小児の耳・鼻・のどに関する質問と回答
(代表的な小児の耳鼻咽喉科疾患、耳と鼻の不思議、耳・鼻の仕組みと役割、耳・鼻の役割)
A)子どもの耳の病気には、どのようなものが多いですか。代表的なものをいくつかと、その症状、治療法、予防法などをお教えください。
回答:耳あか、外耳炎、急性中耳炎、滲出性中耳炎が代表的な病気です。(小児の耳疾患1-2)
A1. 耳あか
少量の耳あかでは症状が出ることはありません。耳垢栓塞といって耳あかが硬くなって外耳道に詰まったものや耳に水が入って耳あかがふやけたりすると、かゆくなったり、痛みが出たり、聞こえが悪くなります。新生児では胎内にいるときに出来た汚れが耳に詰まっていることがあります。
耳あかは耳鼻咽喉科で取っていただくのが一番安全です。家庭では耳あかを取ろうと無理をしてはいけません。お風呂上がりに綿棒でそっと耳の入り口をさわる程度にとどめてください。奥の方が見えないときには耳鼻科での診察をおすすめします。
質問:耳あかが黄色くてベタベタしています。心配ないのでしょうか(男3才)
回答:耳あかには黄白色のカサカサしたものと、黄褐色でベタベタした軟らかいものとがあります。優性遺伝しますので、親がネバネバした耳あかだと子供もそうであることが多くなります。日本人ではネバネバ型が少ないのですが、白人には軟らかい耳あかの人が多くて、英語で耳垢のことをイヤーワックスear
waxといいます。軟耳垢は体質であって、病気ではありませんから心配ありませんが、耳の掃除が難しいので耳鼻咽喉科で詰まっていないかどうかを時々見ていただくのがよいでしょう。(耳かき必要なし、臭い耳垂れ、耳掃除の頻度とやり方)
質問:子どもの耳そうじがうまくできません。上手なやり方を教えてください。病院でしてくれると聞きましたが、その場合、月に何回くらい通えばいいのですか?(男2才2ヶ月)
回答:家庭で乳幼児の耳そうじをすることはあまりおすすめ出来ません。耳掻きや綿棒を使って耳あかを取るつもりが、かえって奥に押し込んでしまうことがあるからです。耳掃除を嫌がって暴れる子どもの耳垢を無理矢理取ろうとしたり、乱暴なやり方で耳掃除をしたり、そばにいた人が触れてしまったりすると外耳道を傷つけて出血し、鼓膜まで破ってしまうこともあります。耳鼻咽喉科では明るい光源の下で、耳あか除去専用に作られた色々な器具を使って丁寧にそっと取りますから安全です。子供の外耳道や鼓膜は狭くて小さいので耳垢除去の際に少し擦れて中には血がにじむような場合もありますが、耳鼻咽喉科で処置を受ける限りにおいては大事に至ることはまずありません。がっちり硬く詰まって塞がっている耳あか(耳垢栓塞)は、軟らかくするお薬(耳垢水)を耳の中に2,3日つけていただいてから、吸引して取ることができます。個人差はありますが一度きれいにしておけば、すぐにはそうたまりませんから、月に何回も繰り返して掃除することはありません。少々の耳垢はあって当たり前、ついているのが普通です。完全に外耳道を耳垢の無い状態にすることは出来ませんし、たとえ出来たとしても耳垢は常に後から繰り返し出来てくるようになっています。通常の耳垢は鼓膜が見えている限りにおいて「治療」の必要性はありません。半年に一回くらい耳鼻咽喉科で診ていただいて、必要があれば(耳鼻咽喉科の主治医の先生が必要だと認めれば)掃除をしていただくということでよいでしょう。ただ、中には耳垢がすぐに詰まってしまう人もありますから、診て頂く頻度については主治医の先生によくご確認されてください。(耳鼻のお手入れ、「毎日の耳掃除は必要ない」って本当?)
