いびきに関するQ&A 笠井耳鼻咽喉科クリニック・自由が丘診療室

いびきのおこる原因は?
 鼻の入り口から声を出す声帯までの空気の通り道を上気道といいます。その
上気道で睡眠中に異常な騒音が出るのが、いびきです。当たり前のことですが、いびきは眠っているときにしかおこりません。眠っていると上気道のどこかが狭くなることがあり、そのためにいびきが出やすくなります。眠ると全身の筋肉がゆるみますが、のどの筋肉も緊張が無くなり、振動しやすくなります。特にのどちんこ(口蓋垂)とその上の軟口蓋といわれる部分の振動が最も多いいびき音の出る場所です。また、舌の付け根の部分は仰向けに寝ていると、重力によってのどを狭くする方向に沈み込んでしまいます。最近の話題では、地上では重症のいびきをかいている宇宙飛行士も宇宙の無重力状態ではいびきは全く出なくなるという報告があります。
 アレルギー性鼻炎や花粉症ちくのう症(副鼻腔炎)、鼻曲がり(鼻中隔弯曲症)や肥厚性鼻炎、稀には鼻やのどに出来た腫瘍などがあると、鼻粘膜が腫れて
鼻の中が狭くなりイビキが出やすくなります。鼻粘膜の腫れはカゼの繰り返しや副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などによる慢性的な刺激が原因となって、生まれてすぐから何年間にも渡って徐々に進行するため、鼻づまり(鼻閉)傾向があることに本人も気づかないで過ごしている方もおられます。そのような方では、起きて活動しているときは鼻が詰まっていなくても、眠ってしまうと交感神経の緊張が解けて副交感神経が優位になって鼻の粘膜はより一層はれてきます。鼻づまりの傾向がある人は、いつの間にか口で呼吸を補う習慣が出来ています。そして、起きている間だけでなく睡眠中も口を開けて呼吸するので、本人も知らないうちにいびきがでていることになります。

いびきの症状は?
 睡眠時無呼吸症」という睡眠中に息を止めてしまうような人におこる「病的ないびき」ではない場合を「単純いびき症」といいます。単純いびき症は健康な人でもおこるもので、本人には何も自覚症状はありません。眠っているときにいびきがでることで、ベットパートナーの睡眠を妨げるため迷惑がかかってしまいます。特に女性の場合には、人には相談できず、大きな悩みとなって私どものような耳鼻咽喉科クリニックに治療を求めて来院されることになります。また、単純いびき症も常習的にいびきをかいていると口蓋垂が常に振動することで肥大して、病的ないびきに移行することがあるといわれています。
 
睡眠時無呼吸症の最も目立つ症状は昼間の居眠りです。危険を伴う作業を行う方や集中力を必要とする職業の方では社会的問題を引き起こすことが大きな問題となります。(参考:いびきの予防法睡眠時無呼吸症に注意原因にも色々ある、いびきの治療法家庭でできるいびき対策

大きないびきをかきやすいタイプは?
・口蓋垂が太くて長い(過長口蓋垂、口蓋垂過長症)人。
・口蓋垂から左右の扁桃まで続く粘膜のひだ(口蓋弓)が幅広く、幕が垂れ下がっているように見える人。
扁桃腺(正確には口蓋扁桃)の大きい人ものどが狭くなりいびきが出ます。
・舌が大きく、厚く盛り上がったように見える人。
太っている人はたいてい舌も厚くなって、のども狭くなり、いびきの出やすい典型的なタイプです。
口をあーんと開けたとき、のどの奥が見えにくい人も、舌が厚く盛り上がっており、いびきが出やすい。
下あごが小さかったり、幅が狭くて後ろへ引っ込んでいる人は舌がのどへ落ちこみ、いびきが出ます。
内蔵肥満の人は首の周りについた脂肪がのどを狭くして、より一層いびきをかきやすくなります。
以上、具体的にはいびきの出やすいノドの形の色々の項も参照してください。

いびきとのど

いびきのメカニズムとは?
 
いびきは以上のように様々な要因が関係していて、一つの原因でおこるものではありません。単純いびき症は軟口蓋と口蓋垂の振動が原因であることが多いので、そのような場合には手術的治療の対象となり、また手術で治しやすいといえます。
 睡眠時無呼吸症に伴ういびきの治療はそう簡単なものではありません。睡眠時にどのような姿勢を取っても持続性のいびきが出る人や、家族に迷惑をかけているようなひどいいびきの出ている方は、睡眠時無呼吸が健康上の問題になっていないかどうか呼吸器内科的診察を受けたほうがよいでしょう。

いびきの予防・対策法は?
 
