慢性副鼻腔炎、蓄膿症 
[副鼻腔炎が慢性化した症状]
黄色〜黄緑色の粘っこい鼻汁がたくさん出る。鼻をかむ回数が多い。鼻をいつもぐずぐずさせている。鼻糞がいつも多い。鼻づまり(鼻閉)で、口をあけていることが多い。顔面のうっ血。生臭い嫌な鼻の臭いや口臭が続いている。これは本人だけでなく周りの人にもそれと分かる独特の鼻臭・異臭で、特に混み合った電車の中などで蓄膿症の人の臭いはすぐ分かりますし、子供の場合には風邪をひいたあとなどで蓄膿症になると、一番身近に接しているお母さんが敏感に鼻の臭いに気づくことが多いでしょう。常に鼻声である。鼻汁がのどに廻り(後鼻漏)、いつも痰が絡んだようになって、慢性的な咳が続く。集中力がなく、あきっぽい。疲れやすい(慢性疲労)。頭が重い、痛い(頭重感、顔面圧迫感、頭痛、前頭部痛)。首のリンパ腺が腫れやすい(頚部リンパ節の圧痛、咽頭痛)。成績が下がり気味。不眠症。ノイローゼ。(副鼻腔炎とは、急性・慢性副鼻腔炎、副鼻腔炎について解説-図解)(副鼻腔炎:「なるほど病気ガイド」アステラスファーマ)
[歯性上顎洞炎]
歯性上顎洞炎は上顎の奥歯に出来た齲歯や歯周囲炎から上顎洞に感染が波及して起こる副鼻腔炎の一つです。成人の一側性の蓄膿症は、歯が原因となっている場合が多く、原因歯を叩くと痛みが走り、独特の悪臭のする膿性鼻漏があり、頬部が腫脹することもあります。診断や治療は一般の副鼻腔炎と同じですが、原因歯の歯科的処置あるいは抜歯が必要になります。また、一側性の副鼻腔炎の中には上顎癌のような腫瘍性疾患の場合があるので注意が必要です。
[好酸球性副鼻腔炎](好酸球性副鼻腔炎の治療法は?)
近年多くなってきているアレルギーが強く関与した副鼻腔炎のタイプです。喘息を持った成人に多く、非常にネバネバした粘調性で吸引しても硬くて取りきれないような鼻汁が出て、鼻茸が出来ていることもあって、通常の鼻処置程度ではなかなか鼻づまりが改善しません。感染を主体とした通常の副鼻腔炎に対する治療では良くならないために、ステロイド薬の使用や手術的治療を併用して長期に渡る管理が必要になります。
[副鼻腔真菌症](副鼻腔真菌症とは、副鼻腔真菌症の原因、副鼻腔真菌症の症状、副鼻腔真菌症の診断と治療について)
[蓄膿症の診断]
鼻の中をみて、鼻の粘膜のむくみや鼻汁の様子で、蓄膿症かどうかについてのおおよその診断はできます。鼻腔内の状態は内視鏡検査(鼻咽腔ファイバースコピー)をすることで、より詳細に診ることが出来ます。必要な場合はレントゲン写真やCT、MRIを撮って、副鼻腔(上顎洞、篩骨蜂巣、前頭洞、蝶形骨洞)の中の粘膜や骨の変化を診断します。
左鼻茸(ポリープ)
(1. 上顎洞 2. 篩骨蜂巣 3. 前頭洞 4. 下鼻甲介 5. 鼻中隔)
[蓄膿症の治療方法]
慢性蓄膿症でも重症でない限り、かつて行われていたような副鼻腔根治手術は殆どの場合必要ありません。特に小児ちくのう症(小児副鼻腔炎)では、少なくとも15〜16歳までは、よほどひどくない限り根本的な蓄膿症の手術はしません。またその年齢では根治手術をしても、あまり良くならない事が多いものです。ただし、上図のような鼻茸(ポリープ)や鼻まがり(鼻中隔彎曲症)で鼻の通りが悪いときは、レーザーやラジオ波凝固治療を用いた鼻茸切除手術やマイクロデブリッター:シェーバーシステムを用いた内視鏡下での鼻内副鼻腔手術 ESS : Endoscopic Endonasal Sinus Surgery(蓄膿症の保存的な鼻内手術)を行ったり、鼻中隔彎曲症の矯正手術や下鼻甲介切除手術などを行います。(副鼻腔炎の手術療法)
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半導体レーザーにより多房性の鼻茸切除