A2. 外耳炎
外耳道に湿疹があると、かゆくていじったり、耳そうじをしたりする時に細菌の感染が起こります。化膿して「おでき」が出来ると、「耳せつ」といって中耳炎よりももっと痛みが強くなり、数日以上も治らないことがあります。外耳炎の痛みは耳を触るとひどく痛むのが特徴です。化膿止めや痛み止めの飲み薬が必要となります。
軽い外耳炎はかゆみだけですが、絶対に無理にいじらないで下さい。治りかけの時にもかゆみが強くなりますが、かゆみ止めの塗り薬や飲み薬を処方していただき、出来るだけいじらないようにしましょう。寝ているときに無意識のうちに触ってしまうことがありますから、爪は短く切っておき、指先を清潔にしておくことも大切です。
A3. 急性中耳炎(風邪を引きやすく中耳炎が心配、子どもの中耳炎に要注意、急性中耳炎と滲出性中耳炎)
鼻がぐずぐずして、せきもでるという「かぜ」症状があって、数日もしないうちに耳が痛くなれば典型的な急性中耳炎です。赤ちゃんでは耳が痛いと言えませんから、大泣きしたり、機嫌が悪かったり、食欲が無かったり、熱が続いたりということでその原因が分からず、耳だれが出てから始めて中耳炎になっていたことに気がつくことも少なくありません。急性中耳炎は字句通り急に起こります。耳鼻科で診察を受けて耳は何ともないと言われても、その日の内に耳垂れや血が出てきて急性中耳炎になっているような事も珍しいことではありません。
急性中耳炎が繰り返して起こったり(反復性中耳炎)、治癒が長引き治りにくくなったり(遷延性中耳炎)するのは、2歳以下の幼少児や保育所などでの集団生活をしているケースで特に多く見られることです。中耳炎の起炎菌を検査すると、抗生物質が効きにくい細菌による中耳炎が近年特に増加しています。急性炎症があるときに使う抗生物質は効き具合を見ながら効果がなければ変更してゆきます。近年、起炎菌である肺炎球菌やインフルエンザ菌などに効果の良い薬が処方されることが多くなっています。治療を始めると2,3日で臨床症状は良くなりますが、中耳炎は完全に治りきっているわけではありません。抗生物質や鼻の炎症を抑える薬を医師の指示通りきちんと飲むことが大切です。膿がたまって鼓膜がはれ、痛みも強く、熱が引かないようなときには鼓膜を切開すると早く治ります。反復性中耳炎や遷延性中耳炎などの難治性中耳炎になると治療期間も長くなり、厄介です。急性中耳炎は初期に適切な治療を受けることが大切です。痛みはなくなっていても、中耳に分泌物が残った状態が続いている滲出性中耳炎に移行することも多く、完治するのに時間がかかることになります。(小児急性中耳炎診療ガイドライン、鼓膜所見と診療ガイドライン)
質問:子どもの場合、耳の聞こえが悪い(子どもの耳(1)ちゃんと聞こえてますか、(2)子どもの聞こえが悪くなる原因、幼少児の難聴)ことをどうやって判断すればいいのですか。最近、聞き返しが多くなっているようで、心配です(女1才5カ月)
回答:言葉を話せるようになるために耳の聞こえが最も大切です。生後から4才までが特に重要な時期です。手をたたいてみて音がする方向に反応しない、後ろから呼びかけても振り向かない、2才過ぎても言葉が出ない、言葉の数が少ないなどの反応をよく注意してみましょう。難聴は1歳半の定期検診でも見過ごされることがありますから、普段から子供の行動をいつも見守っていてください。お母さんの観察力が子供の一生に関わってきます。少しでも気になることがあったら、耳鼻咽喉科を受診してください。まず簡単な外来検査からはじめて、必要な時には睡眠時の脳波を測定して聞こえを判断する検査といったことまで予定していただけます。
