中耳炎
【概 要】
中耳炎
急性中耳炎
急性中耳炎に対する抗生物質の使用について
中耳炎で問題となる耐性菌
キシリトールによる中耳炎の予防効果を検討した試験の紹介
●中耳炎
・鼓膜内側の中耳腔(耳管、鼓室、鼓膜、乳突蜂巣)に生じる炎症
・耳疾患の中で最もポピュラーな疾患で大きく3つに分類される
急性中耳炎
上気道炎などに引き続き、鼻や咽頭の感染菌が耳管を介して中耳へ拡がり、炎症を起こした状態。
滲出性中耳炎
中耳腔に分泌物が貯留する疾患。耳痛はないが、難聴・耳閉塞感をきたす。
慢性中耳炎
鼓膜の真ん中に穴が開いて閉じない単純性慢性中耳炎と鼓膜の縁に穴が開き、骨を壊す真珠腫性慢性中耳炎がある。耳痛はないが、難聴・耳漏をきたす。
【参考文献】
調剤と情報4(4):441-448,1998
調剤と情報5(7):957-962,1999
月刊薬事42(13):3305-3308,2000
病気の地図帳 講談社,1995

●急性中耳炎
概念
・中耳炎の大半を占める
・成人にも発症するが子供(幼少児)に圧倒的に多い
・幼少児の場合、急性上気道炎に罹患後、数日してから発症することが多い
症状
・細菌感染による発熱
・耳痛
・滲出液の貯留による難聴
・鼓膜の充血
・耳の閉塞感
起炎菌
3大起炎菌として肺炎球菌(40〜50%)、インフルエンザ菌(30〜40%)、モラキセラ・カタラーリス(10%前後)
診断
・明確な診断基準が確立されておらず、臨床医の間で合意が得られていない
・目安として、主症状(耳痛、耳漏、難聴、耳閉塞感など)および鼓膜所見(鼓膜の発赤・混濁・膨隆・可動性の低下、鼓膜穿孔からの耳漏の流出など)から診断する
治療
・抗生物質(ペニシリン系薬剤やセフェム系薬剤など)による細菌感染の抑制
・痛みの除去のために鎮痛剤や抗炎症剤がしばしば使用される
・鼓膜切開術(耳痛は鼓膜の緊張によりもたらされるので、鼓膜切開を行えば痛みを取り除くことが可能)
・耳浴液(点耳液)
・上咽頭のネブライザー など
合併症
中耳炎が周囲に波及すると、乳様突起炎(乳突炎)、内耳炎、顔面神経麻痺、髄膜炎(現在ではまれである)などを起こすことがある
【参考文献】
臨床と薬物治療14(1):91-100,1995
調剤と情報4(4):441-448,1998
調剤と情報5(7):957-962,1999
月刊薬事42(13):3305-3308,2000
病気の地図帳 講談社,1995
Pharma Medica 18(10):112-121,2000
小児科臨床52(4):730-735,1999
臨床医薬16(1):39-50,2000

●急性中耳炎に対する抗生物質の使用について
・1940年代後半、急性中耳炎の治療に対し抗生物質が広く使用される
・初期(1970年代前半)の研究では抗生物質の治療がプラセボに比べ優れた効果を示した
最近、急性中耳炎の治療における
抗生物質療法について議論されている
・先進国では中耳炎は自然に軽快する疾患である
・プラセボを投与した患者でも60%は24時間以内に痛みが消失する
・抗生物質を投与してもわずかな利点があるにすぎない
・発症後2〜7日間の痛みが生じる子供を1人減らすために17人の子供を治療する必要がある(NNT=17)
・抗生物質を投与しなくても乳突炎のような化膿性疾患の合併症はきわめてまれであり、その頻度は著しく減少している
・ペニシリンやセフェム系薬剤に耐性を示す肺炎球菌の急速な増加が指摘されており、再発を繰り返す中耳炎や難治性の中耳炎が増えてきている
・抗生物質の投与日数についても議論されており、2日あるいは3日、5日間投与と7〜10日間投与を比べた結果、効果に差がないとの報告がある
しかし、化膿性の急性中耳炎では、抗生物質の投与を必要とするというのが、現在の統一的な見解のようである
※化膿状態が疑われる場合でも、1〜2日間様子をみて、抗生物質の投与を延期することが推奨されている
【参考文献】
臨床と薬物治療14(1):91-100,1995
Medical Tribune 30(46):29-30,1997
Medical Tribune 32(6):21-23,1999
抗生物質治療ガイドライン(オーストラリア治療ガイドライン委員会)プリメド社,1999

●中耳炎で問題となる耐性菌
近年、小児科、耳鼻咽喉科領域で問題となる耐性菌として特に、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)やβ-ラクタマーゼ非産生アンピシリン低感受性インフルエンザ菌(BLNAR)があげられる。
・耐性機序がペニシリン結合蛋白のβ-ラクタム系薬に対する結合親和性の低下にあることから、ペニシリンだけではなくβ-ラクタム系薬全体に対して感受性が低下している。ペニシリン以上にセフェム系薬において耐性が進行している
・肺炎球菌の30〜50%がPRSPである。
・インフルエンザ菌の約30%がBLNARである。
・肺炎球菌とインフルエンザ菌の両菌が、従来から中耳炎の主要な原因菌であり、耐性化の進行は疾患の重症化に直結してきている。
・感染防御能の弱い乳幼児や高齢者、免疫不全宿主に感染を発症した場合には有効薬剤が少ないため遷延化・重症化・難治化し、予後不良となる例がある。
【参考文献】
医学のあゆみ185(5):308-312,1998
Medical Tribune 32(6):21-23,1999
PharmaMedica 18(10):112-121,2000
医薬ジャーナル35(6):1482-1483,1999
化学療法の領域16(9):1463-1471,2000

●キシリトールによる中耳炎の予防効果を検討した試験の紹介
文 献
Uhari, M. et al.:A novel use of xylitol sugar in preventing acute otitis media.(急性中耳炎の予防におけるキシリトールの新しい使用法) PEDIATRICS 102(4):879-884,1998
研究デザイン
RCT(ランダム化は乱数表とブロックサイズ6のブロックを使用)二重盲検比較試験(シロップ間およびガム間の比較の場合)オープン試験(ガムとあめの比較の場合)
フィンランドのオウル大学小児科教室が実施
追跡率:89.1%
追跡期間:3カ月
参加者・方法
・34の保育所から集められた健康な子供、857人(1996年9月〜12月)平均3.7歳(7.7カ月〜6.9歳)
・ガムを噛むことが不可能な子供はシロップ投与群に割付け
・ガムを噛むことが可能な子供はガム投与群かあめ投与群(介入群のみ)に割付け
・各グループ間の特性について有意な違いは認められなかった
・急性中耳炎にかかった参加者は抗生物質が投与(7日間)された
結 果
※抗生物質の投与日数は各介入群とも対照群と比べ少なかった(有意差あり)
・キシリトールのシロップあるいはガムの投与は子供の急性中耳炎の予防に対し効果が見込めそうであるが、あめの投与は効果が不十分である。
・シロップ、あめの投与群はガム投与群より腹部の不調を訴える例が多かった。
・試験結果は1日5回投与を行ったものであり、それ以下での投与回数で同じ効果が得られるかどうかは不明である。
・試験でのキシリトールの投与量は虫歯予防に効果があるとされる量より多い。
(ArcAzwell提供)

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