ただ, 「黒麹が球磨焼酎の原点」であるかどうかは議論のわかれるところです.元来, 南九州の焼酎は黄麹仕込みでした.鹿児島の芋焼酎において黄麹に代わって黒麹が導入されたのは明治時代末期ですが, それ以前も以後も球磨焼酎は一貫して黄麹を使用し続けていました.球磨焼酎製造に黒麹が導入されたのは, 米不足によって不本意にも芋焼酎をつくらざるを得なくなった戦時中だけの一時に限られ, 戦後すぐに黄麹による米焼酎づくりが復活しましたから, 黒麹が球磨焼酎の主流だった時代はない等しかったのではないでしょうか. 以上の理由により, 繊月酒造の歴史でいえば「堤治助商店」の時代(1923―1950年)のうちのほんの短い時間ながらそれなりのインパクトを与えた黒麹の焼酎の蘇りということになります.また, 「流行素材」である黒麹をたくみに取り入れて工場に技術的な「活」を入れ, 新しい味を求めたともいえるのではないでしょうか. そのような歴史的背景はあるにせよ 飲み口については, これが最上質中の最上質なのです.昔ながらの「飲み方=宴会」につきものの古風な焼酎らしい焼酎の味と香りをよく備えていて, 冠婚葬祭その他なんでもきっかけさえあればすぐにはじまった村の「飲み方」の時代を蘇らせてくれます.腕っ節の強さと含羞ある優しさを併せ持った,「村の青年団」のような味ですな, これは.わたしにとって大ヒットの焼酎でした. 発売開始以来はやばやと熊本県の「2007年度優良新商品 食品部門」で金賞を受賞しました.県の物産振興協会が主催するこの事業は「地域性・親しみやすさ・安全性」の観点から受賞に価する新商品を選定しますから, 事業マインドのしっかりした繊月酒造さんの製品が選ばれたのはある種必然のできごととして受け止めています.
29. Apr. 2008 |
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