小児の難聴の最も多い原因は滲出性中耳炎です。
A4. 滲出性中耳炎(急性中耳炎と滲出性中耳炎、中耳炎を早く見つけるには1-2、滲出性中耳炎が完治するか心配)
中耳に液体がたまっているため聴こえが悪くなる病気です。急性中耳炎が治りきらず滲出性中耳炎になっていることがあります。中耳炎の原因として、鼻ではアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎があるために滲出性中耳炎になりやすくなります。のどでは扁桃肥大やアデノイドが原因と考えられることもあります。難聴は少しずつ進行しますから気づかれないことが多く、風邪をひいたときなどに鼻水が多いということで、治療のためにたまたま耳鼻咽喉科を受診して始めて滲出性中耳炎といわれてびっくりすることになります。
滲出性中耳炎で、難聴がひどい場合や何ヶ月も治らない場合は鼓膜切開や鼓膜にチューブを入れる治療が必要になります。耳の治療だけでなく、中耳炎の原因になっている鼻やのどの治療も必要です。原因にもよりますが、治るのに何年もかかることがありますから本人とご家族の忍耐力が必要です。中耳炎で一番困るのは、痛みや発熱では無く、聞こえが悪くなることです。聞こえが悪いと、言語の習得に障害が出ますから、小児期の聞こえは心の発育にとても大切です。(小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2015年版、小児滲出性中耳炎ガイドライン−一般の方・おうちの方へ)
質問:カゼをひくとすぐに中耳炎(子どもの耳の気がかり)になります。予防法や生活上の注意を教えてください。(男3才2カ月)
回答:一般的なカゼの原因は何種類かのビールスが原因です。空気感染でも起こりますが、手から鼻への接触感染が殆どです。大人はカゼを年平均2度か3度ひきます。健康な小児で年平均6回以上、集団生活を送ることの多い子供ではもっと回数は多いのですが、年齢を重ねるに従って免疫力がついてくるのでカゼをひく回数は少なくなります。うがいや手洗いをこまめにする、睡眠不足にならないようにする、乾布摩擦で抵抗力をつける、栄養のバランスを考えた食事を摂るようにするなどがよいとされています。閉め切った室内にはウイルス、細菌、カビが充満してしまいますので、換気をよくして加湿器なども利用して乾燥を避ける必要があります。タバコは最もよくありませんから、受動喫煙しないように大人が気を遣ってあげなければいけません。といってもカゼを引きやすい子供はいくら注意していても完全に防ぐことは出来ません。中耳炎にならないようにするためには、カゼに伴う鼻づまりや鼻水を早めに耳鼻咽喉科できちんと治療していただくのがよいでしょう。
質問:娘が38度の熱を出し、胸がゼーゼーと言って、眠れなくなったので病院を受診しました。その後、3日ほどで熱と胸のゼーゼーは治まったのですが、セキ・鼻水・耳の赤さだけが残り、ずっと抗生物質を処方されています。少しずつ種類を替えて処方されているのですが、もう20日になります。それでも、耳の赤さだけが治らないそうで、まだ飲み続けなくてはならないみたい。このままでいいのでしょうか?(抗生物質は、リカマイドライシロップ、バナンドライシロップの2種類が交互に出されています)
1. このような状態で残った耳の赤さとは、なんなのでしょう?
2. こういった場合、耳の赤さは半月以上長引くこともあるのですか?なかなか治りづらいのは、何か原因が考えられますか?
3. 抗生物質を1才の子供に20日も与え続けても大丈夫ですか?大人に処方する場合と比べて、どのようなことに配慮して子どもには抗生物質の処方は行われますか?
