動物飼養規程について
「藤田みゆきさんからのご質問にお答えして」


  ウイングの住む“ABCマンション ”(仮称)の動物飼養規程の成立によって、マンション入居開始時から住んでいたペットたちは市民権を得ることとなり、玄関に犬猫のマークをはって、人目をはばかることなく生活することができるようになりました。

その数年後にウイングは我が家の家族の一員となったわけですが、もちろん初めから飼い主の会と管理組合に登録して市民権を得ています。

 しかし私は、この規程の起草者でありながら、その規程のもとで犬を飼育し、飼い主の会の副会長としてその運営に携わってくる中で、自らの作った規則の問題点に何度となく悩まされることがありました。

 なぜならば、この「動物飼養規程」は出発点から、犬を飼っている人が自分の切実な思いで草案を立て勝ち取っていったものではなかったからです。 

 当時の理事長(すなわち私)が「犬猫のトラブルが今後大問題となり、飼い主にとって、また犬猫にとって可哀想なことにならないように、管理組合に不愉快な問題が生じることを未然に防ぎ、とりあえず犬猫に住民権を与えよう。」としたものだったのです。

 “ABCマンション ”の動物飼養規程について、藤田みゆきさん(人と動物との幸せな暮らしについて熱心に活動なさっている方です)から質問を頂きました。実はその原点から持っていた多くの問題をするどく藤田さんから指摘されたなと思いました。

 同様の疑問を多くの方が持たれることと思います。

そこで、今後マンションでの犬猫飼育の合法化のために、同じような規則を創案していこうとする皆さんに参考になればと、その質疑応答を藤田さんのご承諾をいただいてホームページに掲載させていただきます。

 

 


 藤田さんのご質問にお答えして

 正直「痛いところをすべてつかれたな!」というのが感想です。

そもそも動物飼養規程を作る発端は、当時すでに犬猫を飼っていた人達の中に細則で禁じられていることを承知で入居後に犬を飼い始め、ロビーをノーリードで歩かせている人の存在でした。このままではトラブル必至と思ったのです。

 そうした経緯から、とにかくまずは総会を納得させて通過させることが先決で、第二に考えたのが今後考えられるトラブルを未然に防ぐという発想でした。ですから内容は少々厳しいものとなっております。

 その当時は私自身共働きのマンション暮らしの夫婦が犬が飼えるとは夢にも考えていなかったので、自分が「飼い主」になることは考えていなかったのです。ですから、もう少し犬・猫の飼い主の立場になって考えてあげていたらと反省しています。その反省しているところとは、まさにご質問のあった部分そのものです。

 ではそのご質問にお答えしていきたいと思います。

 

>Q1.動物飼養規程第3 1カ について

> 避妊、去勢の推進は、私は、大賛成の立場なのですが、これは、

>デリケートな部分でもあり、特に小型犬を飼っていらっしゃる方には

>広まり難い部分が多いように感じております。

>ウィングのパパさんのマンションでは、どの様に広めていらっしゃるのですか??

> 資料等がありましたら、合わせて、見せて頂く事ができません

>しょうか??

 

A1

 これは強制ではありません。また、特に強力に推奨しているわけでもありません。

 しかし、飼い主の会で講習会を行い、招いた講師の方が(ペット問題研究家 山崎恵子さんです)「自然にしておきたいから避妊をしない、という人がいるが、マンションなどで人間と暮らしていくことそのものがそもそも不自然なのであり、人間とよいリズムで暮らしていくためには避妊は必要。」とうお話をされました。

 私はウイングの避妊手術にはかなり抵抗があったのですが、結局避妊手術を行いました。今ではそうして本当によかったと考えています。

 

 

>Q2.動物飼養規程 第3 2オ について

> ウィングのパパさんも、書かれています様に、中型犬、大型犬の飼い主の方

>には、抱きかかえるのは難しい問題がありますし、わざわざエレベーター

>に乗るのに、ケージも大変な事と思います。

>この規約は、どの様な形で守られているのですか??

 

>Q3.動物飼養規程 第7 4 について

>この「大きさ」というのは、犬も含まれていますか??

>超大型犬といわれる、バーニーズ、ピレニーズ、セントバーナード、

>ニューファンドランド、等も、マンションで飼う事は、実質的には可能

>です。逆に、そのような犬の方が、大人しく、無駄吠え等の迷惑にも

>なりにくい傾向があります。

>そのような犬種でも、飼う事は可能なのですか???

 

A2,3 この2点についてお答えします

 「犬の大きさ」については、あるときゴールデンレトリバーを飼っている人が賃貸で入居してきたとき、大問題となりました。大きさの概念規定があいまいで人によってどのような解釈も可能なので、これはこの規約の中でもっとも悪い部分と反省しています。

 理事の中にはこれに対し、非好意的に動く人がいたので、その動きを牽制し、当時の理事長に理解を求めて、「飼い主の会に一任」ということで理事会の了解をいただきました。

 しかしそれまで、理事会では「エレベーターで犬と乗りあわせると怖い人は怖い。」
「口輪をさせては。」「おしめをさせては。」などの意見が出ました。

 飼い主の会としては、とりあえず「口輪」をする。「エレベーターで他の人が乗ってきたときには、犬がいてよいかと尋ねる。(相手がいやな顔をしたら降りる。)」という約束でよいことにしました。

 しかし、その後エレベーター内で明らかにゴールデンレトリーバーの毛がけっこうたくさん落ちていたことが少なくとも3度ほどありました。私はすぐにガムテープでとりましたが、毛が抜ける季節の大型犬が自分で歩いてエレベーターに乗って方向展開をすれば当然かなりの毛が落ちるのでこれも問題かと思いました。あるマンションでは犬がエレベーターに乗るときは「服着用」という話も聞きましたが、これも少しうなづけるものがあります。

