ウィングがマンションに堂々と住めるわけ

 

 ウィングは東京、大田区のマンションに住んでいます。

 もちろんウイングはこっそりと住んでいるのではなく、住人としての市民権を持って堂々と住んでいます。
でも、このマンションは始めから犬が飼えたわけではなく、多くのマンションがそうであるように、「使用細則」で「犬猫など迷惑をかけるおそれのある動物を飼育すること」を禁じていました。

 犬や猫がこのマンションに住めるようになったいきさつは、どうやら、このマンションの初代理事長となった「ウィングのパパ」がしたことだと聞きました。ウィングが生まれる前のことなんですって。

 以下は「ウィングのパパ」から聞いた「ウィングがマンションに堂々と住めるわけ」です。

 
 
犬猫飼育禁止、しかも「現に飼育者あり」からの出発

 ウィングが住んでいるのは、平成6年にオープンした、京浜急行沿線の駅から徒歩5分、14階建てのマンションです。(以下”ABCマンション”と仮称します)

 そして、どういうわけか、パパが初代の理事長を務めることとなり、自転車置き場問題、駐車場問題を始め、諸問題が山積みの中、波乱の管理組合スタートとなったのでした。

 その中の数ある問題の一つに、「ペット問題」がたびたび理事会の話題として浮上しました。

 このマンションの「使用細則」はほかのほとんどのマンションがそうであるように、入居募集の段階から「規約」(その変更には区分使用者の4分の3の同意を必要とする)他、「使用細則」(総会で過半数の同意をもって変更できる)が初めからマンション業者によって作られており、入居者は入居の条件として、それへの同意を誓約する仕組みです。

 ところが、その「使用細則」が問題なのです。
この「ABCマンション」(仮称)にも初めから次のような使用細則の規定がありました。

第一条 ABCマンションの各専用部分の所有者・および占有者ならびにその家族は、当該専用部分(つまり自分の部屋)及びその使用にあたり次の行為をしてはならない。

(4)他の居住者に迷惑または危害をおよぼすおそれのある動物(犬・猫を含む)を飼育すること(小鳥・熱帯魚・金魚は除く)

 ところが、160世帯ものこのマンションの入居者のうち、少なくとも6名がこの使用細則に違反して犬や猫を飼っているということが分かりました。

 このままではやがては不愉快きわまりないトラブル必至。理事会でも何度か話題になりましたが、元来動物好きのパパも、現細則に反している行為をただただ黙認するだけでよいのかどうかさんざん悩んだものだそうです。

 

 「現実を考慮しないマンションづくり」の犠牲

 このような使用細則は、マンション業者がとりあえず当たり障りのないようにつくっているものですが、この無責任な姿勢はマンション環境のあちらこちらに現れています。例えば、駐車場や自転車置き場不足、来客用の駐車スペースのないこと、植栽がいい加減なことなどです。そして、これだけの世帯数があれば、オートバイを日常の足として使っている人はかなりの数いるはずなのに、「オートバイ置き場」がないため大問題となり、第1回の総会でも結論が出ずに流会となるほどでした。

 つまり、当たり障りののないように最大公約数的な環境を作っておき、「後は野となれ、山となれ…」ということです。人間がこれだけ住んでいれば、来客の車も当然あるし、オートバイに乗っている人も一定数いる。一家で4台自転車が必要な世帯もあるという現実、そして、家族の一員として犬や猫を飼いたい人も必ず一定数いるという現実を真っ正面からみつめたマンション作りをしていないのです。だから混乱が生ずる。

 ウィングのパパは、これらの問題について、一つ一つ(時には総会でつるし上げ状態になったこともあります)なんとか解決していったわけですが、ペット問題は微妙でやっかいでした。

 ここで誤解のないようにウィングからも弁明しておきますが、パパは別に、自分が犬を飼えるようにしたいからこの問題を前向きに解決しようとしたわけではありません。

 パパは学校の教員です。この問題にはたいへんに自己矛盾を感じたそうです。つまり、職業としては、子どもたちの情操教育・環境教育・理科教育・生活科教育の一環としてとして、生き物を大切に飼うことを奨励していながら、マンションではそれを禁止し、取り締まる立場に立ってしまったのです。

 