4. 患者はこのままでいいのでしょうか?耳鼻咽喉科を受診したほうがいいですか?(女1才0ヶ月)
回答:急性咽喉頭炎、急性気管気管支炎などの風邪症状から上・下気道に細菌感染が加わり、鼻は鼻副鼻腔炎(小児の蓄膿症)と耳のほうは急性中耳炎あるいは滲出性中耳炎に移行した形になって長引いているのでしょう。鼻が悪いと耳はなかなか治りません。乳幼児では鼻の奥で中耳とつながっている耳管が短くて太いため、鼻やのどの炎症がすぐに耳に影響してきます。一度中耳炎にかかると、鼓膜所見は良くなっているように見えていても、鼻がグズグズしているとすぐに中耳炎がぶり返したり、耳垂れが続いたりといったことで、完全な治癒までに2、3ヶ月以上かかることは珍しいことではありません。主に鼻の慢性炎症を抑える目的で使われるマクロライド系の抗生物質は2、3ヶ月の長期投与で効果が出る場合があります。小児では投薬があまり長期になるのも気に掛かりますが、臨床症状を見ながらある程度は継続してゆく場合もあります。薬の治療で治りが悪い場合には鼓膜切開によって溜まっている浸出液を抜く手術的治療も考慮します。重症で難治性の場合には入院して点滴治療で抗生物質を投与することも行われます。中耳炎は聴力に影響が出るのが一番問題です。鼻や耳の状態はやはり耳鼻咽喉科で診ていただかないと正しい判断は出来ないでしょう。(風邪の後にかかりやすい中耳炎_図譜・_解説)(どんな時に心配したらいいの?―咳、かぜ、耳やのどの痛みについてのガイド_英国カーディフ大学作成冊子の日本語版)(厚生労働省:抗微生物薬適正使用の手引き[第2版])
B)子どもの鼻の病気には、どのようなものが多いですか。代表的なものをいくつかと、その症状、治療法、予防法などをお教えください。(鼻のかみかたを教えたい、鼻水の検査や治療、家庭でのケア、鼻水の違いによる治療法、鼻毛と耳かき、乳幼児の鼻づまり、正しい鼻のかみ方、乳幼児の鼻つまりに注意)
回答:副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻出血が小児の鼻の病気の代表です。
B1. 副鼻腔炎(ちくのう症)(子どもの副鼻腔炎、ちくのう症、鼻のケア、急性鼻炎と慢性鼻炎)
鼻かぜ(急性鼻炎)をひいたあと、ドロッとした黄色い鼻汁が出るのは急性鼻副鼻腔炎つまり急性ちくのう症になった証拠です。炎症が酷いときには頭痛がしたり、ほおや目のまわりが痛くなったり、鼻に血が混じったりすることもあります。小児のちくのう症で慢性になると、いつもぐずぐずして、鼻づまりで口を開けていることが多くなり、なかなか治りません。また長引く咳の原因として副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、喘息とその前段階ともいえる咳喘息などが小児では重要です(子供の咳、小児の咳、知っておきたい子供の咳)。特に小児の鼻副鼻腔炎では夜間に痰の絡んだ咳が続出ることが特徴の1つです。出来るだけ早いうちに耳鼻咽喉科で治療していただきましょう。子供のちくのう症で手術をするケースはめったにありません。鼻を詰まらせるポリープが出来ているときには鼻茸の切除が必要になりますが、普通は外来通院で鼻の粘膜のはれを引かせて、たまった鼻汁を吸引して取るという治療を続けます。抗生物質や消炎酵素剤が処方されたときには、きちんと継続して飲んで下さい。
子供には正しい鼻のかみかたを教えましょう。鼻は強くかみすぎないこと、片方ずつそっとかむことです。まず、鼻をかむ前に、大きく息を吸ってから、いったん息をこらえます。それから鼻を片方ずつ押さえ、ゆっくり、小刻みに、空気を押し出す感じでかむことです。反対に強く、力任せに、左右一度にかんだり、逆に鼻をすするのは中耳炎になりやすいので、やめましょう。
質問:鼻水が出やすいのですが、ときによって水っぽかったり黄色っぽくてドロッとしていたりします。それぞれ気をつけることなど違いはありますか?