 また、ノーリードで犬をロビーを歩かせた人がいて、1階の犬嫌いの居住者から抗議の張り紙をされたことがあります。飼い主の会として、本人に厳重注意するとともに、会長・副会長が抗議をされた居住者に正式に謝罪してことをおさめました。

 ほとんどの飼い主はこの約束を守っているわけですが、飼い主の会の中にはマナーを守らない人も必ずおり、このような人に限って会合には必ず来ない。しかも、このような人が必ず問題を起こし、マンションにおける犬猫の地位を脅かすというのが現実です。また、そのような人を指導・制御するのも「飼い主の会」の役割となるとは、始めてからよくわかっていたことです。

 また、抱くことのできる大きさの犬については、抱いて移動することはやはり必要だと考えています。

 もし、廊下やエレベーター内で排泄をしたら、やはり問題は大きいのではないかと思います。家のウイングはトイレのしつけはほぼ完璧だと思っていますが、やはり外に出ると神経が興奮しますから、思わぬところで排泄が始まってしまうことはないとは言えません。

 

>Q4.動物飼養規程 第8 について

>この頭数については、実際的にはどのような頭数なら良いのですか??

 

A4 

これも理事会で論議になりましたが、「2頭まで」にしてもらおうという話にはなっています。

 3頭いたら一人で一度に抱いて移動できませんから。

 

>Q5.動物飼養規程 第12 3  について

>「管理組合は、その飼い主に対し、動物を飼う事を禁止する事ができる」

>の文についてですが、この「禁止」を決定するのには、どの様な方法

>が取られるのでしょうか。(何人の合意が必要か等)

>例えば、管理組合の理事長なり副理事長等が、犬が好きかきらいかに

>よっても、話し合いの方向がだいぶ変わってくる事も予測されますし、

>「犬の命」にもかかわる問題なので、「多数決」というレベルでの

>決定にゆだねて良い物かの疑問もあります。

>そういった事も含めて、教えて下されば、有り難いです。

 

A5

 これはあってはならない、超最悪の場合を考えてのことですが、結論を言えば総会の決議(区分所有者の過半数)を必要とします。「管理組合規約」第8章3には次のように記されています。

「区分所有者が、本規約もしくは使用細則などに違反したとき、または区分所有者もしくは区分所有者以外の第三者が敷地及び共有部分などにおいて不法行為を行ったときは、理事長は総会の決議を経て、その差し止めまたは排除のための必要な処置をとることができる。」を受けています。

 

 

>Q6.動物飼育に関する細則 第1 2 について

>「風呂場にトイレ」を禁止されているのは、どうしてなのですか??

>マンション等の高層ビルにて大型犬を飼われている方は、風呂場をトイレ

>にしている方が多い様に思います。

>特に、台風等、屋外排泄が不可能な場合等、屋内トイレといっても、

>大型犬は場所を取りますし、大変かと思います。

>詳しく、教えて下さいますか??

 

A6 

これはどちらかというと猫を想定していたのですが、猫砂などがつまるとまずい、という考え方からでした。玄関については、玄関のペットトイレから排泄物が垂れ流しの世帯が他のマンションであったということから、この防止策でした。しかし風呂場については、ここまで言わなくてもよかったかなとも思っています。

 

>Q7.動物飼育に関する細則 第2 について

>「管理組合が指定する専門家」というのは、どの様な判断に基づき、

>お決めになられたのですか???

>もし、さしつかえなければ、どなたが指導に当たられているのですか??

>どの様なカリキュラムで、進められているのですか???

 

>しつけに関しましては、今の日本は過度期にあり、強制、誘発等と、一言

>では、片付けられない程、そのトレーナーによるばらつきが大きく、訓練

>方法は、犬に関しては直接、影響を与えてしまいますので、選択について

>関心があります。

 

A7

 まず、「ペットについてのオリエンテーション」ですが、二年間にわたり、講師を招いての講習会を行いました。その参加をもって「オリエンテーション」受講証を発行しています。

平成7年度 ペット問題研究家 山崎恵子氏

平成8年度 日本動物福祉協会 青木貢一氏

 

 訓練については今のところ明確な規程はありませんが、ウィングはペットショップ主催のしつけ教室に通い、初級の修了証をいただき、提出しています。

また「管理組合指定の専門家」は理事会より、「飼い主の会に一任」されることになっていますが今のところあまり新しい飼い主も増えていないことから、明確なシステムはできていません。

 
まとめ

  ご指摘のように、このABCマンションの飼育システムには多分に行き過ぎ、厳しすぎ、あいまいさがあり、すべてそれは私がそうしたことなのですが、運用の上でも大きな問題がありました。

ですから、この反省をこれからマンションでの犬猫飼育のシステムを作ろうとしているみなさんに教訓として資料になればよいと思い、「ウィングの旅行絵日記」に掲載しました。

  私がこの数年の経験から、マンションにおける犬猫飼育システム作成上に反省をまとめると次のようになりますでしょうか。

 1 動物飼育規程(管理組合総会によって決定し、改正にも総会の可決を必要とする)は最小限のシステムを記す。あまり細かい禁止事項は載せない。

 2細かな規則は「飼い主の会」に任される体制を作る。

 3飼い主の会の機能と理事会とのパイプを強化し細かな問題がいろいろと出ても、「結果よければすべてよし」とする柔軟な体制ができるようにする。

 


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