 犬猫飼育をめぐるマンションの悲劇

 そこで、他のマンションでの犬・猫の飼育をめぐる状況を調べました。

 すると、いくつかの困った例を知ることができました。

 いくつかのマンションで、「使用細則」に反してペットの飼育を飼育している飼い主と管理組合をめぐり訴訟問題となっており、膨大な時間と費用、労力、そしてお互いの精神を消耗しての抗争が続いている実態がわかりました。一つ屋根の下に住む人々同士、こんなことで戦争状態になるとはなんという悲劇でしょう。しかも、すべて動物飼育者側が敗訴しています。

 

 犬猫飼育「黙認」の結末

 また、そこまでいかない多くのマンションでの現実は「黙認」ということでしょうか。つまり、「細則に反して」ペットを飼育している人は必然的にいるのですが、管理組合としては波風を立てないように「既成事実として」問題として取り上げずに月日が経っていく例です。

 しかし、これも問題があります。第一に、こうして(ルールに反して)犬猫を飼っている人と、動物が好きでペットを飼いたいが、性格・信条の上からもルールに反してまでペットを飼うことを断念している人とのギャップ。

 第二に、ルールがないために、ひとたびモラルに欠けた悪い飼い主が現れた場合にはそれをうまく指導できないということです。

 これはあるマンションの例ですが、そのマンションでは、やはり「黙認」状態で犬・猫が飼われていたらしいのですが、その中にベランダで犬を飼う人がいて、こともあろうにある日、エレベーターのなかにウンチを放置していったということです。そのウンチはほとんどすべての住人とともに一日エレベーターの中で上がり下がりし、後日大問題として爆発しました。

 その住人は、その抗争の後、「けつをまくって」出ていったということですが、そのマンションでは犬・猫についての締めつけが当然強くなりました。しかし、その顛末に至る住民のすり減らした神経と人間関係は想像するにあまりに悲しいものがあります。

 

 東京都はマンションでの合理的犬猫飼育を奨励

 また、実は東京都では、こうした悲劇を避けるためにマンションなどで一定のルールを作っていくことを奨めています。マンションなどにおける「動物飼養規定」のモデルとしても作られていますので、東京都各区の「衛生局」に問い合わせてみてください。

 そこで、パパは現に犬猫を飼っている人を集めて、この方向性について説明し、「ABCマンション動物飼養規程」「ABCマンション飼い主の会設立」「ABCマンション飼い主の会規約」をまとめあげて、マンションの理事会、総会に提案しました。

 反対意見も考慮して、少々飼い主に対して厳しい規約となりましたが、平成7年2月、ABCマンション総会では、大きな反対意見もなく通過し、ABCマンションの犬・猫は晴れて「市民権」を得たのです。

 

 家族の一員としての

   ウィングのマンションライフの始まり

 その後、元来動物好きのパパとママは犬をを飼いたいと考えるようになりました。

 こうして、ウィングはパパとママの家族の一員となる日がやってきました。

 ウイングはエレベーターや廊下では抱っこ。ベランダには出ない。犬のしつけ教室に通うこと。などの義務はありますが、毎日人目をはばかることもなく家族の一員として幸せに暮らしています。

 飼い主の会は年に一度総会を開き、マナーなどについて確認をしますし、マナーを守らず、居住者とトラブルが生じた場合には「飼い主の会」が責任をもって、問題の解決(提訴者への陳謝と説明・問題を起こした飼い主への指導・理事会への報告)を行います。

 「この規程は少々厳しすぎたかな。」とパパは何度か言っています。特に「共有部分の廊下エレベータ内は抱いて移動する」は、荷物がある時などは少々つらいし、大型犬が越してきたときには問題となりました。
 しかし、犬猫の飼育に関してルールと組織を作るということは、マンションで犬・猫を飼育していく上で必要なことです。

 実は、犬猫が市民権を得てからも、ルールを守らない飼い主によって2度ほどトラブルが発生していますのが、飼い主の会が動いて無難に処理しました。

 次にABCマンションの「動物飼養規程」「飼い主の会規約」がありますので、ご参考になれば幸いです。

  

ABCマンション(仮称)「動物飼養規程」を読む

ABCマンション「飼い主の会規約」を読む

飼い主の会設立準備に向けての資料を読む

動物飼養規程についてご質問にお答えして

理想的なマンション動物飼養規定とは?

理想的な飼い主の会組織と運営とは?

マンションにおけるペット飼育についての請願(例


 


集合住宅で動物と暮らす関連サイト

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