回答:鼻水は鼻の粘膜に潤いをもたらして粘膜を保護し、鼻の中に入った異物を鼻水とともにのどの方へ流して除去する重要な役割があります。ふだんも鼻水は分泌されているのですが、正常な状態ならそれを自覚することはありません。鼻水が鼻の中に溜まったまま出てこない鼻づまりや、前の方へ出てきたり、のどの後ろの方へ廻ってくる(後鼻漏)ように感じるのは病的な場合です。
ウイルス感染による風邪の初期、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎などで出てくる鼻水は水のように透明なサラサラした鼻水です。一般的な風邪の場合は自然に治ることがほとんどですから、治療の必要はありません。つらい症状が長引く場合には、医師の処方箋や市販の風邪薬などにも含まれている抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬、消炎酵素剤などを用いて改善させることができます。風邪がこじれ、炎症が強くなり、副鼻腔からの分泌物が多くなると、鼻水が粘っこくなり、そこに感染が加わると急性副鼻腔炎(急性ちくのう症)となって黄色や緑色の鼻汁に変化します。慢性副鼻腔炎になってしまうと、粘っこく膿のような鼻汁がずっと続きますから、そうなると抗生物質の使用や耳鼻咽喉科での治療が必要です。
小児の急性鼻副鼻腔炎(蓄膿症)、左鼻腔の所見
B2. アレルギー性鼻炎(小児アレルギー性鼻炎)
かぜ症状でもないのに、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりが続くのが特徴です。耳鼻科医が鼻の粘膜を見ればそれだけでほぼ診断できます。血液検査や皮膚反応テスト、鼻水の検査などが行われることもあります。ハウスダストやダニが原因になることが多く、最近ではスギ花粉が原因のアレルギー性鼻炎(スギ花粉症)が小児でも増えてきました。原因物質から離れるのが良いのですが現実には不可能ですから、症状を軽くするために飲み薬や点鼻薬などを使います。治療が必要かどうかの判断は日常生活で支障が出ているかどうかが目安となります。治療は医師とよく相談して、病状に合わせて出来るだけ負担の少ない方法から選びます。
質問:私がアレルギー性鼻炎なので、子どもへの遺伝が心配です。かからないための予防法があれば、教えてください。(男1才8カ月)
回答: アレルギー性鼻炎は遺伝傾向のある病気です。今のところアレルギー性鼻炎が出ないようにする確実な方法はありませんが、原因となる物質を避けることが基本です。室内のホコリやダニを出来るだけ少なくすることや周りの方がタバコを吸わないようにするなどの生活環境を整えることです。
小児のアレルギー性鼻炎、右鼻腔 ⇒ 鼻処置後
B3. 鼻出血
質問:鼻血がよく出るのは、何かの病気の可能性がありますか?(女2才8カ月)
回答:小児の鼻血の殆どは鼻に湿疹が出来ていたり、鼻炎や鼻アレルギーのためにかゆみがあったりで、鼻をいじることがきっかけです。鼻の穴に近い部分はキーゼルバッハ部位と呼ばれて血管が集まっていますから、こすったりすると出血しやすくなっています。そのようなときには、鼻の入り口に綿をつめて両方の小鼻を10分くらい押さえたままにしていると、たいていの鼻血は止まります。めったにないことですが血液の病気でも鼻血が出やすいことがありますから、耳鼻咽喉科で出血している場所や原因を診断していただきましょう。(子供が鼻血を出したら、どうすればいいか)
C)子どものノドの病気には、どのようなものが多いですか。代表的なものをいくつかと、その症状、治療法、予防法などをお教えください。
回答:扁桃炎とアデノイドといびきについて説明します。
