるのが相当である。

 なお、仮に本件建物が違法建築であるとすると、原告の被る損害は、本件建物がその耐用年数を全うするまで適法に使用できることを前提とする前記既存不適格化による損害の額を大きく上回ることは明らかであり、少なくとも上記損害額を原告が被告に対して許求できることは明らかである。

 また、本件地区計画及び本件条例がいずれも違法無効なものであると、客観的には本件土地の利用は何ら制約を受けないものとなるが、これらの定めが取り消されることなく現に存在している以上は、市場においてはこれらが有効な場合もあることを前提とした評価がされることも避けられず、結局、本件土地の現在の市場価格は、これらの定めが有効な場合と異ならないものと考えられる。したがって、原告は、これらの定めが客観的にみて違法無効な場合にも上記損害額を請求できるというべきである。

(2)原告は、被告らの前記信用毀損行為によりその社会的借用を低下させられた上、本件建物の各戸の販売活動においても、事実関係の説明を余儀なくされ、これにより、顧客が不安感や不利益を感じたことは容易に推認されるところであり、これに加えて、信用毀横行為の主体が被告国立市長を中心とする公人に上り行われたこと、本件建物が大規模な集合住宅であり、本来はその品質も上級のものとして計画され、かつそのとおり評価されるべきものでありながら、販売計画に大幅な遅れを生じ、これにより少なからぬ損害が発生していることなどの諸事情を考慮すれば、被告らによる信用毀損行為により原告が被った無形損害の金額的評価は5000万円を下らないものと認められる。

 

(結論)

 よって、被告国立市長に対するすべての訴え(請求3、4、6、7に係る訴え)及び被告国立市に対する請求1、2に係る訴えはいずれも不適法であるからこれを却下し、請求5については、被告国立市に対し4億円及びうち3億5000万円に対する平成12年2月1日(本件条例公告の日)から、うち5000万円に対する平成13年3月6日(国立市議会における被告国立市長の発言の日)から、いずれも支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の被告国立市に対する金員請求(5000万円に対する遅延損害金の一部)には理由がないからこれを棄却する。

(別紙物件目録省略)

                                  以上

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