あんじゅら [人吉市 大和一酒造元]
球磨ン衆[人吉市 深野酒造本店]
あそんべっぴん[阿蘇郡高森町 山村酒造]
彩葉[人吉市 深野酒造本店]
だんだん[人吉市 球磨焼酎]
とっぺん[下益城郡城南町 美少年酒造]
呑舞盃[球磨郡水上村 大石酒造場]
ばってん[熊本市 東肥醸造]

ほんなもん[人吉市 寿福酒造]
「ほんとのもの」、「本物」を意味する。人吉市は城下町であるため武士と町人の居住区がはっきりと分かれ、言葉も微妙に違っていた。
「ほんなもん」は人吉市域外の球磨地方では頻度がぐっと下がり、人吉市域よりむしろ八代以北で普通の言葉なので、かなりハイカラな響きがあり、武士階級が導入したのではないだろうか。
関西地方では「ほんなもん」とは「そんなつまらないもの」のニュアンスがある。大阪圏で「ほんなもん」を販売するにあたって、この予想だにしなかった言葉の壁にぶち当たり、「杜氏絹子」と改名して店頭デビューした。今ではこの名前のほうが全国区になっていしまっている。



山女魚(まだら)[人吉市 福田酒造本店]
渓流魚の女王ヤマメの当て字である「山女魚」は、球磨川水系の女王に限って「まだら」と呼ばれる。球磨川水系のうち、五木村の梶原地区以西では山ひとつ向こうの宮崎県の影響を受けた「エノハ」の名でも呼ばれる。
ヤマメの自然分布の南限は鹿児島県川内川と宮崎県広渡(ひろと)川であり、方言で呼ばれる魚として生活に深く根をおろしている。放流して定着させた人工分布の川、たとえば屋久島の安房川など、のヤマメはありがたくもなく、歴史の浅さゆえヤマメの方言は成立していない。
まだらもエノハもはっきりした語源はわからない。まだらは、ヤマメの胴体に並ぶ黒いパーマークを指しているのかもしれない。エノハには榎の葉にかかわるいくつかの説があるが、説得力はない。
球磨川上流部ではどうということのない細流にもヤマメの稚魚が紛れ込み、アブラメ(タカハヤ)と一緒に泳いでいたものである。現在、年とともにヤマメの生息域がじわりじわりより上流部に上昇しており、土地の釣り好きたちは、環境の温暖化を肌で感じているそうである。

「最後の晩餐」(開高 健、文春文庫、1982年)
ヤマメはヤマベのほかに、ヤモ、アメウオ、タマビラ、シマメ、アマメ、アマグ、アマゴ、クロソブ、ヒラメ、ヒラベ、アメゴ、エノハ、マダラ、マンダラなどの異名があるそうである。語源、語幹、語尾、どこをどうまさぐってもヤマメに接近、想起できないようなのがいくつもあるので、手を焼いてしまう。


よけまん[人吉市 深野酒造本店]