肥満の人は時間がかかりますが減量がまず絶対に必要です。減量だけでいびきの改善が得られることは非常に数多く経験されることです。逆に、肥満体のままでいびきを治そうというのはいささか虫が良すぎると言えます。標準体重の方でも、皮下脂肪の多い、いわゆる内臓肥満の人は運動をして全身の筋肉を鍛えるのがよいとされます。軽いいびきがよく出る方のいびきの予防法としては、健全な生活を心がけ、適度な運動で筋力をつけ、体重をコントロールすることが最もすすめられていることです。しかし、運動療法は目に見えてすぐに効果が出るものでもなく、健康のためには勿論良いことですが、いびきの抑止効果としては確実ではありません。
 
就寝前のアルコールや過食を控えましょう。お酒を飲み過ぎたり、食べ過ぎたりすると、普段は何ともない人でもいびきをかきます。精神安定剤、睡眠薬の常用ものどの緊張を弱くしていびきを誘発します。健全な社会生活を送っている方では無縁のことかもしれませんが、不規則な日常生活の方では生活習慣そのものの見直しも必要です。
 
仰向けに寝るといびきはでやすいので、横向き(側臥位)で眠る工夫をしましょう。また、上体をあげて寝るようにするとよいでしょう。ベッドなら頭の方の脚部にレンガ2、3個位を入れて高くします。医療介護用に使われるリクライニングベッドも便利です。枕の高さや形状を工夫しましょう。市販のものにも色々な工夫がなされたものがでていますので、利用されると良いでしょう。抱き枕も横を向いて眠るのに適しています。
 
鼻が悪い人は耳鼻咽喉科で治療を受けましょう。副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などで鼻が詰まったり鼻の分泌物が多いといびきは出やすくなりますから、お薬での治療を受けて下さい。鼻粘膜の腫脹はレーザー手術や高周波電気凝固やラジオ波凝固治療などの比較的簡単な外来治療で改善させることもできます。鼻中隔彎曲症のひどい方では鼻中隔の矯正手術が、肥厚性鼻炎に対しては下鼻甲介の整形手術が有効です。
 
口を開けて寝る習慣のある方は鼻呼吸に障害があることが多く、耳鼻咽喉科で診断を受けて下さい。治療によって鼻で楽に呼吸が出来るようになったら、長い間の習慣はすぐには直せるものではありませんが、睡眠中に口を閉じることによって鼻呼吸を促すための口に貼るテープ(ネルネルテープナイトミン等)が市販されていますので使用してみるのもよいでしょう。鼻呼吸に障害がない状態でもいびきがでているときには、歯科・口腔外科的な治療が有効な場合もあります。マウスピースを睡眠中に装着し、舌の付け根が沈み込まないようにすることでいびきが出なくなります。うまく適合できる方では手術的治療を行わなくて済みます。
 
睡眠時に無呼吸の起きる方や酷いいびきの方は、耳鼻咽喉科的診察の他に呼吸器内科や睡眠障害クリニックなどで睡眠時の呼吸状態をチェックしていただく必要もあります。(いびき症の予防と対策法

