神様が宿る市房山は球磨郡の善男善女の精神的バックボーンである。 柴田酒造は、湯前町長も輩出した実力蔵であるが、諸般の事情により15年ほど前から製造販売をやめている。そのためもったいない限りであるが「市房」の商標は眠り続けている。柴田酒造とともに共同びん詰め会社(株)球磨銘醸造に参加した誼で豊永酒造さんに引き継いでもらえないものか。 ともかく、市房をモチーフにした銘柄はほかに「房の露」(球磨郡多良木町)しかないさびしい状況になっている。 球磨三名山とは、市房山、白髪岳、江代山(津野岳=つのだけ)である。標高、山容とも申し分ない。市房山はまた、天包山(あまつつみやま=てんぽうざん)、石堂山とともに米良三山のひとつでもある。2か所で同時に堂々ノミネートされている実力は、その威厳ある体躯に込められた歴史をみればうなずける。両県から綱引きされているのは、まあ、県境に踏んばっているからなのだが。
深田久弥氏は、1950年代に水上村に来られ、市房山を値踏みした形跡があるそして百名山に入れるか入れまいか悩んだ末に、結局外してしまった。 エリート会員制クラブの会員権を得られなかったのと同じ9回裏のタイムリーエラー的痛恨事であるが、負け惜しみながら、深田氏に見る目がもう少しあれば、と言いたい(現に氏は自分の郷里にあるという理由でぱっとしない山を百名山に加えて山好きから批判されている。しかし、だれしも私情はあるというものだ)。 百名山=プレミアム山岳クラブが登山の歪みのもとになっている現在、それと無縁に下野してたくましく生きよ、我が市房山。 5回目の登山も計画を立てるから。
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