扁桃病巣感染症 笠井耳鼻咽喉科クリニック・自由が丘診療室
扁桃と病巣感染症について
 病巣感染とは「身体のどこかに限局した慢性の感染炎症病巣(原病巣focus)があって、それ自体はほとんど無症状であるかまたは時に症状を呈するといった程度にすぎないのに、原病巣から離れた諸臓器に、反応性に器質的または機能的障害(二次疾患)を惹き起こす病態」と定義される。Focusとなりうる慢性病巣は全身の至る所に存在しているが、扁桃がfocusになっている場合(慢性扁桃炎)が極めて多い。他には副鼻腔、中耳、歯牙、虫歯、胆嚢、胆管、前立腺、気管、気管支、肺などの慢性炎症が原病巣になりうる。二次疾患としては、従来から糸球体腎炎(IgA腎症)、関節リウマチ、リウマチ性心内膜炎、心筋炎、微熱、胸肋鎖骨過骨症、掌嚢膿庖症、乾癬、多形浸出性紅斑、アトピー性皮膚炎などの疾患と扁桃との関連性が示唆されている。
 病巣感染となっている扁桃は見かけ上はむしろ小さく、扁桃実質が硬く、埋没性で、表面が凹凸不整で、膿栓貯留、周囲との癒着、前口蓋弓を圧排するとチーズ状の膿栓が流出することが参考になる。萎縮埋没型の陰窩口は閉鎖または被覆されて、一見しては深部に病巣を封じていることが推測出来ない症例が多い。
 症状としては、咽頭痛、異物感、乾燥感、全身倦怠感、肩凝り、微熱、関節痛など不定愁訴を思わせる症状である。つまり体温測定により持続する微熱や時々起こる高熱に注意する。不定愁訴とも言うべき、肩凝り、首凝り、関節痛、筋肉痛、倦怠感、下肢の重い感じなども重視する。検査では血沈の亢進、白血球の増加、CRPの陽性、RA-test陽性、ASO値異常、血清タンパクの異常(アルブミン減少、α2-グロブリンやγ-グロブリン増加)、尿中タンパク、尿沈査の赤血球増加などをみることがある。
【慢性扁桃炎について】
 自覚症状は無いか、あっても概して軽微である。咽頭の不快感や異物感の程度のことが多い。ときに微熱や咳の原因になる。その他、倦怠感、肩こりなどの不定愁訴がみられることもある。頸部リンパ節の無痛性腫脹を自覚することもある。
【慢性扁桃炎の診断】
 扁桃には常時炎症があり、健康といえる人も含めて、全ての扁桃は慢性炎症状態にあるといってよい。このような軽度の慢性扁桃炎は、正常な扁桃や小児の炎症性肥大との明確な区別は難しい。慢性扁桃炎では、前口蓋弓の発赤、表面の凹凸不整と膿栓形成、扁桃圧迫時の疼痛と膿栓ないしは分泌物の排泄がみられる。頸部リンパ節の腫脹を触知することがある。扁桃の肥大を伴うことが多いが、中には埋没性のこともある。この場合は、上扁桃窩の発育が良好で、潰瘍や浮腫、また圧迫により膿性分泌物が観察されるので、前口蓋弓を側方に圧迫しながら精査するとよい。特に上扁桃窩は深く入り込み、なかに栓塞をみるか、膿性分泌物の排出を見ることが多い。
 一般に小児での扁桃肥大は、表面が平滑で淡赤色を呈し、柔らかく、リンパ組織実質の肥大である(軟性肥大)。成人における扁桃肥大は、表面は凹凸不整で、陰窩の病変を伴い、比較的硬く、結合織の増生がみられる(硬性肥大)。大多数の扁桃は見かけ上は小さく、前後の口蓋弓の間に埋没しているものが多い。
【慢性扁桃炎の治療】
 保存的治療として陰窩洗浄や陰窩吸引などが行われる。陰窩洗浄・吸引法は陰窩に存在する細菌を含む栓子、老廃物を注射器に鈍針をつけて生食水で洗い流したり、特殊な吸引管で陰窩内の堆廃物を除去する方法で、それによって病巣感染の場合には慢性微熱が軽快したり、尿所見の改善をみることがある。手術適応があれば、扁桃摘出術や扁桃切除術が行われる。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)について
原因と症状】
 掌蹠膿疱症は、手掌、足底に対称的に生じる多発性無菌性膿疱を特徴とし、慢性に経過する疾患であり、難治性で再燃を繰り返す。
 明らかな原因は不明だが、病巣感染がその発症、増悪に関与していると考えられるものもある。扁桃炎の頻度が高く、次いで齲歯など歯牙疾患が考えられる。副鼻腔炎、中耳炎、胆嚢炎なども感染病巣となり得る。また、歯科で用いられる金属のアレルギーが原因との説もある。
 皮疹は、初期は直径1〜4mmの小水疱で、まもなく小膿疱となり、古くなると褐色の点状痂皮(かさぶた)となる。いずれにしろ融合もせず点在することが特徴で、白癬や汗疱状湿疹と異なる。小膿疱,小水疱だけでなく、手掌、足蹠に比較的境界鮮明な発赤と角化を伴う。痒みはないか、あっても軽度である。肘頭、膝蓋などに紅斑と鱗屑からなる皮疹を生じることがある。爪の中に膿疱を生じたり、爪の変形をきたすものもある。本症特有の合併症として、ときに胸肋鎖骨間骨化症が見られる。
【検査とその所見】
 本症の原因として病巣感染説がある。特に慢性扁桃炎慢性副鼻腔炎、齲歯、歯槽膿漏などが原因となることがある。
 一般血液,尿検査を行うが、正常であることが多い。ときに白血球の軽度増加、赤沈の軽度亢進、CRPの軽度上昇がある。扁桃炎があるとASLO(抗ストレプトリジンO;溶血性連鎖球菌感染の補助診断法の一つ)値の亢進がみられることがある。
 鑑別すべき疾患は白癬、汗疱ないし汗疱状湿疹、乾癬、接触皮膚炎である。
【治療】
 皮膚病変への外用療法としては、白色ワセリン、ステロイド軟膏、ビタミンD3軟膏(タカルシトール)を選択する。また、メトキサレン外用と長波長紫外線(UVA)の併用によるPUVA療法も一定の効果がある。
 扁桃炎、副鼻腔炎などの感染症のある症例では抗生物質の内服を行う。増悪因子として病巣感染の疑われる場合には、耳鼻咽喉科や歯科の受診が必要となる。病巣感染が否定的でパッチテストにより金属アレルギーが証明された場合、歯科金属を除去する。
( 文献)
調剤と情報6(5):634,2000
医学大辞典,南山堂,1998
MedicalPractice17(2):339,2000
今日の診療,医学書院,2001

笠井耳鼻咽喉科クリニック・自由が丘診療室
耳鼻咽喉診療案内小児耳鼻咽喉疾患院長紹介診療方針地図案内
医療設備診療時間リンク集
医療費・保険診療Q&Aレーザー治療
いびきの治療いびきQ&Aレーザー手術アレルギー性鼻炎・花粉症
ラジオ波治療の適応鼻づまりの原因と治療当サイトについて索引