C1. 急性扁桃炎(子どもの「のどの痛み」の原因、溶連菌感染症、扁桃の病気図、扁桃の病気解説)
子供の最もありふれた病気です。高い熱と、のどの痛みが特徴です。扁桃は赤くはれて、表面に白いぶつぶつがつきます。広い意味で「かぜ」と言う人もいますが、正確には扁桃炎です。なるべく早く耳鼻科や小児科にかかって、お薬が必要な場合は処方していただきましょう。
質問:長男は、のどの奥が見えないほどへんとうせんが大きいのですが、手術したほうがいいのでしょうか。カゼをひくとのどが真っ赤になり、せきがひどいので心配です。(男3才6カ月)
回答:扁桃腺は正確には口蓋扁桃あるいは簡単に扁桃といいます。ノドの入り口の左右にあって、クルミのような形をしたリンパ組織です。扁桃は5歳以下の子供では免疫という大切な役割をもっていると考えられているので、単に扁桃が大きいからという理由だけでは、すぐに手術で取ってしまうことはありません。しかし、食事がとりにくいほど大きかったり、高い熱を年に数回以上繰り返したり、ちくのう症や中耳炎がなかなか治らなかったり、睡眠時の呼吸障害がひどいなどの症状が出る場合には、口蓋扁桃をアデノイドと一緒に切除することを考えます。扁桃摘出手術をした方がよいかどうかは、普段の状況を継続して診て下さっている耳鼻咽喉科の主治医の先生が一番よくわかっていますのでご相談下さい。
扁桃の大きさに関して、一寸見ただけではそれほど大きくないように思える扁桃も、
⇒ のどに力が入ると、咽頭腔へ突出してくるので、実際には相当大きくて、呼吸や燕下機能に支障をもたらしている可能性があることがわかります。逆に、のどを塞ぐほど大きく見える扁桃でも、摂食や呼吸時には結構隙間が出来て、健康上に何ら問題が無いということもあります。
C2. アデノイド(咽頭扁桃肥大症)
のどちんこ(口蓋垂)の裏側で鼻とのどの間にある咽頭扁桃というリンパ組織がはれて、鼻づまりや中耳炎の原因になるのがアデノイドです。口を「あーん」としただけでは通常はアデノイドを直接見ることが出来ませんから、耳鼻咽喉科を受診しないとアデノイドの診断は出来ません。咽頭扁桃は5,6歳で一番大きくなり、その後は小さくなってゆきますが、乳幼児期であっても鼻や耳に悪い影響が出て難治性の滲出性中耳炎や慢性の鼻副鼻腔炎の原因になっているときや、閉塞性睡眠時無呼吸症やイビキの原因になっているときにはアデノイド切除手術を必要とすることがあります。
咽頭扁桃は「鼻の奥の突き当たり、口蓋垂の裏側で、のどの一番上」にあります。この場所は上咽頭(鼻咽腔)というところで、直接目で視ることが難しいので、後鼻鏡や鼻咽腔ファイバースコープ(内視鏡)検査あるいはレントゲンを撮って確認することになります。
C3. いびき(子どものいびき)
子供がいびきをかくのは鼻づまりがあるか、アデノイドや扁桃がはれていることが主な原因です。赤ちゃんは大人と違って口ではほとんど呼吸が出来ませんから、鼻づまりがあるととても苦しがります。ミルクを飲めなくなり、眠れないため機嫌が悪くなって泣いてばかりいます。鼻づまりが続いていると充分な睡眠が取れないために体の成長も悪くなります。子供がいびきをかいていたら耳鼻咽喉科で診察を受けなければいけません。
質問:2〜3ヶ月前に気づいたのですが、息子は夜いびきをかいているんです。はじめは「おじさんみたい」と思って心配はしていなかったのですが、この頃口をポッカリ開いて息している様子が苦しそうで気になっています。病院へ行ったほうがいいのでしょうか?
1. 通常の大人のいびきとはどのような仕組みで起こっているのでしょうか?
2. それが子どもになると、どのような原因があっていびきが生じるのですか?
3. いびきの他にどのような症状があれば、要注意ですか?