耳鼻咽喉科でのいびきの治療は?
 当院でのいびき治療の現状は、当たり前ですが
耳鼻咽喉科的アプローチが主体です。鼻咽腔の内視鏡ファイバースコープ所見やレントゲン所見などの診察から鼻呼吸に問題があれば、まず鼻の治療を優先します。鼻の治療だけでもいびきが軽快されている方が多いことをご説明して、まず鼻の通気度をよくするための薬での保存的治療と、外来での下鼻甲介レーザー手術やそれで不足であれば高周波電気凝固治療などを行います。最近ではCoblatorやCelonというラジオ波凝固装置で下鼻甲介粘膜を収縮させる治療が効果を上げています。周りの方だけの意見だけでなく、患者さん達にはご自身でも治療前後の睡眠中の状態をカセットテープやビデオで確認していただきます。その改善度を見て、私と専任看護婦が十分に患者さんの意向を聞き、そのまま鼻の保存的治療やレーザー治療などを継続して経過をみてゆくのか、のどを拡げるために扁桃肥大の方では扁桃のラジオ波凝固治療や軟口蓋のcoblation治療をすすめてゆくのがよいか、あるいは咽頭形成手術までおこなっていただくかを決定します。手術の適応があると考えられる方、つまりいびきの咽頭形成手術LAUPだけでイビキの改善効果が充分に得られると考えられる方は、慎重に判断すると、イビキのご相談で受診される患者さん10人のうち1人くらい(参考:イビキは手術でよくなる?)のものでしかありません。特に中高年の男性で肥満、高血圧、糖尿病、不整脈など成人病疾患を持っておられるような方では、手術そのもののリスクも大きく、手術だけでのいびきの改善はあまり期待できません。睡眠時無呼吸のある方は睡眠障害クリニック、大学病院、総合病院の耳鼻咽喉科や呼吸器内科をご紹介して睡眠検査sleep studyを受けていただきます。扁桃摘出まで含めた咽頭形成手術UPPPの適応と考えられる方には耳鼻咽喉科での入院手術を受けていただくようになります。しかし、肥満傾向で、のどが狭く、睡眠時無呼吸がひどい方は、手術単独でいびきが解消することは殆どありません。肥満傾向で色々な合併症がある方の手術的治療は極めて高いリスクを伴いますから、慎重におこなう必要があります。時間がかかっても減量をおこない、ひどい睡眠時呼吸障害に対してはCPAPなどの内科的治療で経過をみるというのが最も安全です。
 いびきの手術は、若い痩せた女性が最もよく改善するように思います。つまりそれが単純いびき症の本質と関係しているようです。肥満の方は呼吸抵抗が大きくいびきの原因になります。年を取ると咽頭の筋肉の緊張が緩くなって粘膜が振動しやすくなり、いびきが出ます。男性は呼吸する力も強いのでいびきが起こるとその音量も大きくなります。男性肥満者は咽頭粘膜周囲の脂肪も多く、相対的に咽頭が狭くなり、呼吸抵抗が大きくなっていびきが出ます。若い女性のいびきの悩みは大きいものですが、幸いなことには治しやすいと言えます。つまりもともとイビキの振動を起こす薄い咽頭粘膜は切除が容易で、軽症の単純いびき症の方では手術の効果も出やすいと言うことだと思
います。(睡眠時無呼吸症候群といびき1-2いびきのメカニズムと原因、対処法耳鼻科外来日帰り手術について

最近、問題視されている、睡眠時無呼吸症の原因と治療法は?
 
無呼吸というのは、10秒以上呼吸が停止していることを言います。睡眠時無呼吸症候群とは、その無呼吸が睡眠7時間中に30回以上ある場合か、睡眠1時間中に5回以上ある場合です。
 睡眠時無呼吸症候群では、無呼吸になっていないときはいびきが殆ど必ず起こり、無呼吸といびきを繰り返します。そうであれば、睡眠時無呼吸症候群の原因もいびきの原因と変わることはありません。中枢性といって脳に障害があるケースもありますが、多いものではなく、殆どが閉塞性といって上気道が何らかの原因で狭くなるために起こります。
 上気道が狭くなる原因は、いびきの原因と同じです。原因は一つと言うことは少なく、多くの要因が関係していますが、肥満が第一の原因です。鼻の病気による鼻づまり、扁桃肥大、舌根肥大、顎の骨の異常、小児ではアデノイドなどの病気が上気道を狭くします。睡眠中の体位や過度のアルコールと食べ過ぎが、ますます状況を悪化させます。
 治療はそれらの原因を取り除くことですが、どれもなかなかやっかいです。生活習慣の見直しが重要ですが、そう簡単に出来るものではありません。肥満の解消は誰もが試みたいことですが、患者さん自身の自覚の低さもあって、容易には出来ません。手術は鼻づまり、扁桃肥大、アデノイドに対しての耳鼻科的手術がよく行われます。肥大した舌根の一部切除や、顎の骨の矯正手術も試みられますが、一般的に多く行われているものではありません。そもそも呼吸状態が悪い方での気道とその周辺構造をいじる手術ですから、手術は非常にリスクが高いものとなります。健康を回復するために命を落とすようなことにでもなれば、本末転倒です。
 睡眠時無呼吸症候群かも知れないと思われたら、下記の自己診断テストでチェックしてみましょう。10項目の質問に3つ以上当てはまった方は、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。かかりつけ医にご相談の上、睡眠呼吸障害医療施設での確定診断を受けることをお薦めします。診断には終夜ポリグラフ検査が必要です。この検査は一泊入院をし、睡眠と呼吸の状態を調べます。この検査結果に基づき、病医院では病状に最も適した治療方針を決定します。
(1)昼間いつも眠い (2)いくら寝ても眠い (3)朝の目覚めがすっきりしない (4)朝起きると頭が痛い (5)居眠りをよくする (6)記憶力・集中力が落ちてきた (7)夜間、何度か目を覚ます (8)夜間、何回もトイレに行く (9)いびきがうるさいと言われる (0)精神的に不安定になる
中高年のいびき睡眠時無呼吸症候群の検査と治療1-2いびきと睡眠時無呼吸症候群について

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