アレルギー性鼻炎や肥厚性鼻炎を合併している場合は、レーザーや高周波電気凝固あるいはラジオ波凝固治療によって鼻粘膜の腫れを軽減させることで症状を改善させることもあります。根本的な蓄膿の手術は、薬の治療では改善が無く酷い症状が続いている方、抗生物質の効果が期待できない副鼻腔真菌症や上顎癌などの副鼻腔悪性腫瘍の疑いがある方などではお勧めすることもありますが、一般的には外来での保存的治療や出来るだけ簡単な鼻内手術で良くなることが多いでしょう。保存的な治療とは、一般の耳鼻咽喉科外来で行われている鼻内に血管収縮性の薬剤を噴霧して鼻を洗ったり、鼻汁を吸引して、薬液を鼻腔や副鼻腔内に注入する方法(ネブライザーやプレッツ置換法、副鼻腔洗浄)など、鼻への直接の局所治療です。簡易的な鼻の洗浄(鼻うがい)は家庭においても行うことが出来ます。ハナクリーンやサイナスリンスといった洗浄器具や生理食塩水を主体とした洗浄液も上手に使えば症状の軽減が得られます。さらに鼻汁の粘調度を下げて、炎症を軽くする為に内服薬を比較的長期に用います。最近の話題では、難治性の慢性副鼻腔炎の治療にマクロライドという系統の抗生物質を少量長期投与する事が効果があると言われています。いろいろな種類の薬があり、効果にも個人差がありますから、個々人によって使いわけて、少なくとも2〜3ヶ月は続けていただきます。あまり効果の見られない方の場合、薬剤を変更したり、漢方薬の中にも効果の期待できるものがありますので漢方治療をお勧めすることもあります。この様な治療でたいていの蓄膿症の症状は改善することが期待できます。症状の改善が少ない場合には手術的治療を考慮することになりますが、例え手術を行ってもそれだけで慢性副鼻腔炎(慢性の蓄のう症)を根治させることは難しく、術後にも根気強く治療を継続することが重要です。特に難治性と言われているのが好酸球性副鼻腔炎という病態です。この好酸球性副鼻腔炎の方では手術をしても鼻茸が短期日で再発して、粘っこい鼻汁が鼻腔内に溜まり、鼻づまりが続きますから、特に手術後の外来治療が大切です。(蓄膿症・慢性副鼻腔炎1-2-3-4)
副鼻腔気管支症候群について
慢性副鼻腔炎と慢性気管支炎、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎などが合併している状態です。
慢性副鼻腔炎の症状(粘っこい鼻水、後鼻漏、鼻づまり、嗅覚障害、頭痛など)と下気道炎の症状(慢性の咳と痰)がみられます。鼻の治療に加えて、粘液溶解剤や気管支拡張剤などを併用します。
副鼻腔炎の治療に用いる薬
急性期の蓄膿症には
1.抗生物質 2.消炎酵素剤 3.鎮痛消炎剤 4.抗アレルギー剤 5.鎮咳剤 6.去痰剤 7.漢方
※ 急性期の治療は上記の薬を組み合わせ、数日〜1週間の治療で症状が軽くなり、治ってしまいます。
※風邪をひいて、2週間以上も鼻づまりが続いている時には風邪ではなく、鼻の病気(急性の蓄膿症)を疑うべきで、セキが何週間も続くようなら咽喉頭炎や気管支炎が疑われます。特に微熱が長く続く場合は、肺炎や結核、あるいは腎臓や心臓の病気がおこっている可能性もあります。レントゲンや血液検査が必要になり、治療にも少し時間がかかります。
※漢方薬は治療開始後二週間で良くなる兆しが少しもみえなければ、他の漢方処方に変更すべきだと考えられます。僅かでも良い兆しがみられれば一ヶ月単位で経過をみながら内服を続けてゆきます。
※こじれた蓄膿症の治療期間のおおよその目安として、半年間で約半数の患者が良くなり、さらに一年間で約7割の人が良くなると考えられます。しかし残念ながら副鼻腔の病変は一旦高度なものになると完治に至ることが少ないのも現実です。日常生活で副鼻腔炎による苦悩を出来る限り少なく過ごせるようにする、つまり生活の質( Quality Of Life )の向上が副鼻腔炎治療の最終目的です。
自由が丘耳鼻咽喉科・笠井クリニック
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