4. いびきの大きさ、いびきをかくようになってからの期間にかかわりなく、子どもがいびきをかいたら、耳鼻咽喉科を受診すべきでしょうか?(男2才3ヶ月)
回答:鼻の入り口から声を出す声帯までの空気の通り道を上気道といいます。睡眠中に上気道のどこかが狭くなることがあり、そのために異常な騒音が出るのがイビキです。特にのどちんこ(口蓋垂)と軟口蓋の振動が最も多いイビキの原因です。その他にもアレルギー性鼻炎や花粉症、ちくのう症(副鼻腔炎)、鼻曲がり(鼻中隔弯曲症)や肥厚性鼻炎、アデノイド、扁桃肥大、稀ですが鼻やのどに出来た腫瘍などがあると、鼻づまりとイビキが出やすくなります。
子供の鼻づまりの原因として多いのはアデノイド増殖症、扁桃肥大、アレルギー性鼻炎、慢性鼻炎、副鼻腔炎などがあります。アデノイドというのは、軟口蓋の裏側で、鼻の一番突き当たりの所にあるリンパ組織(咽頭扁桃)が肥大して何らかの病状を呈しているものです。アデノイドのある子供は、寝ているときに寝息がうるさく、いびきをかいています。睡眠中に呼吸を止めるようなことがあったり、昼間は寝不足でゴロゴロとして活気が無いといった症状も出ます。口を開けて呼吸していることが多く、アデノイド顔貌といわれる悲しそうな顔つきになり、歯並びも悪くなります。副鼻腔炎や中耳炎も併発していることがよくあります。睡眠時無呼吸症候群の患児では身体発育や学業成績などにも悪影響を及ぼします。アデノイド切除手術や、それと同時に口蓋扁桃も大きい場合には扁桃摘出術を行うことで鼻呼吸が改善できます。(参考:子供のいびきと睡眠時無呼吸症候群、日本学校保健会の睡眠時無呼吸症候群について)
子供の鼻詰まりの他の原因としては、鼻の腫瘍や異物があげられます。子供は豆やビーズ玉、ボタン、プラスチックのおもちゃのかけら、ティッシュペーパーなど何でも鼻の穴の中に入れます。片方の鼻から臭い鼻汁が出ているようなときには、鼻内異物も考えて耳鼻咽喉科で診察していただきましょう。
D)まとめの質問
D1. 耳鼻咽喉関連の病気にかかる子が増えていると言われますが、実際のところはどうでしょうか。増えている場合、どのようなことが理由でしょうか。(いびき、中耳炎-鼻炎、鼻血、耳垢、耳鼻咽喉科疾患一般について)
回答:アレルギー性の病気が目立って増えています。低年齢のスギ花粉症も増えています。アレルギー性鼻炎だけではなく小児副鼻腔炎、咽頭炎、喉頭炎、気管支炎や喘息、中耳炎もアレルギーが関係しているために治りにくくなっているようです。車の排気ガスなどによる大気汚染、食生活の変化、ストレス、夜更かしなど生活リズムの乱れ等々、大人の生活が子供にも強く影響しているように感じます。
D2. 子どもの患者さんの来院理由に多いものは、どのようなことですか。
回答:医療情報が豊富になり、お母さん方の意識も向上しているため、一つの診療科にこだわることなく耳鼻咽喉科的診察も求められて来院されることが多くなりました。内科や小児科でカゼを治療していただいており、症状はほとんどないけれど、少し鼻が出ているので気になって耳も診てもらいたいと言うことで、診察してみると滲出性中耳炎になっているというケースは耳鼻咽喉科ではよくあることです。
D3. 子どもの耳鼻咽喉について、お母さんが日頃気をつけてあげたいポイント(参考記事)がありましたら、お教えください。
回答:耳については遊びの感覚でよいですから、ささやき声で背後から声をかけて反応を見ることで、耳の聞こえが悪くないかと言うことに注意をして下さい(乳幼児健診で保護者が行うささやき声検査:聞こえのチェックをやってみよう)。鼻やのどについては寝ているときの呼吸状態に気をつけてください。普段の生活では気づかなくても、睡眠中に鼻呼吸に問題があると口を開けた状態で呼吸をしており、いびきをかくことが多くなります。粘っこい鼻水が出ており、口で息をしているようなことがあると、耳に影響して中耳炎になっていることがあります。(難聴を見逃さないために:日本耳鼻咽喉科学会〜1才6ヶ月児健康診査および3歳児健康診査)(耳鼻咽喉科健康診断マニュアル)(児童生徒の健康診断マニュアル:日本学校保健会)(新生児聴覚スクリーニングマニュアルについて:日本耳鼻咽喉科学会)
D4. 医療関係者だけではなく、子供を持つ親御さん達にも、とても参考になる書籍
「子どもの みみ・はな・のど の 診かた」 南山堂 著者:工藤典代先生(前千葉県こども病院耳鼻咽喉科部長 前千葉県立保健医療大学教授)
自由が丘耳鼻咽喉科・笠井クリニック
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