鄙に花あり〈春 1〉

クサギClerodendrum trichotomum) クマツヅラ科

落葉低木。花はピンクと白の美しい塗分けで香もよく、秋の日を浴びながら悠然と咲いています。花の香のよさとは反対に、葉には好ましくないニオイがあり、これがクサギの名前のもとになっています。
ところが、若葉は知る人ぞ知る山菜として親しまれ、加熱によって臭気はあらかた消えるそうで、熊本県や宮崎県の一部では「くさぎな」として食べられています。くさぎなとはクサギの菜っ葉ですね。



キクイモ Helianthus tuberosus

荒れ地に、見た目も雑然と咲いているので丈夫な植物ということがわかります。ヒマワリにごく近い仲間ですが、ヒマワリが花壇の王者であるのに、キクイモは荒れ地の帝王となってしまいました。過去、芋(塊茎)を食べるために外国から導入されながらその後見捨てられ、野生化して生き延びているからです。しかし、大型で鮮やかな黄色の花のたくましさは見捨てられません。

ヨメナ Aster yomena 嫁菜。

 遠い山から吹いてくる 小寒い風に揺れながら気高く清く匂う花 きれいな野菊 うす紫よ

という歌を音楽の授業で習いました。それにぴったりの素朴な野菊です。アイドル映画の定番「野菊の墓」でヒロインを演じた人気上昇期の松田聖子は、野菊から脱皮して食虫植物になってしまいました。

8世紀には宇波疑(ウハギ)とも呼ばれていました。

万葉集二・二二一 柿本人麻呂
 妻もあらば採(つ)みて食(た)げまし佐美の山野の上の宇波疑過ぎにけらずや



サルスベリLagerstroemia indica) 

樹皮が脱落してつるつるの幹からの連想でサルスベリ。的確な名ですが、7月から咲きはじめて秋のおそくまで咲き続けるので、当て字が百日紅。白花もあります。南九州では庭木としてよく栽培され、大きく成長した株の花盛りは絢爛ですが、他の真夏の花と違って暑苦しくなく、輪郭がにじんだ優しげな花序、こぢんまりとした樹形は、原産地である中国の水墨画の曖昧描線にオーバーラップします。


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